第27話 セレベス王ラダル
クルトラ将軍もあっという間もなく月涼に床に転倒させられ、月涼は満面の笑みでクルトラ将軍に手を差し伸べた。
「あいたたた。しかしすごい技ですな。」
「相手の力がつよければ強いほど、その作用は、比例しますからね。クルトラ将軍の力の強さの証明でもありますよ。」
「ほ~そうなのですな。いやはや・・・なんとも頼もしいことですな。リュート殿下。」
「そうなんです・・・それはそれで、玉に瑕ですよ。リアは、どこにでも突っ走りますからね・・・。」
リュートは、クルトラ将軍に受け答えながら、月涼を横目に話すので、月涼は、目を合わさないように仁軌に助け舟を求めた。その表情を見た仁軌が、仕方なく助け舟を出した。
「それはそうと、クルトラ将軍は、ソニア王后の側近だったとか?」
「ええ。まあ。姫もこちらの妃殿下に負けず劣らず・・・クックッ・・・あ~すみません。ついついあの頃を。それはそうと、貴方は?」
「失礼いたしました。この旅では、妃殿下の側近としておりますが、普段は、北光国外交と大使をしておりまして、今回のセレベスへは、外交遊歴も兼ねて参りました。仁軌と申します。」
クルトラ将軍は、コクコクと頷いた後、ふっと思い出したように答えた。
「おお~あの!!姫から伺っております。なかなか骨のある将軍がいると・・・あのお方が今ここに。」
仁軌は、いったいどんな報告が・・・と思いつつも豪快に笑い飛ばして、いえいえと手を振って誤魔化しながら、旅の工程について今度は、リュートに尋ねた。
「殿下、この港での滞在時間は?どうなっていますか?将軍は、こちらの船に乗り込まれてご一緒に?」
「いや、将軍は、わが船を援護しながら、セレベスまで送ってくれるそうだ。挨拶に来てくれているだけだ。この港では、1泊停泊することになった。今晩は、天候が荒れるそうだから安全をとって、船から降りることになった。さあ、手荷物を纏めて下船するとしよう。」
その晩、情報通りの大荒れの天候となり、さすが、セレベス海軍という話でもちきりだった。島国特有の天候の読み方などもあるらしくその、読み方は、海軍の上層部しか知らないらしい。もっとも、ソニアは、海軍を率いていたのでリュートには、伝授していたようだが、今回の旅の為、月涼にも伝授していた。その為、今晩の荒れは、月涼も大方の予想はついていたが、荒れる基準をまざまざと見せられ下船してて良かったと思っていたところだった。
退避して沖合で錨を下した船は、無事に朝を迎えられたが港で退避し損ねた小舟は、打ち上げられていた光景は、なんとも言えないものだった。
「リュート・・・。小舟の主たちは、生活に困りそうですね。」
「ああ。だが、自業自得とも言える。海で仕事をするものだ・・情報は回っていたはず・・・。」
「そうですね。ですが・・・。」
「ですが、何らかの施し・・・か?」
「ええ。」
にっこり笑って、リュートを見つめ返す月涼に負け、リュートは、クルトラ将軍に難破した船主に施しを出すと話してから、一行は、その島を出航したのだった。一方、藍とも別行動し、月涼たちの船から乗り換えていた仲達は、先にセレベス王に拝謁していたころだった。
「駐青華国大使西蘭国使者、仲達と申します。以後、お見知りおきを・・・。セレベス国王ラダル陛下。」
「頭を上げよ。仲達殿。ソニアからの使者は、客人も同じだ。今宵の宴を用意しておるゆえ、杯を酌み交わそうではないか。」
「ご配慮ありがたく存じます・・・。。」
そう言った後、仲達は、あたりをすっと見まわしてから、ラダルをもう一度見直すとそれを察したラダルが人払いをし、奥の間へと案内するように側近のフリンに耳打ちした。
謁見の間から移動した仲達は、早速ソニアから直々に渡すように預かった書面をラダルに渡し、その反応を見据えていた。ラダルは、何度も、その書面を見返し、いぶかしげな顔をしながら、ため息をついた。
「これが本当なら、わが国で謀反もあり得るという事か??」
とふっと呟いてから、仲達の顔を見直して聞き返した。
「今は、なんとも言えません。リーベンデールの出方とセデス様の動向を、我々は、はっきりと目にしたわけではありませぬゆえ・・・・。憶測の域でもある事実も然りでございます。ソニア王后は、どんな些細な綻びも落としてはならぬとと・・・それは例え、子息であろうとと仰っておられ、陛下の身の安全とセレベスの民を危険には晒せないとのことでございます。」
「あい。分かった。この件は、内密に動く。影たちを久々に動かして動向を見よう。で、ここに書かれているリュートの妃は、いったい何者なのだ?」
仲達は、このラダルの質問にどう答えようか少し、思案した後こう答えた。
「実際の人物を見た方が・・・・早いかと思われます陛下。」
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