第25話 金の亡者マンモン

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安倍晴明

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 安倍晴明はリュウフェイがルシファー、サタン、ルシフィルの融合体と命がけで殺し合いをしている中で眼の前の敵を見据えていた。



 安倍晴明VSマンモン

 死神リナVSレヴィヤタン

 隻眼のオーディンVSベルゼブブ

 勇者テニーVSアスモデウス

 七つの大罪への援護がベルフェゴールであった。



 先ほどからベルフェゴールは色々な道具を使って援護している。

 飛び道具だったり魔法だったり、いまいちわからないが、疲れるとトイレの台座のようなところに座って休憩している。


 

 両手から無限にお金を出現させているマンモンを見ている安倍晴明。

 彼は複雑な心境で見ていた。



 日本という国があった。

 そこでは安倍晴明は有名な陰陽師であった。

 人々は金を出して彼を雇った。

 妖怪と呼ばれた敵をいつも倒してきた。


 

 いつしかそれに意味があるのかと問いかけた自分がいた。

 自分自身が妖怪との間に出来た子供であった。


 

 そしたら人々は手の平を返して安倍晴明を成敗しようとしてきた。 

 人は何のために戦うのか?

 色々と考えて、人間を殺しつくした。


 

 いつしか妖怪を殺すのではなく人間を殺すようになっていった。

 そうして天寿を全うすると、神になっていた。


 

 しかも知らぬ世界、日本という国ではなかった。 

 異世界と呼ばれる世界の1つであった。


 

「どうじゃ、金が欲しくはないか」


 

 だから、マンモンがそう言っても答える言葉は決まっていた。



「俺様はそんな安っぽい金じゃ動かねーな」



「そうかいのう、わしは強欲にまみれておる、だからお主も強欲で動かそうとしたがそうはゆかぬか、では、殺すとしよう」



 マンモンのしわくちゃな両手、そしてしわくちゃな足、ぼろぼろの衣服。

 ぐしゃぐしゃの髪の毛。



 突如として彼は両手から出現し続けるお金を飲み込み始めた。

 口の中にがぶがぶとお金を食べ始めた。



 風が軽くふいた。

 寒気を感じた。



 神となり肉体から超越した存在である安倍晴明ですら感じた。



 眼の前にいたのは先程のマンモンではなかった。

 若々しい男性がいた。

 白髪の混ざった髪の毛をしており、整った表情をしていた。



 彼の両手からわき続けるお金が剣へと変わった。

 それが10本の剣となり、右手と左手の周囲をくるくると回転していた。



「いざ」



 眼の前から消滅していた。



 安倍晴明は防衛反応で護符を展開していた。



 護符のバリアに衝突した五本の剣がバチンと音を立てて弾かれた。

 冷たい風が真正面から頬をなぶり、気づいた時には後ろに吹き飛ばされていた。



「ほう、これを防ぎきるか、なら、これでどうじゃ、ひょひょいひょひょい」



 安倍晴明は地面に両足を付けた。

 思わず幽体化を解除して肉体化していた。

 あの金色の剣は幽体していても物理的な効果を及ぼすようだ。



「式神、牛鬼と犬神!」



 二枚の護符から牛の頭をした化け物が出現した。

 その隣では犬の頭をした人間も出現した。



「まったく安倍晴明さんも式神使いがあらいですね」

「それは思いますなぁ」



 牛鬼の棍棒と犬神の拳が10本の金色の剣を防ぎきる事に成功する。



「ほう、異界からの来訪者か、なら異界に還ろ、ちゃんと通行料は払っといてやる」



 マンモンが意味不明な事を呟いた。

 それは、意味不明な事ではなかった。

 マンモンが支払ったお金で、牛鬼と犬神はそこから消滅した。



 安倍晴明は唖然と口を開いた。

 奴は通行料は払って召喚した式神を返してしまったのだ。



「さて、わしとお主でのタイマンは邪魔されんようにのう」



 安倍晴明は式神系の召喚系だと通用しないことを悟った。

 ならいつも持ち歩いているあれならどうだろうか。

 彼は背中から抜き出したもの。



「草薙剣ならどうだ」



 安倍晴明の剣術は素人同然であった。

 しかしその草薙剣に護符を張りつけた。


 草薙剣に張り付けた護符が力となり、安倍晴明の剣術のなさを応用する事が出来る。


 

 よって護符を張れば張るほど、それは強くなる。

 空中に四散し続ける護符。

 それは草薙剣に永遠と思える程張り付けられた。


 

 そこに出来上がったのは、草薙剣が今では巨大な大剣へと変貌を遂げていた。

 


「ほう、不思議な大剣じゃのう」



「それは草薙剣というのですよ」



 安倍晴明は1本の剣を握る事すらしない、まるで指揮棒で操る指揮者のように演出する。



 草薙剣がその式に合わせて動く。

 それはものすごいスピードとなる。



「さて、次で仕留めるかのう」



 強欲のマンモンが地面を蹴り上げた瞬間、そこから消滅していた。

 土埃しかたっていない。



 だが指揮されている草薙剣は確実にマンモンの軌道に激突した。



 草薙剣の鋭利さは沢山の護符が張られていても変わる事はなかった。

 マンモンの体が縦に二つに分かれて両断されていた。



 マンモンは唖然と笑った。



「かっか、こりゃたまげたわ、そんだけ切れ味がやああああ」


 

 最後に小さな断末魔を上げて地上から消滅した。

 


 マンモンの魂はリュウフェイの下へと向かっていく。

 


 幽元師とは食べる魂ですら呼び寄せる事が出来るのだろう。

 それが3体合体したルシフィルの倒す糧となってくれればいいだろう。



 安倍晴明は信じられない光景を見ていた。

 マンモンの魂がリュウフェイの下へ行くのをやめて、逆に七つの大罪達の方へと向かう。



 そこには一人の爺がいた。

 そう、トイレのような様式に座っている爺だった。

 爺というより、ゴブリンに近いだろう。



 そいつは変な踊りをしていた。

 大きなツボがあった。

 それはトイレのようにも見える。

 その中に魂が吸い寄せられていく。



 安倍晴明はまだ余力があった。

 


「ったく、俺様はあの魂をリュウフェイに送らないといけねーんだよ」


 

 体が肉体化していく。

 それは神化への解除に等しい。



 神から人へとなる。

 それは堕落を意味する。



「神じゃなくても貫きたい」


 

 遥か昔守ると誓った女性がいた。

 それでも守る事は出来なかった。



 遥かな昔親を助けられなかった。

 遥かな昔命を助けられなかった。



「次は助けるぞ、相棒」



 そこに安倍晴明は降臨した。

 それは人間そのもの。人間から神になり、神から人間へと下落した男。



「安倍晴明だごらあああああ」


 彼は久しぶりに地面を走った。



 

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