第30話 襲撃

セレベス王国での出来事を知らぬ月涼たちは、リンゴ島のを出航しよう乗船を始める準備をしていた。


「仁軌さん、あの丘?のようなところから煙が上がっていると思いませんか?」

「どこだ?月涼?」

「あそこです。ほら・・・?もしかして・・・。」

「なんだ・・・何がもしかしてだ・・・。」

「何かの合図とかじゃ・・・。」


その時だった。月涼たちの乗り込む船に向かってどこからともなく無数の火矢が飛んできた。


「どこから飛んできている?」

「探せ!!」


仁軌とリュートが叫びあたりを見回すとどこからともなく現れた船からだった。

クルトラ将軍の艦隊が急ぎ応戦したが、大きな艦隊すぎて、小回りの利く小さな船からの火矢は、止められても生け捕りするのに時間を要した。


そのすきを狙って、リュートと月涼は、丘から現れたと思われる傭兵たちに切りかかられた。剣術のたつ二人は、応戦して事なきを得たようだったが、一本の矢がリュートを狙って飛んできた。すかさず、月涼が動きリュートは、無事だったが、月涼の胸に突き刺さった。


「リュート・・・・・・。」

「リアー----!!」


仁軌が傭兵たちを蹴散らし、リュートは、月涼を抱いて建物に退避した。


「医者だ!!医者を呼べ!!リア!リア!聞こえるか?」

「リュート・・・聞こえてる。大丈夫。とにかく矢を抜きたい・・・はあはあはあ・・・。この事は・・・私だけではなくあなたの命が危ないことに・・・はあはあしなく・・・ちゃ・・・いけない・・・。皆の口裏を合わせて・・・。」


月涼の息がどんどん上がっていき、うめき声に近い声に変る。その様を見守るしかなリュートは、怒りがこみ上げるのを必死で抑えていた。



「今は、そんなことを考えるな!!治療が先だリア・・・。頼む・・・。」

「いい・・・え・・・。違う。私なら・・・だ、大丈夫だ・・から。お願い・・・きい・・・て。」

「ああ。分かった分かったから・・・。」


バン!!と扉が開き仁軌が医者を抱えて現れた。


「殿下!!月涼は?」

「矢を抜かなくては!!私を狙っていた矢だ・・・。毒が塗ってあるかもしれない!!早くしてくれ!!」


医者が駆け寄り、矢の状態を確認して鞄から処置具を出して叫んだ。


「大量のお湯と布を!!殿下、今から処置します。まずは、寝台ではなくそちらの机に妃殿下を上げましょう。それと灯火草でこの部屋をもっと明るくしてください。」

「分かった。仁軌殿、外の者たちに今の事を伝えてくれ。それと戦況は?」

「殿下たちを襲った傭兵は、全て、捕まえた。火矢を放った小舟の者たちも連行されて此方に来るはずだ・・・ちっこんな一瞬の出来事で・・・。」

「今は、後悔している暇がない。リアを助けなくては、頼んだぞ!!それから、命が危ないのは、私も含めると噂を流してくれ・・・。」

「殿下・・・一体なぜ・・・。」

「リア・・・リアの頼みだ。」

「月涼がそうしろと・・・?」

「ああ。」


仁軌もリュートも拳を握りしめ、苛立ちながら今できる行動に最善を尽くして動いた。そして、この一報は、セレベス王国にも青華国にも知らされることとなった。








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