第2話 入学式

入学式とあってやはり人が多い。都立空宮小学校の正門は記念写真を撮る人や知り合いと話している人でごった返していた。

ちなみに流は2組だった。幼稚園が一緒だった子が何人かいたがよく遊ぶというほどではない位の距離感の子達のため少し不安も抱えながら入学式が開かれる体育館に向かった。


「ここに来た1344名の新入生の皆さん入学おめでとうございます」


読者は生徒数多くね?と思われたかもしれないがこの世界、教師がかなり狭い門となっている。結果、学校数を大幅に減らして巨大化するという措置が取られた。人の多い東京ならどこもこんなものである。


ありきたりな話を始める司会の声を聞きながら


「退屈だな」


滝が入学式にそっこーで飽きを見せる。


「まあまあ、でも校長はしっかり見ときなさい、エリート中のエリートで学校のトップなんだから」


花も苦笑しながらそれでも少しは気を引き締めろとたしなめる。


「続きまして、校長先生のお言葉です。炎道えんどう校長お願いします」


出てきたのは白い髪と髭を伸ばし、しっかりとした足どりで歩いてくる165センチほどのおじいちゃん。


「皆さん入学おめでとうございます。校長の炎道えんどうかいです。」


一見ただのおじいちゃんだがやはり尋常じゃないオーラがあった。それは退屈そうにしていた滝すら感じて、目を覚ました。


「やっぱ校長ってすげえな…いやでも…ん?」


「おっ気づいた?滝は学校のホームページとか見ないから校長のことも知らないよね~」


「ああ、だけどあの炎道とかいう校長、他のとこの校長と比べても…少なくとも俺が学生の時の校長よりよっぽど強いんじゃ」


「当然じゃん。あの人『剛氷の鬼』って呼ばれてた魔法戦プロの雹霧ひょうぎりつよしとずっとライバルで親友だって人だよ?」


「日本最強のライバルって日本最強じゃん」


「雹霧さんのほうがかなり戦績は良いんだけどね。」


「まああの人は俺らが子供の頃のヒーローだったもんな~。でもあの校長はプロレベルってことか?」


「うーん今はどうかわからないなー。雹霧さんを超える子を育てるために教育者になったって話だし。やっぱ多少は鈍ってると思うけど」


「とりあえずあの人がトップにいる学校なら結構安心できそうだな」


そんな話をしているうちに入学式は無事終わった。

入学式が終わりそのまま家族も一緒に子供たちと共に教室へ、そこへ担任と思われる人が入ってきた。

ショートカットで少し茶色っぽい髪。スタイルがよく滝より少し小さい位である。

しかも見た目若い、新任って言われてもおかしくない。


「皆さん入学おめでとうございます。1-2の担任をします由良ゆら すいです。教師は4年目です。一年間よろしくお願いします。そして早速ですが皆さんには魔法を使う上での必須アイテム、アダプターを配ろうと思います。配られた人から自分の情報を登録してください。それと一緒に魔力量とホルダー数も測定します。魔力量は文字通り魔法を使うために必要な魔力をどれだけ持っているかを示します。ホルダー数はアダプターにどれだけ魔法カードをセットできるか、言い換えれば使える魔法の種類の数を決めます。アダプターにセットしてる魔法しか使えませんから気を付けてください。でもカードの入れ替えは試合中とかじゃなければいつでもできますので安心してください。」


そういって由良先生はアダプターを配ると一緒に魔力量とホルダー数を一人一人測定し記録していく。

ちなみに6歳なら700前後が魔力量としては平均であるが使い続けたり訓練したりで常軌を逸する人は結構いるためあまり参考にならない。

ホルダー数は6歳ならば5~7個とされる。7あれば優秀と言っていい。4個でも別に劣っているほどではない。これは一年に一個増えるかどうかで、ホルダー数を増やす訓練というのは確立されていない。全年齢での世界記録は200年ほど前に記録された28個である。


ちなみに流は魔力量が721、ホルダー数は5個だった。


2組は一人魔力量が800越えの子がいて少し盛り上がった。ホルダー数は全員が平均に収まった。


全員の測定を終え、アダプターを配り終えたところで由良先生が


「続いて、全員にエネルギーボールとシールドのカードを配ります。」


これもアダプターと同様、全国共通で配られる。


・エネルギーボール

消費魔力5 無属性 Gランク

攻撃性能のある弾を発射する


・シールド

消費魔力10 無属性 Gランク

防御性能のある障壁を張る


「今配ったカードには消費魔力、属性、カードのランク、効果が書いてあります。

カードのランクとはS、A、B、Cと続きGランクが最低です。一応Sより上のプレミアランクというものがありますがもれなく国宝ですので気にしなくていいです。あっでもアダプターはプレミアの魔道具ですよ。超多機能ですが世界中に普及している唯一のプレミアです。まあそこは置いといて、試しにカードをセットして皆さんシールドを使ってみましょう。イメージするだけでできますよ。形も好きにしてください。丸でも四角でも大丈夫です。エネルギーボールはダメですよ。使ったら筆箱が吹き飛ぶと思ってください。」


クラスのみんなが少し由良先生におびえながらシールドを発動する。Gランクは発動も簡単なためみんな初めてでも簡単に発動できた。


「では試しにシールドを叩いてみてください」


みんながコンコン、ガンガンと叩く。


「恐らく壊れないと思います。本気で殴っても壊れませんよ。基本的に魔法は魔法でしか壊せません。まあ魔法の使い手のレベルにもよりますが。ちなみに私はミサイルくらいならいくらでも防げますよ。これが自然における…」


パリンッ





するはずのないその音に反応して由良先生は話を止めた。最初は窓が割れたかと思い、窓側を見たが明らかに違う方向だと気づいた。音源を探り、席と名簿を確認する。このあたりの対応の速さは教師になれるだけあって一流である。







名簿にあった名前は 「衣手 流」











ありえないことに流の前に張られているシールドには、ひびが入っていた。

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