第61話 レイ、過去編②

 異世界は割と厳しいなと思った。


 いわゆる転生チートは無かったし、生まれは貴族ではなく娼婦の息子。


 生と死が隣り合わせ、とはいかないものの日本の様な安全は全くなかった。


 それでも生きていけたのは……


「レイ、これどこで盗んできたの?」


「別に盗んで……ぎゃあ!?」


「盗むならバレないように盗め、それが出来ないならやるな」


 な女性だった。

 バレなきゃいい、無駄なリスクは犯さない。

 そうすれば平民か奴隷並みの身分に突然訪れる理不尽を最小限に出来た。


 だからこそ魔術学園に入り、そしてこの世界の魔術の基礎を学ぶことができた。


 魔術学園というが、いわゆる小学中学の基礎的な知識、教養と魔術を学ぶ場であった。

 転生者である俺についてはその時間の全てを魔術に使えたその点については転生チートと言えるだろう。


 母が病気で死に、中途半端な娼婦の息子とそこそこ良い生まれの生徒に言われ半殺しにするまでは。


 いつもなら無視していた所だが、母を失い動揺していたこともありそのまま退学。


 6歳から15歳が学園の学習課程だったが10歳で十分必要な基礎は学んだし、それ以上の収穫はあった。


 大きな出会いがあったからだ。


「…………先輩?」


 幸か不幸か、またこの世界で再会するとは思わなかった。


◇ ◇ ◇


「まさか先輩までこの世界に転生していると思いませんでした」


 上野ララは異世界ではラミタ・ラモワティエと名乗った。

 姿はそこまで変わらず似ていたことで一目でわかった。


 どうやら心臓発作で俺が死んだ後、交通事故で亡くなってしまったらしい。


「よく見つけられたな、姿も年も全然違うだろ」


「それはこの転生チートスキルですよ、ふふん!」


 転生チート、ある奴にはあるんだな……

 ララが得たチートは半神。

 死ななかったり、未来が視えたり。

 魔術流路を見て前世を含めてそいつが誰か判別できるらしい。

 その力で俺を見つけ出したらしい。

 その他にも見たことない魔術を見せてきたり。

 半人半神のせいか100%確実ではないが、その能力は確かだった。


「どうです先輩、また先輩の好きな褐色美女ですよ?あっちの世界では黒ギャルともよびますね」


 青い髪に褐色の肌。

 というか、こいつ俺が前に黒ギャルエロゲ店で見てたのまだ覚えてたのか……

 というか何であの時あの場所にいた?

 あまりにも偶然過ぎるだろ……というか。


「褐色と黒ギャルは別物だぞ」


「……え!?」


 こいつ、全然わかってないな……とにかく。


「また会えて嬉しかった、その……寂しかった所だったからな」


「私もですよせ、ん、ぱ、いっ!」


 美少女に抱きつかれれば多少なりとも興奮する所だが中身が上野だとわかっていると話は別だ。


「うぜぇ……」


「あ、そうだ!私と2人なら何でも出来ますよ?何します?」


「とんでもない発言だな」


「半分神様なんで許してくださいよ」


 神様だしな。

 やりたかったことか……


「極めるか」


「え?何をです?」


 異世界に来たんだ、そんなもん決まってんだろ。


「魔術だよ」



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