第14話
「うぉぉおおおおお!!」
歓声の中で立っていたのは、俺1人。
「優勝は……え?レイ……?そいつは……と、とにかく優勝はレイだぁ!!」
コロシアム中央に作られた表彰台、そこに立つのは俺、そして……
「あなたが優勝者?名前はレイ?」
「……そうだ」
リンが話しかけてきた。
かなり訝しんでいるが、どこか緊張しているようだ。
「本名?まさか馬鹿にしてる?怪しいんだけど」
「私達を舐めていると痛い目に遭う」
「優勝者にかける言葉とは思えないな」
「そんな名前で出場するからよ、であんた……あのレイ?」
あの、とは俺の前世のことだろう。
最低の詐欺師。
そう思っているのなら、ここで本当のことを言いリンとノル2人を相手にするのは互いに無傷では済まない。
それに歓迎している雰囲気も無い。
「残念ながら違うな」
「……あっそ、じゃあ詳しい話は食事の時にしましょう」
「そうしてくれ、だが少し用事がある。夜にしてくれないか?」
「私達は忙しい、今すぐ」
フィクナに
その後2人に言われるままについて行く。
場所は王城のすぐそばにある建物。
全体は白を基調とした神殿の様なそれは右半分は銀の装飾、左半分は金の装飾が施されていた。
入ってしばらく進むと円卓が置かれた客間
に案内される。
「座りなさい」
メイドが続々運んできた豪華な料理が目の前一杯に並ぶ。
「思う存分食べなさい、こんな料理きっと食べたことないでしょ?」
「それより話をしたい」
「話?別にいいけれど先に言っておくわ、付き合えとか結婚しろなんてふざけたことを言ったら出て行ってもらうから。本当身の程を弁えない男が多くて困るわ」
「そんな話をするつもりはない、ある男について話を聞きたい」
「ある男?零魔団には碌な男いないわよ?」
「レイ・ゼロス、零式を奪ったという男について聞きたい」
瞬時にしてリンの表情から余裕が消える。
ノルも何処か警戒した雰囲気だ。
「……私達があいつから何をされたか知ってそれを聞いてるの?」
「知らないから聞いているんだ、史上最低の魔術師だそうだがどれだけ最低な奴か知りたくてな」
……沈黙。
どちらが口を開こうか迷っている風にも見える。
「……皆が言っている通りの最低な奴よ」
「本当か?」
「本当よ!そんなこと聞いてどうするのよ、性格悪いわね」
「何をされた?」
「言葉にすらできない酷いことよ」
……奴隷として厳しく接してきたとは言えそこまでの扱いをしたつもりはなかった。
「そうか」
しかしそれは俺の主観だ。
だから恨まれても仕方ないかもしれない。
だが、これだけは言いたい。
「……ありがとう」
「何?ここに呼んだのは決まりだからなんだけど」
「そうだな」
ありがとう。
どんな形でも零式を広めてくれたのだから。
俺が詐欺師でも恨まれていたとしても、それは些細なことだと気づいたからだ。
「それより今度は私たちの番よ、あんたのその零式は誰から教わったの?まさか……」
「それでは俺は失礼する」
「は?逃がさないわよ」
出口にはノル、目の前にはリンが構えをとって立ち塞がる。
「申し訳ないが俺にも用事がある、すまないが食事は自由にしてくれ。それとその返事だが少なくともレイ・ゼロスから教わったものではない。俺の零式はそんな凄かったのか?」
「全然?」
だろうな、かなり力は制限した。
「ただ……」
「ただ?」
「……なんでもないわよ!それとこれ!優勝商品の豪邸の鍵、場所はあとで団員が案内するわ。終わったならさっさと出てって、そろそろ新入団員を集める準備があるんだから」
新入団員か……いや待てよ、それなら。
「入団か、条件はあるのか?」
「15歳以下限定。貴方は無理」
明確な拒絶、ノルは俺の事が嫌いらしい。
だが都合がいいな。
「俺ではない、俺の弟子だ」
「……今何て言ったの?」
「そのままだ、俺の弟子を零魔団に入団させたい。才能は俺が保証する」
「随分勝手ね」
「俺の弟子はクォーターエルフだ、弟子の成長を考えるなら少しでも理解のある環境で生きて欲しいと願うのは当然だろう?ハーフエルフならわかってくれると思うのだが」
「それは……」
ここまで言えば断れないだろう。
「わかった、銀鷹に入ってもらう」
「ノル!?」
「いいのか?」
「入って使えなければ追放する」
「ちょっとノル!」
「私達と同じ。あの人に私達は救われた、だから私達も同じことをするべき」
「あの時とは違うわ、だってこんな怪しい奴の弟子よ!?それを簡単に信用していいとは思わないわ!」
「私が責任も面倒もみる」
特訓でもそうだったが、ノルは一度そうと決めたら考えを曲げない。
「変わらないな」
「……?」
「ああ、もうわかったわよ!」
「決まりだな、弟子については明日ここに来るよう話しておく」
「うっさい!早くどっか行きなさいよね!!」
「失礼した、それと」
俺は鍵を投げ返す。
「お礼だ」
ほんの数分の久しぶりの再会。
俺については何もわからなかったが、1つ確実にわかったことがある。
それは、2人は元気に暮らしていたことだった。
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