4・麻痺
〈RQ―21〉が
だが、もはや自国の利益を追求している場合ではなかった。今は恥も外聞もかなぐり捨てて、共同で解決策を探すよりほかなかったのだ――さよう、恥も外聞もかなぐり捨てて……だが、彼らは己がこの災禍を招いていた場合のことを考え、戦慄し、恐怖した。
――この災禍の原因が我々であるならば、きっと未来永劫、わが国は責め続けられるにちがいない。そうなれば、我が国が今まで国際社会で築いた地位も、国富も、すべて
かくして、「嵐が過ぎ去るまで待て」が、世界共通のスローガンになったようだった。安保理会議は遅々として進まず、時間をいたずらに浪費した。だが――そうして一週間、二週間と過ぎるうちに、全宇宙交通網の麻痺はさらに進行し、ついに全体の
しかし、オリオン航空三五五四便の救援機――管制センターの指示で通信封鎖を行い、〈RQ―21〉の感染を免れた機体――が地球に帰還すると、状況は一変した。北米連邦宇宙局 (NASA)が突如、中国航空宇宙局 (CNSA)に事故機の情報提供を提案したのである。
──
「こちらが発見された被害機の画像になります。我が国の救援機が撮影したものです」
席につくと、NASA局長のロバート・リチャードソンは、挨拶もそこそこに、CNSA局長の
「テルスター57号、ヘリオス19号、神舟55号、スペース・パイオニア号、アルゲマイネ6号、蒼天9号、ダンカン2号……」
「ご覧の通り、世界各国の宇宙船と衛星が破壊されています。これは特定の国家が宇宙船を撃墜してまわっているわけではなさそうですよ、李局長――さらにいうなら、〈スペース・パイオニア号〉は我が国の最新鋭巡洋艦で、極秘扱いの機体です。〈蒼天9号〉もそうでしょう?」
「ええ、確かにその通りですが……」最高機密を探り当てられたショックで、李はややたじろいだ。
「とにかく、
そこでリチャードソンは言葉を切り、囁くように続きをいった。
「――すべて、
「それはつまり……何らかのコンピューター・ウィルスの類、と?」
「あるいは、単なる偶然か、ですが――何にせよ、なぜか無線以外の通信を封鎖していた件の救援機だけが帰還できたのですから、ひとたびデータ通信を行えば、一巻の終わりだといってよいでしょう」
「しかし、残存している宇宙船に危険を
「ええ、ですが――それについては心配なさらずともよろしい」
「なぜです?」李はリチャードソンに、なにか別の手段があるのか、とでも言いたげな目を向ける。しかし、リチャードソンの返答は違った。彼は顔に皮肉めいた笑みを貼りつけてこたえた。
「
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