第21話 リュートの刻印と龍剣
突然の事だった。リュートの周りをふわふわと蝶が集まり始めると全身を取り囲み見知らぬ少女が現れた。
「何者だ!!」
少女は無言で一瞬のうちにリュートの目の前に近づくと額に指先をこつんと当てた。
「刻印じゃ・・・。行くぞ。」
「答えよ!!お前は一体!!何者だ。」
「ふっ威勢が良いの。来れば分かる。」
そう言うと少女が消えリュートは、瞬時に場を移動させれたと気づいた。
「母上!!いったい・・・ここは?」
「水晶宮じゃ。其方は、初めてだし、分からなくて当たり前じゃな。」
リュートは、皇后の部屋から水晶宮に繋がる話は、聞かされていたが、定められた者しか入らない水晶宮は、寝物語のような世界で、そこが本当に存在するのかすら怪しいとさえ思っていたからだ。今、その場所に、自分自身が呼び出され立っているとは、信じがたい状態だ。そして、目の前に、先ほどの少女と龍、そして、妻もいる。その光景に目を丸くして驚くのは言うまでもない。
「リュート。」
「リア・・・。何か有ったのか?どうして、そんなに不安そうな顔をしているのだ?昨日の出来事と関係あるのか?」
「金粉が降ったこと?」
「そうだ。法具が発動して保護されたから、あの時、君に危害を加えそうなものがいたという事なんだろう?君は、まだ、使い慣れていないからだと言ったが・・・。」
「多分、すべての事が・・・関係してくるのかも知れない・・・。これから、事情を話すから聞いて・・・。そして、怒らないでほしい・・・。」
月涼は、これまで、ここで起こったこと、そして、嗣子との契約を包み隠さず話した。リュートは、嗣子との契約に関しては、月涼の命がかかっていた為、仕方ないにしても、納得したい気持ちとしたくない気持ちがで混乱し怒りをぶつけてしまいそうだった。
「リア・・・。どうして、その事を直ぐに言ってくれないんだ!!」
「ごめんなさい・・・。あなたを悲しませたくなくて・・・。でも、あなたと生きたかったから。あなたとの子供も見たかったから。女性として生きれる自分を見つけれたから・・・。」
リュートは、はらはらと涙をこぼし真っ直ぐ自分を見つめる月涼を抱きしめて、額にキスを落としてから謝った。
「すまない。君の方が辛いのに・・・。私は、何をすれば良い?その為に、呼び出されたんだろう?」
「許してくれるの?」
「ああ。当たり前だ。君は、私の大事なたった一人の妻だからね。リア。」
月涼は、コクリと頷き、これからすべきことの為に、リュートのこれまでの動きや情報を欲しいと伝えた。
「リュート、セデス様のところに間者は潜入させてる?」
「ああ。例え、兄とは言え、母と仲違えして国を出たからな・・・どう出るか分からないと思っていた。兄が彼女を連れて来た時から、少し、彼女に違和感を覚えていたしね。私だけが感じていると思っていたから・・・事を荒げたく無く黙っていたが。」
「そうじゃったのか・・・。私は、トルテアが祖国の者と気を許しすぎたのじゃな・・・。」
「ふむ。其方の子は優秀じゃな。方術を扱う力もかなり、有りそうじゃ・・・。刻印で、更に力が開放されて、感も鋭くなろう。力としては、先祖返りをした者のようじゃな。リュートよ、試しに・・・其方にこれを授けよう。」
シンは、そう言うと、アーロンの周りに落ちていたアーロンの涙を集めて、呪文も唱えるとアーロンの涙が一つの大きな球体に変化した。そして、アーロンのうろこを一枚とりその球体に埋め込むと球体は、剣に変化した。
「これは、龍剣だ。邪悪なるものが近づくと反応する。手に取って見よ。其方が先祖返りしているものなら、その剣は、手になじみ光り輝くはず。双頭竜王族の真の後継者としてな。」
リュートは、ゴクリと唾を飲み込み、『認められるのだろうか?』そんな一縷の不安を残しながらその剣を受け取った。
剣は、一旦、リュートの手に収まった後、天を衝いて舞い上がった。
「ダメだったのか?」
「いや・・・。待て、剣から目を離すな。」
天でクルクルと回った剣は、光を帯びて周りの水晶から力を吸い上げていくとぴたりと止まってストンとリュートの目の前に落ちてきて今度は、地を突いた。
「さあ、その剣を抜け。抜ければ其方がその剣の主として認められた証拠だ。」
リュートは、もう一度、剣の鞘を握りしめた。ふーっと一度、深呼吸してから剣を引き抜く。剣はするりと地から抜けてその手になじむ。
「どうやら、剣は認めたようだな。それで、リアと金龍を守ってくれ。そして、この国をここが無くとも守れる真の王となれ。いづれ・・・。」
「いづれ?何ですか?太后様」
ソニアが慌てて、介入し口をはさんだ。
「今思えたことを話してください!!今は、その重要な事を話す場ではありませぬか!!」
「・・・うむ。そうだな。」
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