第3話 妊娠後期になってから
「美帆子、保健所から重要なんて書かれた郵便物来てるよ」
仕事から帰宅したら夫の聡が、保健所からの封筒を持って来た。
「何だろう~、保健所って?ちゃんと定期健診だって行っているんだけど」
開けてみると、妊婦優先の『コロロワクチン接種票』だった。
「お腹が大きくて動くのも大変な時に、なんでわざわざ、任意のワクチンなんか受けに行かなきゃならないの」
綿棒やワクチンのお世話にならないように、現役引退以来、ずっと体調管理、栄養管理をしっかりして、免疫力が低下しないよう心掛けていた。
ワクチン接種者からのシェディング感染もしないように、解雇された後は、ずっと専業主婦していたし、聡以外の人々とは、しっかり距離感を保って行動していた。
大体、コロロワクチンを打っても打たなくても、あの綿棒は3/50の確率で陽性患者にさせられてしまう擬陽性アイテムだ!
綿棒のみならず、ワクチン自体にしても、色々疑惑が付きまとっている。
噂では、金属系の物質とか、謎の物質が混入されているとか......
看護師時代から、患者に注射を打つのも痛々しくて苦手なくらい先端恐怖症で注射嫌いな私が、わざわざ痛い思いして妊娠後期の身体に注射するつもりなど毛頭も無い。
モチロン、思ったより退職金を沢山貰えたから、医院長との約束は守って、綿棒の件は他言して無いけど......
私以外にも、多分、そういう境遇に有って、薄々勘付いている人沢山いるはずなのに、皆、私みたいにお金に釣られてしまった?
それとも、君子危うきに近付かずって感じになってしまったのかな?
そんなふうに過去の疑問を色々思い巡らせる事の多い日々を過ごしていたが、予定日より1ヵ月近く早く、私は産気付いてしまった。
幸い聡の休日で、病院に付き添ってもらえた。
受付に近付くなり、青い手袋をした女性のキツイ口調。
「診察券と、母子手帳と、健康保険証と、コロロワクチン接種証明書を出して下さい」
「ワクチンは、打ってないです!」
陣痛で辛い中、キッパリと言い切った。
「えっ、妊婦は強制接種ですよ!」
妊婦は強制接種?
そんな事を今さら言われても!
あの時、重要と書かれた保健所のワクチン接種票の入った封筒をよく読まないで、勝手に早とちりして、既に捨ててしまっていた。
ああ、あの時、もう少し慎重になって、中を確かめていたら良かったかも知れないけど、綿棒についてもワクチンについても懐疑心の塊の私は、やっぱり無視してたかも......
その場にいた妊婦や付き添いの人々が、ざわめき、私と聡から離れた。
受付の女性は、慌てて看護師に連絡している。
「畑田さん」
防護服を着た看護師に呼ばれ、処置室に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます