第19話 金瞳の少年の策略 2
アーロンは、嗣子から渡された球体に核を入れたものを大事そうに抱えて、泣き続けている。その球体をよこせと
『我でもできぬものを何故?お前ができる思うのだ?』とも言い始めた。
「アーロン・・・。それは、失礼じゃないのか?お前の為に動こうとしているのに。」
「お前が誰かのために動く事の方が信じられぬわ・・・。」
「フーーー。」
「大司祭、ここに居たのか・・・。」
「はい。王后陛下。」
二人は、向き合って頷くと、つかつかとアーロンに向かって、近づいて掌からそれぞれの法具を宙に出した。すると、共鳴したもう一つの法具が現れる。シンの法具、五鈷だ。
ソニアの三鈷、シンの五鈷、月涼の独鈷がグワングワンと共鳴し続けた後、クルクルと宙で重なって回転を始めた。
「太后様から法具の事で聞いたことがあった。法具は、剣にも盾にもなる。そして、鍵にもなると・・・。鍵の意味が分からぬままこれまで来たが、今なら、なんとなくわかる気がした。アーロン球体を渡せ。
ソニアが
法具は、更に、回転を速め金粉が球体へと降り注ぐと球体に変化が現れた。ゆらゆらと煌き始めてその光が逆に法具まで包み込み始める。完全に全てを包み込んだ光は、大きな球体となってからパアアアアンと弾けた。そして、それぞれの法具がそれぞれの元へ戻る。
「ソニア・・・よく、気づいたわね。ありがとう・・・そして、すまない。」
シンが現れ、ソニアに言葉をかけた。アーロンはわなわなと震えながらその状況に涙し喜び、駆け寄ろうとしたが、シンによって止められた。
「太后、すべてお話しくださいますか?」
「ああ。そこからだな。すべて、話そう。そして、これからのことを考えねばならぬな。」
シンは、まず、セデスのことから話すことにした。シンがセデスの妻トルテアが王后になれないと言った理由が一つのことではないという理由だ。
「トルテアは、其方の大事な息子を滅ぼすだろう。水晶宮に選ばれぬだけなら、神殿で方術を体得し、少しづつでもならせば何とかなったかもしれぬ・・・だがな、あの者は、セデスの力を吸いとり操る力を持っていたのだ・・・。」
ソニアは、少し考え込んでからシンに向かって、そんな娘ではないと言うがシンは、首を振って否定した。
「其方の故国の出自だからな・・・信じたいのも分かるが、あれは異形のものだ。本人すら知りえていないかも知れない。もしくは、誰かに操られている可能性もある。」
月涼がそのシンの答えを待っていたかのように答えた。
「もしかして・・・リーベンデールの使者!!」
「そうだ。セデスが婚約したときは、分からなかった。ただ、そんな力を持つものだろうとしか。だが、此度の件ではっきりした・・・トルテアは、あ奴の駒だ。」
「ですが、あの者は、まだ、15.6歳ほどの少年ではないですか?例え、力のある聖座でも・・・そのような者に出来るのですか?」
「そこだ・・・。我もずっと引っかかているのは・・・。だが、間違いなくトルテアは、あちら側の人間だ。こちらにいた時の衰弱は、我の浄化の力で自分の力を出せなかったのだ。セデスには、方術で防護を施している故・・・命までは奪われぬようにしてあるが・・・用が無くなればどうなるか?」
その会話にソニアの顔がどんどん青ざめて、手が震え始めた。セデスに嫡男が誕生の連絡が来ていたからだ。もし、その子が必要で近づいたのなら、セデスは、用無しだ。
「太后様!!セデスに嫡男誕生の連絡があり、祝いを持たせてリュートとリアを向かわせることになっております!!」
「ふむ。これで、何か狙いがあるのは、間違いないであろうな・・・。自分から手を下さずに何を仕掛けようとしているのか?嗣子を狙っても、他国の龍にしかすぎぬ。わざわざ、嗣子を連れ帰るつもりなのか?」
ここで、月涼が割って入って、嗣子から聞いたことをシンに告げた。
「シン様、嗣子は、シン様と共に聖地を守るつもりだった龍です。今回、金龍になるべく力を蓄え、満を持して転生に臨みました。今、私の中にいて、生まれる機会を待っています。金龍ということは、地に縛られない龍です。リーベンデールのウロボロスを滅ぼせます。」
「そうか・・・。そういうことか・・・。だが、なぜ、あ奴が転生するタイミングが分かったのだろうか?」
シンの言葉を聞いて突然、さっきまで黙って聞いていたアーロンが初めて、口を開いてウロボロスについて語り始めた。何かを思い出すよに・・・。
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