第29話

「あんたもっと小さくなりなさいよね!」


「仕方ねぇべ、上に乗ろうと思ったら壊れる言われたんだがら」


「ハシャマ、くさい」


「酷いべ!そんなくさくは……なぁ、レイズ様はそんなん思わないよな!」


「あ、あははは……」


 翌日、ユースティア中心部へ戻る馬車の中はぎゅうぎゅうだった。


 行きが3人で帰りが5人、同じ馬車なら当然だった。

 もう1台借りればと思ったが近くには無く、仕方なくこの状況になっていた。


 そしてハシャマが臭いと言われているが、これは臭いというよりフェロモンと言った所だろう。

 並の男なら恐らく匂いに誘われて襲いかかっていてもおかしくない。

 理由はわからないがハシャマがただの人間ではないことは明らかだった。


 そんな中でなぜ俺が平常心かと言えば零式霧ゼロ・ミストでフェロモン(フェロモン有害がそうかはわからないが)を完全にではないがシャットアウトしていたから。


「うぐっ、ぐぇっ」


 だが、巨体に圧迫されるのまでは防ぎようがなかった。


◇ ◇ ◇


「お疲れ様、どうだったかな?何か収穫は……」


「疲れたべ!ん?ちいせぇくてべっぴんさんだなぁ!零魔団の人だべか?」


「……あったようだね」


 帰ってきてシドラであった出来事を説明する。

 原因はよくわからない結晶だと話して、俺の水晶だったことは話していない。


「これですか……」


「触らないでね、何が起きるかわからないから」


 調査のため、祭壇に飾ってあった水晶を回収してライに渡す。


「承知しました、この手のものは得意です」


 眼鏡をかけたライは黙々と作業を始める。俺が見ればいいのだろうが、実は零式結晶は偶然の産物だった。


 構造は理解していたが、実は中に入った零式や魔術を解析するだとか取り出す方法はわかっていなかった。


「すぐには終わらないだろうし私達はやれることをやりましょう、黒い男の手がかりはほとんどないけれど」


「まかせるべ!」


「あんたは目立つからここにいる!」


「えーつまんないべ、なぁイシャ?」


「イシャはでていいっていわれたべ!」

「なんでぇ!?」


 ハシャマはどうやら自分の魅力(と言うか色々な大きさ)の自覚がないようだ。

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