第41話 セレベス王との謁見

港では、セレベス王の盛大な出迎えが待っていた。怪我をした月涼の為に医師も用意されており下船後すぐに治療できるようにと体制も整っていた。


「陛下自らのお出迎え…。恐縮でございます。」


月涼が恭しく頭を下げ、ラダルに挨拶をする。


「いや…。こちらの方がな…。怪我の具合は?」

「はい。かなり、良くなっています。御心配には及びません。医師まで呼んでいただきありがとうございます。」

「うむ。顔色も良いようだな。ならば、王宮で準備した部屋でゆっくりと休むとよい。リュート…。お前とは、少し、話がしたい。王宮に到着し次第、執務室へ来るようにな。」

「はい。陛下。では、妻を部屋に案内した後向かいます。」


ラダルは、挨拶が終わるとこれまでの事を治めなくては、いけないと言う思いから顔つきがガラリと変わるのだった。

そんなラダルとは違い月涼たちは、港から街を通り抜け人々の歓声に手を振りながら、王城に入城するのだった。


「ねえ。リュート。ラダル王は、たぶん今回の件を早急に収めようと躍起のはず…。でも。こちらから動くより泳がせて、あぶりだす方が早いと言った方が良いんじゃないかな?セデス様たちの居場所も確定していないでしょ。」

「そうだな…。だが、とりあえず陛下の考えを聞いて尊重しないと。」


その頃、セデスたちは、リンゴ島ではなく月涼が、印をつけていたあの小さな島に身を隠しているのだった。その島は、無人島ではあるが王族の休息用の小さな屋敷が設けられていたのだ。この屋敷は、王自身が一人で休息をとりたいと身を隠すときに用意された屋敷で、王族以外が知る由もなかった。そのことにラダルが気づくのは、もう少し後のことである。


「陛下。リュート殿下が参られました。」

「うむ。通してくれ。それと、青華国の他の者も呼んできてくれ。」

「はい。承知しました。」


ラダルの前に、月涼以外の者が勢ぞろいしこれからの事を話し始めた。


「まず。セデス様たちを探すことが先では?」

「いや…。それより、月涼がいない方が問題だ。」


この言葉に、ラダルが誰の事だと?かみついた。


「その月涼とは、誰だ!!この話になぜ、訳の分からん名前が出るのだ?」

「おじい様…。いえ。陛下。月涼とは我が妻の別称でございます。」

「なぜ。そのような名がついている。」


リュートは、仕方なく、簡単にかいつまんで月涼ことリァンリーについて話す羽目になるのだった。


「ふむ。それでは、怪我人に仕事をさせるのは、心苦しいが呼んできなさい。」


ほどなくして、月涼が執務室に地図をもって現れた。まず、呼ばれるだろうと察していたからだ。


「陛下。お呼びと伺いました。」

「ああ。そなたがこれまでの参謀の様に皆が言うのでな。」


ふっと笑って、その席に着いた月涼は、本領発揮とばかりに地図を広げた。


「陛下。この島への経路を示してください。」

「ここは…。」

「はい。この島です。私は、ここにセデス様夫妻がいらっしゃるかと推測しています。」

「その島は、確か、お前が…。」


仁軌が顔を曇らせる。


「ええ。雲隠れするのに最適な場所と伝えたところですよ。」

「ああ。船の中の航海図でな。」

「ここは、王族の避暑地か何かでは?そんな風にとらえましたが…?」


ラダルは、月涼の顔を見ながら、その目を見張る先見に驚きながら問う。


「なぜ?そう思うのだ。」

「航海図。そして、地図からなる王宮の位置と島々の間隔からして、窮状があれば戻れる場所であり、何もなければ、最も平穏に静かに過ごせる場所と推測しました。なれば、王族の安息の場になり得ましょう?」


ラダルは、その月涼の考えに驚きそして、皆がなぜ、月涼がいなければならないと言うのかが分かるのだった。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る