第20話 新しい仲間の神
俺は少年の姿で守り神の安倍晴明にこれまでの事を説明した。
パーティメンバーの裏切り、生贄にされて、生贄にした人達が神の力を手に入れた事。最下層の手前で伝説のジャックと出会った事や、幽元師として力が覚醒した事など。
1年近くダンジョンの最上階を目指して命がけのバトルをしてきた事。
天使であり死神であるリナと出会った事、死んで蘇った勇者と出会い、神々の1人とされる隻眼のオーディンと出会った事など。
ダンジョンの本当のボスは人間から神化したゴーストの声であった事など。
俺は安倍晴明に1つずつ説明していった。
安倍晴明はこくんこくんと頷いている。
まるで眠たそうにしている少年のそれだが、彼の瞳はかっと開かれており。
じっくりと考えている事を伺わせるような雰囲気であった。
「なるほどな、リュウフェイは色々と大変な目にあったようだ。君と話をするのは初めてだが、なぜ俺様を迎えに来た?」
「君は無言でぼろぼろになっている俺を助けてくれた。君はいつも門の向こうを見ていた。それはきっと外に出たいからだろうと思ったからだ。違うかい?」
安倍晴明は顎に手をあてて、うんうんと頷いていた。
「正解だリュウフェイ、俺様は早く旅に出たい。世界を見たいんだ。俺様はここの守り神として働いていた。この村の住民たちは自分達の事しか考えていない。もはや守る必要はないと思う、彼等は彼等の価値観で自分自身を守ればいいと思うよ」
「うん、俺もそう思う、人を犠牲にして得る幸せにはいつか不幸が訪れると言う事を分からせたい。それが手遅れのものであってもね」
「うむ、それにしても、イヴは元気そうだな」
「はい、彼女はたまにしか俺に話しかけてくれませんし、いつもは俺の心の世界に潜んでいます」
「そうか、そうか、それは良かった。さて、本当の本題にはいろうかと思うぞ」
「はい、神話英雄戦争ですね」
「その通りだ。俺様の所にもその情報は流れている。神々がやってきて、英雄たちが武器を手にとったというくだりだろう、君が見た織田信長も英雄の1人だな」
「やはり、そうですか」
「神々も英雄もやってくる場所は同じだ。それはダンジョンだ」
「だから、サタンなどが地上を目指していたのですね」
「それもしかりだ。そしてここにオーディンがいるのもしかりだ」
「そうでしたオーディンも神の1人です。魔法はほとんど封印されてルーン文字と魔法魔眼での魔法は使えるみたいでして」
「うむ、この世界にはリュウフェイがいたダンジョンのようなものが無数にある。そこから神々と英雄が地上に出てきたのだろう。なぜダンジョンから神々と英雄が発生するか原理はつかない、しかし、モンスターが沸くのと同じ原理なのかもしれない」
「自分を裏切ったパーティメンバーの人達は神の力を手に入れてるから、それが関与していると思ってました」
「それが一番のポイントだ。そいつらは私利私欲に走っているようだが、そのうち破滅するのが普通だ。まず俺様達がやらなくちゃいけない事を決めよう。先ほどから無言の君らも意見を聞かせてくれ」
安倍晴明は俺の後ろにいる、死神リナと勇者テニーと隻眼のオーディンと伝説のジャックがこちらを覗き見ていた。
「そだね、わて達がやらないといけないのは悪事を働いたり、人々を不幸にする神々の討伐でしょ」
「うん、その通りだとおもうの、勇者として出来る事、あたしは精いっぱい力を出すつもりですね」
「うむ、同じ神を殺すのは気持ちの悪いものじゃが、神が人々を不幸にしてえは本末転倒じゃ、わしたちは悪い神々を殺すしかない」
「わしは、リュウフェイ殿を守る所存でござる」
「じゃ、決まりだな、俺達が向かうべきは【水風の国】だ。今あそこはひどい戦乱になっているらしい、沢山の幽霊たちがあっちからわらわらとやってくる、リュウフェイも感じているのではないか」
実は俺の肌がぴりぴりとしていたのだ。
どこか分からない、それでも沢山の死者が長打の列になっていたるところを歩いている音が聞こえる。
それはこの村に入る事はなく、そこらへんを彷徨っているのだ。
「この国は自由国と呼ばれている。それはどこにも属さない国だからだ。しかし水風の国の周辺には無数のダンジョンもあり、無数のモンスターの巣がある。そんな所で神々が殺しあってみろ、わかるだろ」
ゴクリと生唾を飲み込んでから、俺は頷いていた。
「じゃ、取り囲んでる馬鹿者どもにお仕置きをしよう、今回は俺様を使ってみろリュウフェイ」
「ああ、やってみるよ、みんなは家に入ってくれ」
全員が頷いて、家に扉を閉めた。
すると1人また1人と村人が集まってくる。
彼等の武器はクワや鎌や中には守護団なのか剣と盾を持っているものまでいる。
「いいかげんに、村から出て行け」
「出て行け出て行け」
「化け物リュウフェイは出て行け」
「出て行け出て行け」
「知ってるんだぞお前はこちらから攻撃されないかぎり攻撃しないって」
「そーだそーだ」
俺は頭をぽりぽりと掻きながら。
口の端っこを釣り上げた。
「安倍晴明、喰らうぜお前の魂」
「御意だよ」
安倍晴明の半透明な液体状態になっていくと、その魂が口の中に入ってくる。
「ひ、ひぃいい、口を大きくあけて何か食ってるぞ」
「う、そだろ」
村人には安倍晴明の姿は見えない。
だから俺が突然口を大きく開けて何かを食べ始めたかのように見えたのだろう。
俺の服装が突如として変化した。
白と黒の陰陽師服に変化を辿る。
守り神安倍晴明は元々陰陽師とされている。
それは文献に残されている。
そして異世界から着た守り神とされている。
「う、そだろ、服が変わったぞ、何が起きてるんだ」
「どうせ、はったりだ。何もしないで、罵詈雑言あびせるぞ」
「隙を見せたら殺すぞ」
最後の発言で俺の心が鋭く破壊されたかのように脈動した。
右手と左手をくるくると回すと。
俺はなんとなく安倍晴明の力を感じ取っていた。
右手にふわふわしたオーロラのようなものが集まってくる。
左手も同じ感じにしていく。
そして安倍晴明の記憶にある戦い方を繰り出し。
見えないオーロラのようなものを操り、無数にいる村人たちを吹き飛ばした。
「ぎゃああああああ」
「なにか透明なものがいるぞおおお」
「これはコントロールが難しいな」
「そうだろうな、陰陽道の力はまだまだ伝えていないからな俺様は」
「この力は陰陽道というんですね」
「うむ、これは初歩中の初歩、気の操作だな」
「これが気なんですね」
「もうかまうなころせええええ」
村人達がこちらに猪のように突っ込んできた。
俺の頭の中でイメージしていくのは気の操作であった。
右手と左手を合わせて、パンと音を鳴らす。
気そのものが四散して、無数の粒のように気が村人達に直撃する。
彼等は突如として吹き飛ばされた。
10秒後には、村人は誰一人立ち上がってこなかった。
いつの間にか仲間達が後ろに立っていた。
「じゃ、行くか、水風の国へ」
すると仲間達はにかりと笑ってくれた気がした。
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