第5話

「まずは無詠唱の練習だ、この30冊の魔術書の内容を全て暗記して貰う」


 第一段階は無詠唱、詠唱を言葉に出さずに行う方法だ。


 1つ1つでゴブリン程度なら殴り殺せる程分厚い魔術書、これを覚えればこの世界の大半の魔術は無詠唱で使えるようになるだろう。


「は?無理」


「さっきまで何でも出来るって言っていなかったか?コツとしては詠唱を文字の羅列として覚えてるのではなく一つの絵として覚えれば簡単だ」


「全然説明になってないわよ!」


「そうだな……今から1ヶ月で全て覚えて貰う」


「レイ、どれくらいで覚えた?」


「俺は不眠不休で10日だ」


「そんなことしてると早死するわよ」


 当然嘘だ。

 1年かかったがそれを言う必要はない。

 俺なら無理だが2人ならやれるだろう、というかそうでなくては困る。


「毎日1冊、寝る前に確認する。もしできなければ……」


「そうやって脅したって無駄なんだから!」


「何もしない」


「……え?」


「だが、もし出来たならこれをやる」


 革袋から取り出すのは緑色の丸い果実。

 出した瞬間に涎の出る甘い香りが広がる。


「食べてみろ」


 2人は怪しんでいたがその香りに負けかぶりつく。


「おいっっっっっしい!!何これ!」


「今まで食べたどんな食べものよりもおいしい」


「シャイマの実だ、もし1日で1冊全て覚えたらまた食べられるぞ?」


「本当!?じゃ頑張る……い、いえ嘘よ!でもこんなもの毎日くれるなんて……」


「これを見てもか?」


 革袋の中の10個以上のシャイマスの実に釘付けになっていた。


 実は1つ30万ルード程だが、他に金の使い道は無いし死んだ後には金は持っていけない。


「1日一冊覚えれば1つ、覚えられなかったら無し、更に2人のうちで覚えた魔術が多い方には更に1つやろう」


 リンとノルの表情が変わる。


「負けない」


「申し訳ないけど勝たせて貰うわ!」


 こう言う所は子供らしく素直で助かるな。


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