第2章 神話英雄戦争開幕

第17話 冒険者ギルド再び

 きっと当たり前な光景は、こうやって壊れていくんだと思った。


 ダンジョンから飛び出た瞬間、後ろの入り口が崩壊した。


 俺はゆっくりと後ろを振り返った。


 後ろでは巨大なダンジョンが現在進行形で崩壊していた。


 ダンジョンが崩壊していく様を見るのはあまり気持ちのいいものではなかった。




「どうやら、あのダンジョンとはお別れのようじゃのう」


「まぁ、せいせいしたはしたよね」


「うーん、少し複雑です」


【まぁ皆さんはこれからどうするんですか?】




「俺は冒険者ギルドに向かって今の現状を知りたい」




「わしはお主が行く所にどこにでも付いていくぞ」




「そうね、天使ガブリエルとしてではなく死神リナとして付いていくわ」




「うん、あたしもリュウフェイの所に付いていく」




【では決まりですな、これがパーティーメンバーと言う事で】




「ああ、これがパーティメンバーだな」




 俺は空に輝く赤い星を見ていた。


 それは人々が太陽と名付けた星であった。


 こんなにも本当の太陽の光が輝かしとは思っていなかった。




 そして何より、ここに至って、ようやくパーティーメンバーが出来上がったのだと気づいた。




「じゃあ、まずは冒険者ギルドに戻るぞ、1年ぶりだな」




 俺達はその足を自由国にある冒険者ギルドに向けたのであった。




★ ★ ★ ★ ★




 マナナ受付嬢はいつものように冒険者ギルドの仕事をしている。


 主にクエストの受給や新規の冒険者の登録をだ。


 約1年前1人の少年が冒険者になる為にやってきた。


 しかしその日、初めてできた仲間達と共に冒険にでかけたきり戻ってこなくなった。


 その冒険者達は彼がモンスターに殺されたと説明してくれた。




 マナナ受付嬢はショックのあまり一週間ほど休んでしまった。


 不思議だった。あの少年の幽元師という謎の職業。 


 あれともっと触れ合う事が出来たはずだと。




 マナナ受付嬢はほんわりとした視線を冒険者ギルドのドアに向けた。


 そのドアはゆっくりと開かれた。


 信じられないものを見た。


 なぜなら死んだはずの少年がぼろぼろの姿をしてやってきた。


 両隣には2人の美少女をつれて、しかも背後にはなぜか隻眼の老人もつれて。




 冒険者達は口笛をあげた。


 なぜなら2人の美少女が絶世なる女性だったからだ。




「おいおい、そこの姉ちゃん達2人、こっちと遊ぼうぜ、そんなガキとジジイ相手にしないでさ」


「そうさ、こっちきて楽しい事しよーぜ」




 1人のやんちゃな冒険者が背中に鎌を身に着けている女性の手を握ろうとした。


 その瞬間、神業かと思えるスピードで少年がそのやんちゃな冒険者の手を払った。


 信じられないのはそれだけではない、やんちゃな冒険者は冒険者ギルドの壁を突き破って遥か遠い所へと吹き飛ばされたのだから。




 その衝撃で冒険者達は少年への視線をモンスターのような視線へと塗り替えた。




 全員が武器を握りしめる。


 それは冒険者として当たり前な事だからだ。




「すみません、力のセーブが難しくて、あの受付嬢さんいますか、あ、あなたはあの時のですね、すみません、1年間もクエストとかやってないけど冒険者としてクエストを受給できますか」




 その拍子抜けたした発言に、マナナ受付嬢は唖然としていた。


 その場が凍り付き、冒険者ギルドの壁に穴が開いたままだ。




「オーディン、頼むよ」




「承知した」




「まったく、リュウフェイ殿には困りますぞ、他の人はあなたのような超人ではないでござるぞ」




 その場の人々がさらに凍り付いた。




 まずオーディンと呼ばれた神々の名前と同じ人物が魔法により一瞬で壊れた壁を修復した。


 次に透き通った人物で剣を腰に差している人物が先ほど飛ばされたやんちゃな冒険者を連れてきた。




 その場が凍り付くのもそのはずだ。




「ぎゃああああ、幽霊だあああ」


「えええええ、なんで昼間から幽霊が」


「てか、あれ、伝説のジャックだぞ、結構前に死んだって」


「てか伝説のジャック幽霊になってるんですけっどおおおお」




 その場が騒然としていた。




「だから、リュウフェイ殿、幽霊実体化のスキルは使う所を間違えないでください」




「あ、だね、皆さん彼は幽霊です」




【その紹介はいらねええええ】




 相変わらずその場が騒然としていた。


 マナナ受付嬢は、はやる気持ちを抑えて発言した。




「1年クエストを受給していないと再登録になりますがよろしいですか?」




「ああ、もちろんだ、オーディンとテニーとリナもいいな」




【ああ、大丈夫だ】




 その後、大勢の冒険者達が彼等に対して興味の眼差しを向けていた。


 そんな時、マナナ受付嬢は4人の血を世界樹の紙にあてた。


 そのスキルにマナナ受付嬢は蒼白になっていく。


 そして意識が飛びそうになり、なんとか持ちこたえる。




「少々お待ちください」




「ああ、ゆっくりしてね」




 リュウフェイという少年はのんきにそのような事を呟いていた。


 マナナ受付嬢はギルドマスターの部屋を叩いた。


 何度も叩いても出てこないので、破壊魔法でドアを吹き飛ばした。




「な、なにをするかね、ここはギルドマスターの部屋だぞ」




「そんな事言ってる場合じゃないです、ギルドマスター」




「どうしたんだい、落ち着いて落ち着いて、ひっひっふー」




「わたくしは妊婦ではありません、この紙を見てください。全員レベル100000を超えています。ありえません、レベル100で凄いとかのレベルですよ、これもはやありえないことに」




「ふむ、どうやら彼らは、普通じゃないな」




「見てたらわかりますよ」




「ふむ、どうしたものか、今世界で何が起きているか説明はしたのかい?」




「ええ、まだです。神々や英雄達が暴れて、神話英雄戦争をしてるんですよ、それは彼等は知らないようで」




「うむ、この子さ、勇者じゃね?」




「ああ、テニーさんですよね、でも勇者の名前と、そうでした、男性として祭り上げられる前はテニーでしたし、この称号は勇者ですよね」




「あとさ、こいつ天使じゃね?」




「えと、リナさんですよね、元天使と書かれて、ガブリエルと書いてありますね、今は死神らしいですが」




「ちと、これひじょーに言いたくないんだけど、このオーディンてさ神々のオーディンじゃね?」




「あ、そうですね、種族;神って書かれてますね」




「でさ、その3人をしのいでトップのこの幽元師のリュウフェイ君は何者ですか、ゴッドスレイヤーって神殺してますよ」




「あ、やばいですね、あーこれどうします。彼等を敵に回したら、この国滅びますよ」




「うん、それは同意見だ、さて、事情を説明したいから、彼等をギルドマスターの部屋に連れてきたまえ、早くだぞ、あとお茶も用意して、高級菓子も用意する事」




「了解しましたー」




 マナナ受付嬢は不思議と今日から色々と楽しい事があるよーな気がしていた。


 やっぱりあの幽元師の少年は生きていた。 


 としたら、あの時の他のパーティメンバー達は一体なんでウソを言ったのだろうか。




 マナナ受付嬢は思わずスキップしながら、リュウフェイ達をギルドマスターの部屋へと導いた。




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