第24話 死神=ルシファー
俺の前方には6体の悪魔がいる。
堕天使とも呼ぶのかもしれない。
1人は老人のようにしわくちゃの顔をこちらへ向けている。
両手から無限に金貨を呼び出している。
不気味な笑い方をしていた。
俺は彼等の情報を目に写している。
【強欲のマンモン、レベル∞∞】
その隣には全身を青い鱗に覆われた美女がいる。
ねちょねちょした視線でこちらを見ている。
【嫉妬のレヴィヤタン、レベル∞∞】
さらにその隣には大きなマントを蛹のように纏っているイケメン男性がいる。
【暴食のベルゼブブ、レベル∞∞】
その真上、上空には巨大なドラゴンに跨っているこちらと目を合わせないようにあらぬ方向を見ている男がいる。彼は布のような衣服でくるまっている。
【色欲のアスモデウス、レベル∞∞】
後ろに隠れている小さな角をした。小鬼のような男がいた。体は無骨でドワーフ族のようにしか見えなかった。
【怠惰のベルフェゴール、レベル∞∞】
5人の背後には巨大な悪魔がいる、漆黒の肌が泡立っている。カミソリのように鋭い顎をしている。無数に散りばめられた角が生えている。蛇のように鋭い瞳をしている。
【憤怒のサタン、レベル∞∞】
彼等はこちらを見ていた。
正確には死神リナだけを直視していた。
その時だ。空に黒い雲が集まりだした。
光の階段のようなものが雲の隙間から差し込んだ。
その階段を優雅に降りてくる人が1人いた。
彼の背中には1枚の天使の翼があった。
彼の顔の形はとても整っていた。
俺達はその現象に驚きを隠せず、ただただ景色が移り変わるのを見ているしかなかった。
七つの大罪の6名は突然笑い出した。
俺は信じられない思いで、一枚の翼の天使を魔眼で鑑定していた。
【傲慢のルシファー、レベル∞∞∞】
「おいおい、ようやくお出ましかい? ふひょひょひょ」
「すまぬな、マモン、ちと寄り道をしていた。して、ガブリエルよ、そなたから貰った翼、よく使えるぞ」
俺の隣では死神リナが驚愕の表情を浮かべていた。
俺の記憶では死神リナの翼を受け取ったのは死神だったはず。
「う、そだ。あれは死神だったわ」
「そうさな、死神であり、このルシファーである。そなたらが倒したのはルシフィルであり、ルシファーの一部でもある、では返してもらうぞルシフィルの魂を」
その時だった。
俺の魂の体内が灼熱のようなマグマの如く燃え上がった。
俺の全身が真っ赤に光輝く。
仲間達も魂の中にいる伝説のジャックももがき苦しんだ。
口を大きく開くと、そこからボールのような塊が吐き出される。
俺は確かルシフィルの魂を喰らっていたのか、喰らっていた事を忘れていたのか、それとも自然と喰らっていたのか。
俺の思考がパニックを引き起こしながら。
死神のふりをしていたルシファーの右手にはルシフィルの魂が浮遊していた。
それは黒と白の混ざった球体であった。
「さて、色々と迷惑をかけたなサタン、俺達は3兄弟だ。ルシフィルでありルシファーであり、そしてサタンである。この3つが融合する必要がある。我は天使の力を失い、ガブリエルから天使の力を契約で貰った。俺の頭の中は死がよぎる。いくら死神の力を相手に与えようと、我の中から死神の力が失われる事はない、さて、余興はこれまでにして、全てを破壊しようではないか」
ルシファーはまるでナルシストのように恰好を決めてから大きな声で囁いた。
「おれぁ、この時を待っていただ。苦しみ続けていたからだー」
「ああ、すまぬな」
ルシフィルとサタンの体が融合を始めていく。
闇色の光と白色の光が辺りを照らした。
一瞬で太陽の光が消滅すると、世界は闇そのものに包まれた。
風が吹いたと感じたその時、世界は太陽の支配する光に包まれていた。
三つの頭をしたルシファーが立っていた。
1つの頭はルシフィル、1つがルシファー、1つがサタンであった。
【さて、七つの大罪も揃った事だし、眼の前の砦を消滅させるとするか、ヘルボロボロブレス】
ルシファーはこちらなどに全く興味を示さず、彼等の前方に構える砦を破壊する事しか考えていなかった。
3つの頭から光と闇の光が集まってくる。
俺は、そこに恐怖を抱いた。
この世界に溢れる魂の波動、魂の余波、魂の残滓を集めてその力は発動されている。
つまりヘルボロボロブレスを使うと言う事は沢山の魂を消滅させると言う事だった。
「俺はルシファーをなんとかする。皆は他の奴等を頼む」
【指示は任せてください】
「助かるゴーストの声」
俺は走り出していた。
あの光を砦に炸裂させると言う事は、大勢の民衆を消滅させると言う事だ。
つまり殺すと言う事だ。
俺はそんな事を許すつもりもないし、何もしないつもりもない。
「ジャック、いくぞおおおおお」
「承知いいいいいいい」
スキル【魂盾】を発動させていた。
剣の形をしていたジャックの剣は形を変化させて、ジャックの盾そのものになった。
全身で盾を構えた。
その大きさは俺の身長の5倍はあるだろう。
とてつもない衝撃音が響き渡る。
輝く光が俺の全身を穿つ、それでも魂盾で防いでいる。
少しでも力を抜けば、体がバラバラになってしまうのではないかというくらい、痛かった。
魂達の悲鳴が聞こえる。
光の衝撃波で押される痛みは平気だ。
しかし、沢山の魂達が消滅していく悲鳴が痛かった。
ルシファーの力は魂を消費する事、それは俺の力と似ていた。
しかし俺は自分の世界に住んでいる魂達を使用する。
消費する事も出来るがそれはなるべくしない。
だが、ルシファーは周り、つまり近くにある魂を消費して技を繰り出す。
それは関係のない魂を結び付けさせてしまう恐怖そのものだった。
魂の盾で防ぎ切った俺は、眼の前を見た瞬間絶句した。
そこにはルシファーが2本の剣を構えて突撃してきた。
右手に握りしめている剣は光そのものの光の剣、左手に握りしめている剣は闇そのものの闇の剣。
相対する2つの力を使うようだ。
「こしゃくな人間風情が我の攻撃を邪魔するというのか」
「じゃあ、聞くが、お前らは何で砦を破壊する」
「それは至極当然なことだ。人間達は我ら神や天使や悪魔やその他諸々をダンジョンに封印してきた。だからだ。おまえは天界が、地獄が、どこにあるか理解しているのか、ぼけええええ」
「それは遥か空とか、遥か地の下とかだろおおお」
「ちがああううう、全てはダンジョンだ。天国も地獄もダンジョンだ」
「意味がわからないがあああ」
「だから我らは地上に出て地上にいる生命を破壊する。その為にいる」
「なら聞くが、お前は空からやってきたではないか」
「はん、空にもダンジョンがあるんだ」
「な、んだと」
俺は唖然とその話を聞いていた。
まさかの空にダンジョンがあるという話は初耳だった。
「これは戦争なんだよ、ダンジョン世界の住民と非ダンジョン世界のな」
ルシファーが2本の剣を振り落とした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます