第56話

 突っ込まずにはいられなかった。


「本当だ、正確には超回復1択の魔術だがな。それより納得した、我に貴様らの情報を教えてきた女、そいつを追ってきたのだろう?」


 俺は納得していない。


「女?私達はナドフを追ってきたの」


「ナドフ?そいつは知らないが黒い女なら知っている」


 黒い女、フィクナ。

 こうなれば完全にナドフに関わっているのは間違いないだろう。


「貴様らがやりたいことが何となく理解できた、だがこの更地で話をするよりかは屋根のある場所で詳しく話した方がいいだろう」


「でも屋根ってお屋敷は……え?」


 なんかいつの間にか小さな家が建っているんだが。


「我がメイド達は優秀でな、ほら、入れ」


 優秀で片付くのだろうか。



◇ ◇ ◇



「貴様らが追うナドフとやらについては我は知らないが、話を聞く限り繋がりそうな情報なら持っている。そいつの家には外側から鍵のかかった部屋が幾つも並んでいたのだろう?」


「うん、変な作りだなって思っていたけど」


「それと同じ作りの部屋を見たことがある。とはいえ我ではなくそこのメイドがだな」


 そこのメイドと言われて目を向ける。


「こんにちは!!まんちと申しますにゃ!」


 猫だ、完全に猫。

 だが手足が短い、あれだ、マンチカンだ。


「其奴はある女の元で働いていたのだがあまりにヘマをし過ぎて困り果てていた所を我が引き取ったのだ」


「はい!ヴィル様には感謝しかないですにゃ!」


「かわいいわね……持って帰って良い?」


「ダメだ、途中までの同行はさせるがな。探し物を見つけるのが得意らしく有用なメイドだからな。話を戻す、説明してやれ」


「はい!僕が部屋の掃除を任された時なんですにゃが、まちがえて全ての部屋に洗剤じゃなく油を撒いてしまった時に変な隙間があったんにゃ!いつもは入れないくらいの隙間だったんですにゃ、油のおかげで入れるようになってつい入ってみたんだにゃ!」


 もうこの時点で前の主人に同情する。


「そこはずーっと外から鍵のついた部屋が並んでいて、中には何かいたんだにゃ。何かなと見ようと思ったらちょっとご主人様が来たみたいで、中から……なんかやばそうだと思ったので引き返したんですにゃ」


 それが本当なら気になる。


「それどこの誰なのかな?」


「何処の誰?ふっ、


「僕が?」


「おしえてやれ」


「はい、僕が前お使えしていたのは」



 会っている?

 そんな奴に会った覚えは無いんだが。




「セイレン・テュラハムだにゃ」

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