第56.5話
「…………」
黴臭い階段を下る女。
そんな場所に行きたくはなかったが、契約上仕方なかった。
その女、セイレン・テュラハムの横には全裸の少年半獣人。
目は虚、何故か股間は濡れていた。
「楽しかったわ、でもお別れね……来たわよ」
階段の先の扉が開くと、中には既に先客がいた。
「かわいい子ですね?お名前は何というのですか?」
返事はない。
「化け物が私の大切な子供達に話しかけないでくださる?」
黒い女、フィクナがそこにはいた。
「すいません、まさかそんな大切にされてるなんて思わなくて。もしかして将来の旦那さん……の訳ないですね、催眠をかけないと相手にされないようですし。歳というのは非常なものですね」
「……死にたい?」
「あら?もしかして更年期ですか?」
「ごめんなさい、まさかあの子を逃したことをそんなに根に持っていたなんて思わなくて。でも貴方の場所はもうないのじゃないかしら?お姉さん?」
「……殺しますよ?」
『やめろ、見苦しい』
「失礼したわ、もういたのね」
男は玉座の様な場所から2人を見下していた。
顔には仮面、腰は曲がっておらず、車椅子に乗っている様子も無い。
声は少し仮面のせいでこもっていたが少なくとも老人の声では無かった。
「今日も連れてきたわよ、貴方の大切な贄」
「あ……う……」
全裸の半獣人は虚ろだった。
『楽しむのはいいが、傷をつけるな』
「ごめんなさい、つい虐めたくなってしまって。さぁあの中に歩きなさい」
黒い液体の満たされた四角い石櫃 少年は入って行く。
『……まずまずだな』
少年の全身がその液体に浸かり姿が見えなくなり数分、黒い液体は底から全て石櫃から流れ出るとそこに少年はいなかった。
「それと急だけれど契約は今日でお終いにさせてもらうわ」
『……理由を聞かせて貰おう』
「バレちゃったみたいなのよね、レイズを逃したのがまさかこんなことになるなんて」
『貴様……』
「でも、ほぼ完成なんでしょ?ならいいんじゃないかしら?とにかく私は降りるわ、あとはに任せるわ。もし足りなくなったら勝手に補充して、何人かは上にいるから。私はもう満足しちゃったわ」
セイレンの姿が見えなくなる。
『貴様は何を突っ立っている、弟を取り戻す算段はついたのか?』
「駄目でしたね、ヴィルも使えなかったですし」
『貴様も贄になりたいか?』
「私を取り込んでも何の足しにもなりませんよ?」
『それと貴様、リンとノルを殺そうとしているようだがそんな命令した覚えはないぞ?』
「あの零式使いは死なないとレイズが戻って来ませんから」
『勝手な真似はするな、でなければお前の願いは叶わないぞ』
「……ケチですねー、わかりましたよー」
フィクナが男の仮面を取る。
「任せてください、全ては1つに……ですよね?」
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