第31話
──
「があっ!?」
──
「がっ、ぐぁぁぁぁ……」
考えなしに向かってくる男達を切り裂き、動きを止める。
幸いにもゾンビのように動きは素早くなく制圧するのは難しくはない。
ただ相手は操られている状態で決して殺したり致命傷を与えてはいけないことだけは注意すべきことだった。
「くっ!?」
「ノル!!」
ノルの右腕から血が噴き出る。
「
それにこいつら、全員ノルを狙っている。
「がぁぁぁぁぁあ!!」
迷っている暇はない。
──
「げぁっ!?」
「ぐがっ!?」
零式が薄い刃の様に放たれ、男達の急所を外しながらも自由を奪ってゆく。
「大丈夫!?きちんと押さえて!!」
「平気、浅い」
幸い深い血管は傷つけていないようだ……よかった。
「離れていて、すぐ終わるから」
「無理は駄目、レイズじゃ……」
「いいから」
大切な弟子を傷つけた罪、その身で贖ってもらうぞ?
──
男達は互いに争い合う。
何も無いところをひたすら殴り続け、そして酸欠で意識が朦朧としながらもその動きをやめない。
お互い失神するまで争い合って貰っても構わないが血の海になるしノルには刺激が強すぎるだろう。
操られている事を踏まえればこのくらいが丁度いい。
これで無力化出来たはずだ。
「レイズ、真っ青」
「だ、大丈夫」
使った後は調子が崩れるのであまり使いたくなかったが仕方ない。
敵はもういないしこれで……
「うゔ……グァぁ!!」
何か、おかしい。
シドラと一緒だと思い込んでいたが、これはどこか違う。
何かもっと、明確な殺意を持っている。
「残念ですね、もう少しで殺せる所だったんですよ?邪魔しちゃダメです」
闇の中から現れた黒い女。
それを俺が認識したと同時にノルは女の眼前にいた。
──
女はただ抵抗せずそれを受け入れ、轟音と共に建物へと吹き飛んでゆく。
「あら、痛いですね」
「!?」
無傷の女。
その純粋な蹴りでノルが吹き飛ばされる。
咄嗟に当たる前に
「その女を庇う必要なんてないんですよ、レイズ?」
何処で聞いたことのある声、しかしよくわからない男の声が重なっているせいで聞き取りづらい。
「私と一緒に来ましょう、こんな泥棒女なんて死んでしまって当然なんですから」
女がノルに触れようとする。
狙いを定め、放つ。
今度は容赦はしない、明確な殺意にはそれ相応の罰を受けて貰う。
──
黒い女は真っ二つになる。
「危ないですね、もう少しで半分になってしまう所でしたよ?」
女の喉に零式絶禍を発現、間違いなく即死の攻撃を放ったつもりだった。
だが、何故か辛うじて皮一枚で上半身と下半身が繋がっていた。
急所を避けたのだ。
それは不可能だ。
もし万が一できるとしたら、零式絶禍が身体を裂くと感じた瞬間にその場から逃げること。
それはどんな生物でも反応出来ない速さだ。
更に瞬時に身体が再生していた。
「あら?怪我していますね、ですがあの方ならどんな傷もどんな力も思い通りです!だからさぁお姉ちゃんと一緒に」
面白い。
リスクは承知、こうなれば俺の全力で……
──
周囲一帯、建物もろとも無数の
俺ではない、ならそれは誰か。
「その子のお姉ちゃんは今私だから、勝手に名乗らないでくれる?変質者」
成長したリンが、そこにはいた。
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