第59話
馬車に揺られること半日。
ヴィルの言う目的地に近づく事が出来た。
周囲には民家は無く、途中は歩いていくしか無い獣道。
「あー、何よこれ!本当にこの先に人なんて住んでるの!?」
「ごめんね、僕のわがままに付き合ってもらってから」
「嫌なんて言ってないわ、私達にも関係してくることだし。でも、この道はきついの!」
確かにこの険しさは異常だ。
相当な迫害を受けていたのだろうか。
「はぁ、はぁ……つ、着いた……」
見つけたのは森の中にひっそりと建つ小屋。
まるで昔の俺のようだな。
「誰かいる?ヴィルから紹介されて来たのだけれど!」
返事はない。
「留守」
「死んでるかもしれないわね、入るわよ」
中は一応は人の住んでいる気配はあるな。
だがまるでゴミ屋敷、床に散らばるのは酒瓶だらけ。
「んぎゃ」
何か踏んだな、人間か?
ボサボサの赤い長髪、褐色の肌。
こいつ、まさか。
「どいてくれるー、痛いんだけどぉ……ってあれ、君……レイ?」
「……ララか」
「久しぶりー!あれ、ちっちゃくなった?」
こいつに誤魔化しは通用しない。
その対象の中身、正確には魔術の流れを見ているからだ。
「レイ君あの魔術完成させたんでしょー?協力した甲斐があったよー、でも詐欺師って言われてて笑ったよ、あはははっ!!」
ラミタ・ラモワティエ。
通称ララ、そして魔術の天才。
そして又の名を……半神の魔術師。
旧知の親友がそこにはいた。
◇ ◇ ◇
「へぇ、ヴィル君に聞いてここをね……相当気に入られたね君達。レイ君もいるし当然が」
「すいません、僕の名前はレイズです。間違えないで下さい」
「あー……そうか、そうだね……それでレイ、ズ君の悩みは何かな?」
こいつ……
だが魔術に関しては確かに天才だ。
「へぇ、魔術流路の完成に身体がついていかないか……君、それはちょっと違うよ。確かに身の丈に合わない魔術を使えば身体に影響は出る、でもそのは違う」
「魔術流路が完成していないのに無理して使い、肉体に影響が出る。この理由はわかるかい?」
「肉体を魔術流路として利用するため影響があって、水が通らない管に無理矢理通すから周りが壊れる感じって聞いたことがあります」
そう聞いたことがある、お前にな。
「おー!レイズ君は頭がいいねー、正解だよ。僕の友達もそれで死んじゃったみたいでねー、馬鹿だよ馬鹿」
こいつ……
「で、その解決策もあったんだけど友達はそれをしなかったんだよねー、本当……馬鹿だよ」
「方法って何なの?」
「簡単簡単、魔術流路の移植だよ。でもそれをすると移植する側の人は死ぬからねー、結構非人道的だよー。で、次は魔術流路は完全しているけど魔術に肉体がついていかず肉体に影響が出る、これは君かな?レイズ君」
「はい、頭の奥が痛くなる感じがして」
「これはまだマシなんだよねー、筋肉を使い過ぎてその熱が周りに影響してる感じだから。この場合影響するのは頭だけだね」
「身体を鍛える必要はないってこと?」
「鍛えるのは頭だけ、ちなみに解決策には脳を入れ替えるってのがあるよー、できるかわかんないけどー、やってみる?あはははっ!」
それは最早別人なんだよ。
「で、もう1つのやり方としては頭の処理能力を向上させるしかないかな。ま、こっちも結構大変なんだけど、これには適正もあって……やるぅ?」
「はい、お願いします」
選択肢はない。
「決まりー!じゃここに寝て」
言われるがままベッドに寝ると、ララが胸に手を当てる。
「始めるよ、準備はいい?」
「うん、お願い」
徐々に意識が遠くなる。
「待って!そんなすぐに信用するなんて……」
「あれー心配?もしかしてレイズの彼女?妻?」
「そんな所よ、だから心配なの」
「あー、じゃこれ見せればいいかなー」
ララは穿いていたスカートを脱ぎ捨てる。
「なっ、へんた」
そこに下半身は無かった。
正確には、人間の下半身は。
「それ、何」
「これー?これはね、神様だよ」
……そうだ、思い出した。
何故忘れていた?
ララが転生により得たのは半神の力。
日本からの転生者。
それが、ララだった。
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