第28話

「イシャちゃんは大丈夫?」


「平気だ、今は疲れてねちまった」


 プリズロックの大群を殲滅した後、俺達はハシャマの家で休ませてもらっていた。


「大きな怪我がなくてよかったね、黒い人物の謎は解けなかったけど……どうしたの?」


 リンが睨んでくる。

 ……まさか正体がバレたか?


「助かったわ、ありがと」


 ……お礼を言うのが恥ずかしかっただけか。


「そんならイシャが言ってたべ、そん黒い奴はらしいべ」


「ユースティア中心部?バスダニアからじゃなく?」


「んだ、それを見たんだと」


 しかし、それなら別の意味で納得が行く。


 ユースティアにいたのであれば俺の家を知り水晶を盗み出すことなんて簡単。

 

 だが同時にそれは王国の魔術師団、もしかして零魔団に犯人がいるかもしれないと言うことだ。


「この件は秘密にした方がいいんじゃないかな?」


「言われなくてもそうするわよ、少なくともここにいる皆んなは信用できるもの」


「リン、レイズのこと信用してるの意外」


「別にいいでしょ?とにかく帰っても今回の話は他言無用よ、いいわね!」


「うん、わかったよ」

「了解」

「わかったべ!」


「……いやあんたは関係ないから」


「なんでだべ!わいもなんとか団に入りたいんだべ!」


「あのねぇ、零魔団は零式を使えないと入れないの。あんたみたいな田舎者が使えるわけないでしょ?」


「零式ってこれべか?」


 指に零式を纏い、木の実を砕く。


「何でつかえんのよ!?」


「いやー、わいまじゅつってもんがで使えんかってなー、だから適当に使ってたんだべ」


「中途半端……適当……」


 散々な言われようだが、それが零式に繋がったのは偶然もあるのだろうが才能としかいいようがない。


「これなら大丈夫、ハシャマも仲間」


「やったべ!ちなみにイシャも同じもん使えるべ。これでついて行っても問題ないべな!いやーずっと田舎んいたから一度は都会行ってみたかったんだ!」


 完全に観光しに行くノリ。

 しかしハシャマの力は今後有用なことは間違いない。

 一撃でプリズロックを葬れる攻撃力と零式による防御力、単純だがそれゆえに強い。


「よろしくねハシャマ」


「任せてくれだ!」


「……連れてくなんてまだ言ってないんだけど」


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