第3話 千代子、スマホで検索する

「食事制限も駄目、サプリも効かない! 何なんだこの身体は! バグか!?」


 こうなりゃ最後の手段、運動しかない。これだけはしたくなかったが、もう背に腹は代えられないのである。むしろ比較的肉の少ない背中と腹を交換してもらえるなら手っ取り早くて助かるのだが、そうなると今度はもりもりに肉のついた背中(元腹)をどうにかしなくてはならない。結局は同じことである。


 ダイエットからは逃れられないのだ。

 ならば迎え撃つしかないのである。


 よし!

 そうと決まれば!


 苦渋の決断をした私は、ばふり、と勢いよくベッドにダイブしてスマホを手に取った。そして『ダイエット すぐ痩せる 運動』と検索。どうだ。もう私の本気度がこの三つの単語からもビシビシと伝わってくるだろう。この後はもちろん、『トレーニングウェア レディース おしゃれ』である。私は本気だ。


「成る程、身体の中の大きな筋肉を鍛えるといいわけね。それによって代謝が上がり、痩せやすくなる、と……」


 待って。

 筋肉!?


 違う違う違う。

 私はマッチョになりたいわけじゃないの。アイドルの何とかちゃんみたいな、出るところは出てるけど、くびれるところはしっかりくびれてて、女らしい曲線のあるしなやかなマシュマロボディになりたいの。そんな大臀筋とか上腕二頭筋とか腹直筋とか漢字だらけのカチカチな身体になりたいわけじゃないの。


「何かもっとこう、海外モデルとかがやってそうな――って、海外モデルは駄目だ。何か色々規格外で参考にならん。やっぱり手を伸ばせば届きそうな日本のアイドルみたいなさぁ」


 そんなことを呟きながら、ベッドをごろんごろんと転がる。


「ヨガも気になるけど、ヨガ教室は高いし、だいたい、ああいうところに通ってる人って既に痩せてるんだよねぇ。何なのあれ、デブに喧嘩売ってんの? いや、デブちゃうわ! まだぽっちゃり! ギリギリぽっちゃりだから! ぽっちゃりの範囲内だから!」


 何かないか、何かないか、などと考えながら、画面をスクロールしていると、ついうっかり、ページの下部に表示されている広告を触ってしまった。パステルカラーの可愛らしいフォントで『理想の身体を手に入れよう!』と書かれている、正直なんの広告なのか謎のやつだ。そのコピーの右下にちょこんと載っているピンクと水色の子豚のマスコットが腹立たしい。理想の身体とか書いてるし、これもダイエット絡みの何かなんだろう。だとしたらマスコットに豚をチョイスするんじゃねぇよ。


「やばいやばい。とっとと消さないと」


 こういう広告って一度でもクリックしちゃうと、次からそれ系ばっかり表示されちゃうんだよねぇ。あーめんど。


 ページが完全に表示される前に消してしまおうと、画面上のバツ印に触れようとしたところで、スマホの中から、光り輝く物体が飛び出してきた。


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