第40話 セレベスの港に
月涼の傷も治り、改めて、セレベスへ渡る準備を始めた一行は、ルーランの姿が見えないことに気づいた。
「ルーランは?どこに行ったのかしら?」
月涼が側にいたリュートに聞くとリュートは、首を横に振り月涼に伝えた。
「昨日から姿が見当たらない。」
「そう。考えたくなかったけど・・・藍が悲しむね。」
「ああ。だが一体いつから?」
「今、ペンドラムに調べてもらってるの。報告がもうすぐ来ると思うんだけど…。」
「えっ?じゃあ。ここに来る前から?調べてたのかい?」
「うん。正確には、ここに来ると決まってからかな。藍と一緒になるんだったら身元を調べておきたかったの。それが、不審な点が多く見えてきたから…。」
「そう言う事か。」
そこへ仁軌が入ってきて話に加わった。
「使用人として生きてきた割には、語学が堪能だと思っていたんだ。ルーランは、5か国語以上話せる上に読み書きもできる。北光、西蘭、海南、青華・・・そして、リーベンデールだ。貴族でもない子でこれほどの語学を持つのはどうかとな。」
「そう。私もそこが気になっていたの。最初は、すごいとしか思っていなかったけど、藍と付き合い始めたと聞いて、考え始めたの。何かあるかも知れないって。藍は、私を追いかけて、船でルーランと出会って、仲良くなったからかなり信用してる…。だから、内緒でね。だけど、あの子は、勘が良い、多分自分が利用されてたことに気づいているかも知れない。そこは、会って話してみようと思う。」
そんな話をしながら出立の準備は、着々と進みルーランを乗せないまま船は、出航することになった。錨が上がり船は、セレベス艦隊ともに航路を進み二日ほどで、セレベスの首都港に予定だ。
パタパタとアウルムが飛び回り、猫の姿のチビがそれを追いかけまわすのが当たり前になって来た頃、船の甲板から港が見えたと知らせが来た。月涼は、こっくりこっくりとうたた寝の状態でその知らせを聞いた。
「はっ今の寝落ちしそうだった。」
「リア。船に慣れすぎだ。ははは。」
リュートに笑われながら、すくっと立って、甲板に一緒に向かうことにした月涼をアウルムとチビがついてくる。
「うわ~。綺麗な港だね。青華とはまた違った景色で美しいね。リュート。」
「ああ。そうだな。」
「月涼!!ちょっと先に港を見て来る。」
アウルムがそう言って飛んでいこうとするので、チビに言って止めてもらう。チビは、豹の姿になって、パクリと口に咥えてアウルムを捕まえた。
「あほか?お前は、矢で居られでもしたらどうする?その大きさなら大怪我だぞ!!」
「そうだよ。アウルム。!!っったく。」
「なんだと~。僕が矢で居られるわけない!!小さくても龍だ!!離せ、チビ!!」
「とにかく。龍は珍しいし。捕まえられるサイズならなおさら、捕獲しようとする馬鹿な人たちもいるってことだよ。わかった?」
ぐっと息を飲んでアウルムは、少し反省しながら黙り込んだ。
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