第30話

「2人きりは初めて」


「あれそうだっけ?」


「うん、一度ふたりきりになりたかった」


 イシャが何故かわからないが非常にリンを気に入ったらしく、聞き込みはノルと2人で回ることになった。

 ちなみにシーアはどこにいるかわからないらしいがいつものことらしい。


「零魔団員に一通り聞いたけどそういう人は多いからわからないってさ、他に特徴があればいいんだけど……」


「レイズ、似てる」


「え?」


「レイズ、レイに」


 ……心臓が飛び出るかと思った。

 ノルは無口で何を考えているか分かりづらいがかなり勘がいい。

 試練の時もそうだが、第六感というか他の人にはない感覚、感性がある気がする。



「それは……喜んだ方がいいのかな?」


「喜ぶべき」


「でもレイは詐欺師で悪い奴なんでしょ?そいつと一緒なのは」


「レイは


 「……最初と言っていることが違うんだけど」


 意味わからん。

 ノルはたまにこう言う意味わからないこともいうから難しい。


「レイが詐欺師でも詐欺師じゃなくても私は好き」


「え、ありがとう」


「レイズのことじゃない」


「そうだったね……」


 まともに相手をするだけ無駄な気がしてきた。


「後はどこに行けば情報を集められるかな、やっぱり酒場とか?」


「行く価値はある」


「じゃあ決まりだね」


 全身黒の男なんて酒場にいるわけないが、何かしらの情報はあるはずだ。



◇ ◇ ◇



「全身黒のならみたことあるぜ?それもとびっきり怪しくてな。もしかしたら探してんのはそいつかもな」


 数人に話しかけた所、そんな重要な情報を得ることが出来た。


「その人はここによく来るんですか?」


「あー、たまにだな。男漁りっぽいんだが、そいつそんなことしなくてもいいくらいすげぇ美人らしいんだよなぁ、俺も会ってみたいぜ」


 男だとばかり思っていたから見落としていた。


「お?おお?!噂をすりゃああいつだよ!あいつ!」


 全身黒の外套に身を包んで顔はわからないが、胸のふくらみは間違いなく女性。


 かなり若い男とはなしている。


「出ていく、追う」


「ちょっと待って!あ、ありがとうございます!」


「あ、ちょ!もし名前とかわかったら教えてくれよな!!」


 男と黒い女は酒場から出て路地裏に向かったようだ。


「……見失った、早い」


「追っていたのがバレたかな?」


「多分、それに零式の残渣がある」


 かなりクロに近い。

 それに零式の残渣があるのも気になる。

 未熟な零式使いなのか、それとも……


「戻って情報共有しよう、この辺りを皆で調べれば」


「危ない!!」


 ノルに突き飛ばされ地面を転がる。

 俺の代わりにノルが誰かに襲われていた。


「こいつさっきの!」


「がぁっ!あぁぁぁぁぁぁあ!!」


 黒い女と話していた男が豹変して襲いかかっていた。


 これはシドラと同じ状態だ。

 謎の零式の被害を受けているのは間違いない。


──零式衝ゼロ・インパクト


 ノルの零式衝ゼロ・インパクトて男が大きく吹き飛ばされ微動だにしなくなる。


「危なかった、早くリン達に知らせないと」


 いや、それは難しそうだ。

 周囲から唸り声。

 10や20では足りないくらいの多勢。


「誘い込まれたみたいだね」


「レイズは逃げて」


「僕が逃げると思う?」


 弟子を犠牲に逃げる程落ちぶれてはいない。


「2人で倒すよ!」


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