第33話
俺は黒い女と出会った裏路地にいた。
酒場のすぐ近く、そしてここはフィクナ姉と一緒に泊まったホテルの目の前だった。
「いるんでしょ、姉さん」
闇、その中から現れたら黒い女。
「流石ですレイズ、私のメッセージに気づいてくれたなんて」
「……本当に姉さんなの?」
「はい!レイズ大好きフィクナお姉ちゃんですよっ!」
周囲には
いつも元気で俺の事を1番に心配してくれる姿は変わらない、だからこそ恐ろしい。
「でも悪い子です、あの生意気で腐った目をした女狐と黙ったまま気色の悪い女といるんですから」
尋常ではない殺意。
「リンとノルはそんな人じゃないよ」
「ふふっ、相当に毒されていますね……でもいいんです、レイズの才能を知ることができましたから。私だってレイズを傷つけたくはなかったんですよ?それよりどうですか!私の零式は!」
覚零者の首を切り落とす。
普段のフィクナなら人を殺すことはおろか魔物すら必要がなければ逃して返す。
別人だ。
「零式は人殺しの道具じゃない」
「そんな小さいこと気にしなくていいじゃないですか、強さこそ1番ですよ?だからレイズ、私と一緒になりましょう?」
「……何を言ってるの?」
「言葉通りの意味ですよ?私とレイズでいっぱい子供を作るんです。誰よりも強い私とレイズが組めば誰も勝てないさは最強です。子供も間違い無く最強、私みたいに辛い思いをすることもない」
その想いには以前のフィクナの本心も入っているだろう、だが……
「無理だよ、今の姉さんは嫌いだから」
「……そう、ですか」
殺意。
それは誰に向けられたものなのか。
「まぁいいです、次に会った時にあの女達を殺しておけばいいだけですから。だから元気にしているんですよ?」
「待って!いつ零式水晶に触ったの!?誰が持っていたか知ってる!?」
「何の話です?私は力を与えてもらっただけですよ?」
「与えてもらった?誰かにってこと?」
「はい、帰ろうとしていた私に真っ黒な男の人が襲ってきたんです。そうしたら凄い力をくれて……あ、安心して下さい、襲われたっていいましたけど、まだ処女ですから!」
「その人の顔は!?」
「……なーんか萎えました、私のことを心配してくれると思ったんですけど?じゃああの2人にいつ死んでもいいように準備しておいてって伝えてください」
待て、ここで逃したら何の手掛かりもない。
「お願い、姉さんだけが頼りなんだ」
「頼り……ちょっと嬉しいですねそれ。わかりました、覚えているのは王国の魔術師団の紋章が見えたくらいです、これでいいですか?」
王国の?
高度な零式を編み出せる魔術師。
考えられるとしたら、ルドフかナドフか?
「ありがとう」
「お礼はいりません、お姉ちゃんですから」
闇の中に消えてゆく。
いつのまにか拳が強く握られていた。
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