魔法スポーツ、青春と戦争 ~「纏う」が使えるだけで事件おきすぎじゃね?~

グレイジー

小学1年生 

第1話 衣手家

21××年

「はっはっほっほっはっはっほっほ」


ガサッ ゴソッ 

衣手ころもで りゅうは黒髪は目にかからないくらいでくりっとした黒目の6歳である。どこにでもいるような平均的な子供、他と違うのは多少日焼けしているくらいか。

流は『森』の中を走っている。走らされている。


「頑張れ~置いてくぞ~」


のんきに流の前を走る父の、衣手ころもで たきにである。

短髪で多少目元に皴があるもののまだまだ若々しく見える。体はごつくなく、背も170程だがスポーツマンらしく引き締まっている。そこそこイケメンだが多少、結構、そこそこ、残念な一面もある人である。


今のところ父親が息子と追いかけっこしているほのぼのした光景にしか思えないかもしれないが、『森』の中である。公園で遊ぶのとはわけが違う。走りにくいし、障害物まみれだし、ちょっと距離感見誤ったらすぐ転びそうになる。


滝は学生の頃オリエンテーリングという、森や公園に設置されたポイントを順番通りに通過し、ゴールのタイムを競う競技のサークルに入っていた。

まだ趣味で続けていて、流はよく巻き込まれる。それが今だ。


りゅう~この丸太気をつけろよーこけないようになー」


父が流の様子を伺いながら声をかける。



後ろ走りしながら…









そんな技術オリエンテーリングにはない。


「はあ、はあ、疲れた…」


「おっポイント見えてきたぞ~」


そこそこ先を行く父が希望のあることを言う。


「あそこ行ってゴール行って終わりだな!」


希望……?


「休みたい…」


「もう小学生になるんだからノンストップでの初完走と行こうぜー」


こりゃだめだと何も言わず足を前に進める。

が、足が何かに引っかかった。


「やばっ」


前を行く父に気を取られすぎた、てか丸太ってこれか!

注意されてたのに…


そのまま倒れる…










はずが急に周りの木の枝が伸び流の体を支えた。


「危なかったな~!」


「ありがとう」


「う~んこりゃやっぱ休憩とるか、ノンストップチャレンジはまた今度だな」


伸びた枝が椅子となって流たちは休むことになった。





魔法、もう200年くらい前に技術として確立されたもので、今の生活には欠かせないものとなっている。火、水、土、雷、風、木、光、闇、無が基本属性と言われているがあまり世間ではあまり気にされていない。なぜなら氷やら鋼やら紙やら爆発やらみたいな魔法がいくつもあるからだ。氷は水の応用などと一応分類されているがもう面倒にすら思われている。


魔法を使うのは簡単で魔法カードという使える魔法が書かれたカード、人の魔力とカードを結びつけるアダプターを使うことで発動できる。

しかし日本では小学生に上がるまで使用が禁止されている。今は小学校上がる前の春休みなので流はまだ使えないのである。

ちなみにこの『森』も実は滝が木の魔法で作ったものである。滝は名前と反して木の魔法が得意でここまで大規模なのはまあまあすごい。そして木の魔法以外は苦手である。


「なんで普通の公園に行かないの…」


流が愚痴る。

それに対して滝は


「子供は風の子じゃなくて自然の子だと思ってるからな」


理屈は謎だが滝なりに息子のことを思って言っている。

実際、先程も流の転倒を防いでいる。


「じゃあまあ帰るか、明日入学式だろ?」


「うん」


結局ゴールはならなかったが流が限界なので二人は帰宅することにした。




「「ただいまー!!」」


「おかえり!」


帰宅した俺たちを母である衣手ころもで はなが迎えた。黒髪のセミロングに奇麗な二重のクリっとした目が特徴的な少し小柄な女性。ちなみに流の目は母の遺伝である。


「ご飯できてるからちゃっちゃとお風呂入っちゃいな」


そう言って花はさらっと浴槽に向けて火と水の魔法を使い一瞬で風呂を沸かした。


花はかなり器用で家事は基本全部できる。そして料理は特に美味い。滝もサークルの合宿で花の作ったカレーに胃袋をつかまれて結婚にまで至った人である。


「服も置いとくよ」



「ありがと花」


流と滝が風呂から出たタイミングで料理がしっかり机にならんでいた。


「カレーだ!!」


子供の流より先に反応する滝。流も嬉しそうにしている。


カレーを食べながら滝が話を振る


「明日から流も小学生か~。どんなクラスになるかな」


花も


「幼稚園の子が一人はいて欲しいわねー」


人間関係に不安を見せる親に対し流は


「魔法早く使ってみたいなー。竜化とか!」


小学生となることで解禁となる魔法に思いを馳せていた。


「竜化なんて高いカード無理よ」


「男のロマンだよな!!買っちゃうか?!」


花と滝がそれぞれのリアクションをとる。そして


「あなた…?ふふふ…」


「…………………………まあ竜化レベルは無理だが好きなカード買ってやるからな」


花の冷たい殺気を感じた滝が慌てたように前言を撤回する。

どこの家も女性は強いものである。それは衣手家も例外ではなかった。

そもそも家計の管理は当然のように花がやっているため滝も流もあまりここに関しては権限がない。このマイホームを買うにあたって滝も家計簿を覗いた際、当然のごとく滝のヘソクリがしっかり記載されていたのを見た時の滝の表情は花が何度見ても笑えると言ってしっかりアルバムに保存されている。なんなら花のスマホケースに家族の集合写真と一緒に入っている。

ちなみにヘソクリはしっかりマイホーム代へと使われていった。


そんなやり取りをしつつカレーを食べ、歯磨きをし、明日の準備を整えた流は明日の入学式に思いを馳せつつ眠りについた。



――あとがき――

初ての作品です。至らぬところはあると思いますが読んでいただけたら幸いです。

フォローとか応援とかしてくれたら嬉しいな~。

週1では絶対更新しようと思ってます。(ムリだったらごめん)

暇があれば更新ペースが上がります。

5話くらいまで読んでくだされ。できればずっと読んでくだされ。

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