第21話 水風の国

===リュウフェイが故郷に戻る数か月前===


 レイスは元冒険者であった。

 しかしあるダンジョンで人間を1人生贄にした。



 するとパーティメンバー達全員が神の力を手に入れた。

 その後、自分たちは神の力を使って裕福な生活を手に入れた。


 

 レイスの神の力は勇者神の力であった。

 圧倒的な力で高レベルのモンスターを倒しまくっていた。



 レベル1000くらいでも平気で倒せる。

 レベル10000をみつけたらさすがに逃げたりしているが、レイスは水風の国で裕福な生活を送っている。



 水風の国では勇者様と讃えられている。

 それが起きるまではの話であった。


 突如として水風の国に騒音のような警報が鳴り響いた。

 大勢の国民がパニックに陥った。



 レイスは何事かと豪華なベッドから立ち上がると、そこには国王の使いが立っていた。



「まったく、俺様を誰だと思っているんだ」

「よく参られた勇者様よ、問題が発生した。四方に存在する危険なダンジョンからモンスターが沸いた。いや、モンスターと言えれば」



 国王は王冠を被り、今から戦争でも行くつもりなのか鎖帷子を体に巻き付けていた。



「はぁ? ダンジョンからはモンスターが沸いて当たり前だろう」


「違う、ダンジョンから出てきた」


「な、んだって」



 レイスは大きな口を開けて、唖然としていた。



「その数、数百万だ数えきれないほどだ。四方にある無数に存在するダンジョンから無限に湧き出ている。鑑定者達が調べた結果レベルは20くらいだとされる、冒険者達がその進行を周囲の城門を守りながら防いでいるのが現状じゃ」

「そのレベルなら俺様が瞬殺してやるぜ」



「さすがは勇者様じゃ、民はヴァーデン砦に避難させている。これは地下から行くことが出来るから大丈夫じゃ、昔から水風の国は四方攻めされる事があって、遥か先代が地下設備を整えたのじゃ」



「んなもんどうでもいいぜ、さて、俺様はお掃除でもしに行くかい」



====城門付近====



 大勢の冒険者と兵士達がモンスターを殺している。

 多種多様なモンスターばかりいたが、ほとんどが悪魔のようないで立ちであった。



 レイスはモンスターの亡骸を踏みつけて笑っていた。

 圧倒的な勇者神の力でもって葬ったのだ。



 冒険者と兵士達は盾に剣や斧をぶつけて鼓舞していた。

 そこに1人の老人がやってきた。



 その老人は腰が曲がっていた。

 右手と左手から無限と言えるほどの金貨を出現させていた。



「うぬ、久しぶりの地上はええものよのう、うぬ、金が欲しいな、金だ。もっとくれ、わしは強欲のマンモン、マモン? マンモン、マモン? うひひひひ」



 レイスは気味の悪い視線でその老人を見ていた。

 すると隣に平然と歩く美女がいた。

 全身を鱗に包まれ、今にもドラゴンに変身してしまうかのような人だ。



「マモン、あんたはいつだって、ここを制圧したらあたいがたっぷりとお金をあげるさね」

「まじかい、嫉妬のレヴィヤタン、じゃが、おぬしは大の大ウソつきじゃて、うひひひ」



 次に青い鱗の美女の隣をふわふわと浮いている男がいた。

 大きなマントに体を包み隠していた。



「地上の喰い物を喰って食って、増殖してくれるわああああ、なつかしきの地上の空、我が蠅どもは死体を欲しておる」

「暴食のベルゼブブよ、そんな人間の死体ばかり食っておらんで、お金を集める事を考えんかいのおお」

「お、ベルゼブブ、あそこに美味しそうな死体が」

「本当だなレヴィヤタン」

「嘘だぴょーん」

「おい、殺すぞレヴィヤタン」



「まったく、あなたたちはもっと冷静に考えると言う事を思いつかないのでしょうか?」



 そこにいたのは空から落下してきた布の衣服で体をまいている男性であった。

 空には巨大なドラゴンが飛翔していた。



「色欲のアスモデウスよ、お前さんは人を操ることばかりしてないで、ちっとは人の顔を見てしゃべれやのう」



 アスモデウスは地面を見ながら話をしていた。



「ねみいいいいぞおおおおおおおおおおおおおおお」

 


 それは地震のような轟きであった。

 地面に亀裂が走り、地震のような揺れを起こしながら、そいつは現れた。



 巨大な化け物、いや、巨大な悪魔そのものだ。



 漆黒の肌は泡立つようになっており、巨大な顎にはずらりとカミソリのような歯が並んでいる。

 角は無数に生えており、瞳は蛇のようなそれであった。



「ぐるじいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」



「サタンよ、しかたねーだろ、お主はルシファーの半身じゃて、ここではルシフィルと言うんだっけな、さて、ルシフィル以外の七つの大罪が揃ったところで、パーティータイムといきまひょか、うひょひょひょ」



 レイスは今、絶句していた。

 勇者神にはもちろん鑑定スキルのようなものが存在する。

 彼等は七つの大罪と名乗っていた。



 いや名乗るまえに勝手に自分たちの名前を出して会話していた。

 後ろを見ると、冒険者と兵士達はこちらを見て頷いている。

 前を見ると、ありえない数値のレベルを表している化け物5体がいる。



『こんなものは、勝てる訳がない、だってあいつら一人一人のレベルが∞∞と2個ついているのだ。∞が1つでも危険信号、二つついていたら、もはや人の手ではなんとかならないレベルだぞ、俺の神としてのレベルは数千くらい、神になっても勝てないのか、ふざけるな、ようやく手に入れた力だぞ』



 レイスは心の中でのたうち回っていた。

 あの少年を生贄にした。



 そして神の力を手に入れた。

 なのに眼の前には化け物がいる。



 神を超える化け物達がいるのだ。

 前代未聞のダンジョンから湧き出てきた化け物達。


「あらぁ? あなた面白いじゃない、いいわ、あなたを操らせてもらうわね」


 そうレイスは気づいた。

 その時には既に何もかもなくなっていた。



 レイスの耳には人間の悲鳴しか聞こえていなかった。

 それが人間の悲鳴だと分からない程、何も認識できなくなっていた。

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