第34話 イヤシロチ 2
意識の奥でなされている会話を知るはずがなかったリュートたちだったが、仁軌の提案で、地図にあった一番近い場所のイヤシロチをまず自ら調べに行くことにした。チビは、豹の姿に戻って、リュートたちより先にその場所へ駆けて行くのだった。
「水晶宮ほどの力は無さそうだな・・・。何か他に・・・。ん?」
そんな独り言を言いながらチビは、イヤシロチを見て回っているとリュートと仁軌がその場に到着した。チビは、何かを見つけたらしく頻りに掘る仕草をした。
「これは?リア?」
「ああ・・・月涼だな。」
そこには、龍の胸で眠る月涼の姿が投影されていた。
「なぜ?ここにリアと龍が・・・。」
「実際の姿じゃない。ここにいる訳でもない。とにかく本人の肉体を連れてきた方がよさそうだな。襲撃犯の残党がいないか確かめるのと用心のためにクルトラ将軍から兵を借りて、この周りを固めてもらって連れてくる方が良いだろう。」
その時、チビが二人を制止して、人型を取った。
「待て・・・二人とも。ここから呼びかけてみる。」
「連れてこなくても良いのか?チビ・・・。」
「分からないが、やって見る価値がある。」
そういうとチビは、また、豹の姿に戻りその場に青華蝶を呼び込んだ。青華蝶は、月涼たちが映し出された水晶の中に吸い込まれるキラキラと輝きながらように入っていく。
「おい。聞こえるか?月涼・・・。意識の奥に届いたか?」
すると先ほどまで、眠っていた月涼が動き始めた。
「チビ・・・。聞こえる。聞こえるよ!!」
「見えるか?」
「うううん・・・。」
水晶の中の月涼が首を振り見えないことを伝える。
「でも、声は、はっきりしてるよ。どうやったの?」
「イヤシロチに入った。そこにお前が映し出されてる。」
「そっか。でも、良かった。意思の疎通が出来るのは助かる。リュートは?」
「隣にいる。声が聞こえるかやって見よう。」
チビは、リュートを促し話しかけるように言った。
「リア?聞こえてる?」
「うん!!ごめんね心配かけて。リュートはケガしてない?」
「ああ。大丈夫だ。」
リュートは、久しぶりの月涼の声に涙を流しながら喜んだ。仁軌もまた、声をかけ今後の事について話しかけた。
「月涼。お前の肉体は、高熱で動かせない。とりあえず、殿下とお前の二人が重傷として噂を流している。両国にも伝えた。この島で決着つけようと思っての策だとは思うが・・・この後どうするつもりだ。」
「ええ。ありがとうございます。まず、リュートの命をこれ以上危険にさらせないと思い噂をお願いしました。敵は、死亡確認に来るかと思うのでその時がチャンスかと思います。あと・・・。襲撃がピンポイント過ぎました。間者が紛れています。かなり近くに。その者によっては、こちらの動きがすでにばれているはず・・・。」
「ああ。そう思って、リュート殿下は変装してもらっている。それと、影を使って、治療をしているように見せかけている。これを知っているのは、ここにいるチビと殿下自身と医師だ。」
「医師は?大丈夫ですか?」
「医師には、監視をつけているし、もし、話したらどうなるかは、伝えている。申し訳ないがな・・・。」
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