第37話 動き出す間者

チビの解毒がうまく行き月涼の熱が下がり始めた。意識もかなりはっきりとしてきた中、チビは、嗣子が外に出れる手伝いもしてやると言って、月涼の熱が下がり次第、イヤシロチへ連れてくるようにリュートに指示を出していた。


「明日には、チビの元へ行けそうだと思う。どうかな?」

「そうだな。だが、まだ、君に矢を打ったものが見つかっていない。いつまでもこの島に滞在するわけにもいかないし・・・。」

「今、捕まえた者たちはどうしているの?」

「クルトラ将軍に預けている。」

「仁軌さん。間者について何か分かりましたか?」

「んん・・・まあ。なんとなくだが。あまり・・・。」

「言いにくい人の様ですね。」

「ああ。まあな。」

「とりあえず・・・間者の件は棚上げします。というより泳がせましょう。」

「で?この後どうする?」

「一網打尽で捕まえたかったのですが、トカゲのしっぽをでは意味がありません。取り合えず。助かったことを大体的に知らせて、歩みを進めましょうか?」

「ああ。殿下もそれで良いか?」

「それんだが・・・。先ほど、祝う相手が失踪している連絡が来たんだ。」


月涼は、少し考えた後、やはり、目的地であるセレベスへ行こうと提案した。リュートとしては、月涼の体が気になり、引き返えしてはどうかと言うのだったが、彼らがリュートの命を狙っているなら、戻ってくるはずだと考えたからだ。それに、これは、セデスを捕まえない限り、終わらないということもこの襲撃で明らかで、先延ばしにしても意味がないと月涼は言うのだった。


「月涼の言うことも一理ある。殿下?どうだろう。虎穴に入らずんば虎子を得ずだ・・・。どこに潜んでいるか分からないならこちらから行くしかないだろう。」

「それは、そうですが。リアの体は・・・。」

「ねえ、リュート・・・。リーベンデール国も絡んでいるし現地で藍が調査していることも知りたい。セレベスへ行きましょう。」


リュートは、月涼の額飾りに唇を落として言った。


「分かった。今度は無理をしないと約束してくれ。それなら、行こう。」


月涼は、コクリと頷き。3人は、イヤシロチのチビの元へと向かおうとした時だった。扉が勢いよく開いて、ルーランが飛び込んできた。


「リァンリー様!!意識が戻ったと伺いました。どれほど心配したことか!!」


泣きじゃくりながら月涼に飛びつくルーランだった。


「ごめんごめん。もう大丈夫よ。ルーラン。それより、どうして?ここが分かったの?緘口令が敷かれてたはずだけど。」


心配そうな表情のままルーランは、すぐにクルトラ将軍に食い下がったのだというのだった。


「それより、回復したばかりのお体でどちらへ行かれるのですか?私もご一緒させてください。」

「ダメよ。ルーラン。連れていけないわ。私ならもう大丈夫だから・・・ここで、美味しいものを用意して待っていてちょうだい。」


不服そうなるルーランを残して、3人は、部屋を後にした。


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