第13話
「じゃあ、行ってきますね!レイズは遠くから見てるんですよ?」
「うん、わかった」
俺とフィクナはコロシアム、いわゆる闘技場のような巨大な会場の中にいた。
どうやら大会はまだのようで参加者は宴会という感じで参加者が飲み食いしていた。
「私達も遠慮なく食べましょうか、レイズは何を食べます?肉ですか?魚ですか?」
「ええと、僕は……」
──優勝者はトロフィーと大豪邸、更に銀鷲零魔団団長ノル・ノート、金獅子零魔団団長リン・ノートだけの食事会へ招待されるらしいぜ。
どこからか聞こえて来た話だが、2人と食事会だと?
「…………」
「どうしました?」
「ごめんちょっとトイレ!ちゃんと大会は棄権するから!」
「え!?」
それなら話は別だ。
優勝すれば2人に何があったのか聞き出せるかもしれない、が姿は隠したい。
……なら。
そして、大会の時間。
「準備はいいか!大会はバトルロワイアル、巨大な広場から出るか棄権したら負けだ!」
再び集まった時には宴会のような雰囲気とは変わり、殺気立った男達で溢れかえっていた。
「おい何だあの大男……」
その目線の先の俺は2mは超える大男になっていた。
理由は身につけていた
まだ残っていて助かった。
元の家に行ってみると家自体は跡形も無かったが、地下に保管していたこれだけは残っていた。
零式魔人は俺がそのうち身体が動かなくなることを見越して作っていた自分の手足の代わりとなる道具だったのだが、使う間もなく寿命がきてしまった。
「全員準備はいいか!それでは……開始だ!」
参加者同士が一斉に戦闘を始める。
フィクナはどこだ?
「レイズーどこですかー?」
フィクナが心配している。
参加はしないと言ったが戻ってきて声をかければ良かったか。
「何をよそ見してんだ女ぁ!!」
男が背後から襲いかかる。
「あのー、弟を知りませんか?」
「んなもん知るか、ぎゃあ!?」
フィクナは攻撃を避け、握った矢を男の肩に突き刺し勢いを利用して場外へ放り投げる。
心配は不要そうだ、こちらもはじめるか。
「なんだぁてめぇ」
「……何か?」
「あぁ!?俺よりもデケェ奴がいるのが気にいらねぇんだよ!!吹っ飛べや!!」
自分の身体を自慢するかのようにタックルしてくる。
──
「なっ、動かない!?」
魔術を使わないのは舐めているのかと思ったが脳筋の見た目通りの攻撃なのだろう。
「男なら正々堂々拳で勝負しろやぁ!」
「確かに一理ある、では」
男と同じように構えをとる。
零式魔人は身体能力まで向上するように見えるが生活に必要な最低限の移動の補助までしか出来ない。
故に見掛け倒しだ。
「うおらぁ!!ぐあっ!?」
──
爪先程の零式を指から発射し男の額に当てる。
周囲からは何かに吹き飛ばされ気絶してしまった様にしか見えない。
「あいつから倒せ!」
どうやらチームを作っていたようだ。
正々堂々が呆れている。
「あがっ!?」
「ひうっ!?」
どいつもこいつも魔術を使わないのはお仲間なんだろう、零式弾で全員が気絶する。
「後はお前だけだ」
「ひぃっ!?待て!金ならやるぶげぇ!?」
「優勝しか興味はない」
さて後は……っと、急にどこからか矢が飛んできた。
「誰だかわかりませんがそれは零式、話を聞かせてもらいます!」
まぁ、当然フィオナにも当たるか。
容赦なく矢を射ってくるが狙う場所は全て急所から外され、敵とはいえ優しさを感じる。
「そういえば弟を会場の外で見かけたぞ、黒髪の……確か、名前はレイズ・アレグリスだろう?」
「そんな所に!?」
「ああ、お姉ちゃんを探していたみたいだぞ?半泣きで探していたな。両親へのお土産を買いに迷子になったようだが……ん?」
一瞬で姿を消していた。
少し心苦しいが戦う訳にはいかないし、仕方ない。
さて、残りの人数を確認すると5人ほど。
「残りはお前だけか」
5人はその場で結託したのか俺を取り囲む。
「私はリンとノル、2人に大切な話がある、譲ってくれないか?」
「僕が誰か知らないのか?金獅子零魔団副々々々々団長ワン様だよ?リンとノルは将来の妻、君が話していい相手じゃないんだよねぇ!」
……それは平団員ではないだろうか?
周囲の参加者と多少だけ身なりが違う。
「王族の高貴な血、そして確かな実力。僕以外にいるわけがないだろう。それに美しいハーフエルフの処女、抱けば最高に違いない」
高貴な血が本当なら確かにそうかもしれない。
「だが、親の挨拶は済ませたのか?」
「はぁ?」
ノルとリンを貴様の様な男に渡すわけにはいかない。
「来い、挨拶代わりにどれほどのものか見てやろう」
「くっ……上から目線でふざけやがって!」
一斉に襲い掛かり全員が素手、零式を使おうとしているのは明白。
だからあえて触れさせる。
「終わりだ!!」
………しーん
「……へ?」
起きるはずの零式は起きない。
「な、何で……」
「やはり、団長とやらに教わってはいなかったか」
「何のことだ!」
無言の多重詠唱、それと全く同じ多重詠唱を詠唱し返し相殺する。
それは並大抵のことでは無い。
零式発動は触れてから使用者によるが大抵は0.1秒未満。
俺にそれが出来たのは俺の唯一の知り合いに幾度となく零式を打ち込んで貰い鍛錬したからだ。
とはいえ、今のはかなり弱い零式だったな。
零式絶の中でも剃刀程の絶と言った所。
「今度はこちらだな」
──
零式壁の応用、周囲に零式壁を造り、一気に拡張させることで壁に激突したかの衝撃を与える。
同じ様に相殺する実力、はたまた零式壁で身を守ることができるのならその時は第一関門突破としてやってもいいだろう。
応用を効かせればいいだけ。
「がっ、ぐぞぅ!僕の歯がァ!」
が、副々何とか以外は気絶してしまう。
「てめぇ!まじで殺してやるぅ!」
零式か。
零式絶か、零式拳かはたまた別の何かか。
せめて絶くらいは使って欲しいものだ。
零式は魔力を発現して扱う、当然魔力量が多ければ強力になるが、零式絶は薄く鋭利な紙の様に魔力を広範囲に発現する為に効率の良い零式だ。
さて、どう出る?
「喰らえ必殺!」
これは……
──零式弾……??
「どうだぁ!」
「…………」
「激痛で声も出ないか!ぎゃん!?」
……雨粒程の零式弾。
速度もかなり遅く本当に雨が降ったよう。
お返しに拳サイズの零式弾をお返しする。
本当に零式使いなのか……?
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