第10話

「……大丈夫?」


「……え?」


「顔、真っ青」


「あ、うん……大丈夫だ……です」


「レイズ!ごめんなさい、心配かけましたね、まずは宿屋で休みましょう」


「それなら銀鷲零魔団の拠点がある、そこなら治癒魔術も……」


「結構です!!」


 拒絶は明白、初めてそこまで感情をあらわにするフィクナを初めてまた。


「申し訳ありませんが貴方達銀鷲零魔団も、零式も信用していませんから……失礼します」


 俺は引っ張られ酒場を後にする。


「本当にごめんなさい、あのような人を見ると我慢できなくて……頭痛いですか?気持ち悪いですか?あのような魔術を見れば当然ですよね」


 フィクナの言葉の端々には零式への特別な感情があるように思えた。

 知らなかったというのは嘘だったようだ。


「姉さんは零式を知ってたんだね、そんなに嫌いなの?」


 直球の質問、フィクナには悪いが子供の立場を利用した。


「……私の両親が死んでしまったことは知っていますよね?」


「うん、詳しくは知らないけど」


「両親は殺されたんです、零式を使う何者かに」


「…………」


「知らないなんて嘘をついてごめんなさい。でもレイズには関わってほしく無かったんです、あれだけには……」


「……そうなんだ」


「確かに零式は素晴らしい魔術です、それに銀鷲さんの団長さんも、ですが」


「ううん、こっちこそごめん」


「レイズが謝ることはないですよ、魔術に興味を持つのは自然なことですから……さて!暗い話は終わりです!今日の宿ですけれどとっても良い宿がとれたんです!大浴場が部屋にあるなんて凄いんですよ?」


「僕も疲れたし、それならゆっくり休めるね」


「はい!ですから今日は一緒にお風呂に入りましょう!」


「……え」


「家のお風呂は小さかったから一緒には入れませんでしたが、ここなら全然余裕です!」


 ちょっと待て。

 フィクナと風呂に?それはまずい。

 第一今まで入らなかったのは風呂が小さいなんて理由じゃない。


 フィクナは正直言って超絶美少女だ。

 異世界も美人イケメンばかりだがその中でもトップクラス。

 身体もとんでもなく年にしてはかなり発育はかなりいい。


 一緒に風呂?それは息子が反応する。


 「えっと、僕は今日はいいかな」


「何いっているのですか、毎日身体はきれいにしないと病気になってしまいますよ?……さて、着きました!」


 「着きました、ってここ……」


 見たことがある。

 この独特の雰囲気、無人のロビー。

 

「ここ宿屋じゃないよ!」


 異世界にもあるんかい、ラブホ。


「え?ですがベッドシャワーもありますし、以前母様と父様が入って行くのを見た事があるんです、それにここは『レイズとフィクナには教えられない』って言っていて、そう言うところにいくの、わくわくしませんか!?』


 しない!少なくともここが何処かわかっている俺は!!




 

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