第3話 浮気したら死にました

第3話


蒼町side


いつからか、一馬と居るよりもこの男子と居る方が楽しくなってきた。


少しずつ一馬との時間は減っていき、彼との時間は増えていく。


心が離れるってこんな感覚なんだなぁと、我ながら他人事みたいに思った。


そして、何回か会って話している内に、名前を聞いてない事に気が付く。


「そう言えば、貴方の名前は?」

「俺?俺は霜崎しもざき 真司しんじさ。」


真司か、いい名前。


そんな事を思っていると、いきなり彼が近付いてきて…


「ねぇ、蒼町…」

「真司…君?」

「君の彼氏として、一馬って奴は相応しくない!俺を選んでくれ!」


まるで壁ドンをしてるかの様な距離感で彼は迫ってくる。


私はそれが男らしく映った。


男らしくもなく、少しも強引に迫ってくれさえしない一馬よりも…


だから、私はときめいてしまった。


そして…


「蒼町!」

「あっ…」


いきなり、唇を奪われた。


ファーストキスだ、一馬にもあげてない物だ。


でも、拒否感はなかった。


むしろ、少し嬉しい気持ちになった。


それからは早かった。


「蒼町!」

「真司君!」


一馬との時間はほぼ無くなり、彼との逢瀬を重ねた。


まだ、純潔は保っているが、捧げるのはそう遠くない気もする。


今はまだキスだけで満足だし、沢山してくれる分には最高だしね。


しかし…


「お前、浮気してただろ!」


一馬にバレた…


ヤバい、どうしよう?


そう言えば、別れるのを忘れていた。


どうでも良い存在になり過ぎて、ウッカリしちゃったわ。


でも、イラッとするわね…


私がこうなったのは、そもそも一馬が悪いのに…


そう思った私は色々な事を言った気がする。


強い言葉も使ったかもしれない。


すると、一馬は黙り込み…


…何か怖い。


早く帰らないと…


しかし…


「殺せば良いんだ!」

「か、一馬!?」


と、急に一馬が叫ぶ。


ヤバい、逃げないと!


でも、逃げられず…


「やめ…助け……」


一馬は笑いながら、愛しい物を見る様に微笑みながら、私の首を絞める。


どうして…


そう思いながら、私の意識は暗転していった。


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「………………………………………………はっ!?」


いきなり目が覚めると、私は自分のベッドの上に居た。


あれ?夢?


いや、でも…


「えっ…」


私は固まってしまった…


デジタル時計はこう示していた。


[9月10日6時30分20秒]


…それは私が浮気を見られた日の前日だった。

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