第7話

 ノルとリンを拾ってから2ヶ月が経とうとしていた。

 その後1週間とたたずにノルも水晶の試練を完了させ、第一の試練と第二の試練はノルとリン共に想像以上の才能を見せてくれた。

 

 だが問題は3つめだった。


「はぁ……はぁ……」


「………全然できない」


「無理はするな」


 第三の試練、それは零式を実際に使うことだった。

 発現までで止める必要があるのだが、ハーフエルフは魔術適正は高いが故、無意識に魔術の行使をしてしまうようだった。


 零式水晶では発現しないよう魔術を発現で停止させる機能があった為に気づかなかった。


「ごめんなさい」


「謝るな、無理をさせているのは俺の方だからな」


「ねぇ、私達もだけど最近レイ体調悪いみたいだし息抜きしたいわ、いいでしょ!?」


 2人の前では平気なフリをしていたが、俺はもう歩くのがやっとだった。

 まさか1ヶ月でこれほど悪化するとはな。


「俺は平気だ、それよりも試練を……」


「たまにはいいじゃない!ノルだってそう思うわよね!?」


 明確な拒絶は初めてだった。

 まだ幼い2人にはストレスが溜まっていたのだろう。


「いくわよノル!」


 リンは半ば無理やりノルを連れて出ていく。


「……レイ」


「気にするな、行ってこい」


 ストレス発散すればすぐに戻ってくる、そうして行かせたのだが。

 


◇ ◇ ◇



 それから、3日が経った。


「……信用し過ぎたか」


 2人は奴隷だ、俺が油断して逃げ出すタイミングを見計らっていたのだろう。

 

 それにそもそもが間違えていたのかもしれない。


 まだ幼い2人に任せるようなことではなかったのだ。


 だが……教えることは全て教えた。

 後はあの2人がそれを継ぐか、それとも平穏に生きるか。


 事前に彼女達には俺の財産の場所をそれとなく伝えていた。

 あれがあれば100年は生きていける。

 ハーフエルフの寿命は人間のそれとは違うだろうが、しばらくは足りるはずだ。


 ……いや。


 本当は寂しかっただけなのかもしれない。


 魔術なんてどうでもよく、ただ一人で死にたくなかった。


 と言っても俺の側には誰もいないが。


 ……眠いな。


 今日は一際眠い。


 誰かが俺を呼ぶ声がする気もするが、よく聞こえないし瞼が重過ぎて開けられない。


 ……寝るとしよう。

 もしかしたら明日には腹をすかして……2人は戻って来てくる……かもしれないのだから……な…………

 




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