第16話 生きてるってどういうことだっけ

 俺の魂がゴーストの魂とぶつかり合う。


 そのぶつかりあいは剣と槍と杖だった。


 この時俺は自然と超感覚を使っていた。


 ゴーストの過去を知ろうとしていた訳では無かった。


 ただ感覚を研ぎ澄ませたかったからだ。




 俺は今の命を賭ける殺し合いがとても楽しかった。


 生きてるってどういうことだっけって思ったことがある。


 村の人々に差別を受けて、逃げて逃げての繰り返しの生活。


 ようやく年齢が冒険者になれるくらいに達したのに、人に騙されるしまつ。




 俺はなんで生きてたんだけって思ってた。


 だけどゴーストの声と真剣に殺しあう事で、俺は生きる理由、生きてるってこういう事だっけって思ったんだ。




 だから超感覚のスキルにより、空間が歪み、時間が止まり、全てが停止した時。


 まるで時計が逆向きに動き出すように、ゴーストの過去が見えてきた。




 その少年は泣いていた。


 左目が灰色なら右目は赤かった。


 周りの人間達は少年を怖がった。


 その少年は左目で過去を見た。右目で未来を見た。




 人々は少年に恐怖を抱いた。


 彼等はこのダンジョンに少年を生贄にした。


 そして1人の神が生まれた。




 1人の神は世界を混沌に貶めた。


 その神こそが少年の姉であった。




 少年はこのダンジョンで生きる術が無かった。


 しかし過去と未来を見る事により、ここまで到着した。


 少年は椅子があったから座った。


 そして少年はゴーストの声となった。




 それがこのダンジョンのボスの始まりであった。




 少年はずっと涙を流し続けていた。


 永遠と思える時間を嗚咽を漏らして過ごしてきた。


 少年は大人になり、それでも年齢を取り続けた。


 しかし老人のような枯れた肌にはならず。


 いつまでもいつまでも年齢を取った。




 同じようにこのダンジョンに生贄にされた人がいた。


 それが俺だ。


 ゴーストは声となって俺を導いた。


 そして彼は俺に殺されるつもりなのだ。




 時計の針が後ろではなく前に進み始めたのを感じた。


 次から次へと動き出す世界はモノクロのようなものだった。




 そして俺とゴーストの声はぶつかりあう。


 魂の剣とゴーストの声の槍と杖がぶつかりあう。




「はっはーたのしーな、これをどれほど待っていたか」




「それは俺も同感だぜ」




「さて、ちと使ってみるかな【灰色世界】」




 次の瞬間世界そのものが灰色になった。




「いざ、まいる。剥奪せよロンギヌスの槍よ!」




 灰色世界の四方からゴーストの声が使っていた槍が無数に出現する。




「さて、神の槍、食らっても生きていけるかな」




 俺は返事をする余裕などなかった。




「ふ、俺もみくびられたもんだぜ【無限幽霊】」




 俺の四方に今まで死んでいった生き物たちの魂が出現する。




「てめーら盾となれ、本当に申し訳ない」




 幽霊達はにこりと笑い。


 ロンギヌスの槍をくらって蒸発した。




 その数数千を超える。




「ふははははは、お前の世界には何人の幽霊がいるんだろうなああ、リュウフェイ」




「ああ、俺の世界にはたーっくさんの仲間がいるぜ」




 ゴーストの声は再び走り出した。


 俺の魂の剣と剣劇を繰り返しながら。




「いざ、まいる【落雷世界】」




 ダンジョンの天井に黒い雲がふわふわと浮かび上がった。


 次の瞬間杖から雷魔法が炸裂した。


 黒い雲は雷を吸収すると、辺り一面を雷で覆った。




「【無敵の壁】だぜ」




 30秒間俺は無敵になる。


 俺の体を焦がすのは黒い雷であった。


 全身から煙が吹き上がる中。


 俺はくつくつと笑っていた。




「俺は次の一撃に賭けるぜ、ゴースト」




「それはこっちも同じだぜ」




 全神経を集中する。


 俺の中にある世界と共鳴していく。


 心臓がばくばくんと鳴り響く。


 記憶が鮮明によみがえる。




「イヴ、力を貸してくれ」




 イヴの暖かい笑顔が俺を出迎えてくれる。


 イヴは俺の守護霊となっている。


 俺は右手と左手を握りしめる。


 それを自分の心臓があるところに叩きつける。




 俺は死んだ。


 心肺停止となった。




 次の瞬間俺は魂そのものになる。


 それでも俺の魂の中には俺の世界がある。




 俺は立っている。


 体が燃え上がるように熱い。


 全身が虹色の炎で燃えが上がる。


 肉体は地面に倒れている。




「これが俺の最強技。【幽体離脱】だぜ」




「はーっはっは、おもろいな、やっぱりリュウフェイはすごいぞ、その後どうやって生き返るんだ」




「知るかぼけーなるようになるんだよ」




「やっぱ、お前は好敵手だぜ」




 ゴーストはロンギヌスの槍と雷の杖を叩き合わせた。




「この2本は元々俺の髪の毛から作られている。ロンギヌスの槍や神々に伝わる神具だが、これは複製にしかすぎない、この雷の杖も小説で見た冒険小説からきた。だが、偽物には偽物の戦い方ってもんがあるんだ【偽物無双】これでも食らっておっちんどけ」




 ゴーストの周りには無数の伝説の武器が出現した。


 それが次から次へと増殖を繰り返し。


 1つの神具へとなった。




 それが偽物無双という武器だった。


 巨大な拳だったのだから。




 大きな拳そのものがぴかぴかに光っていた。




 俺は全身を虹色に燃え上がらせながら、突っ込んだ。




「どこまもお付き合いしますぞ、リュウフェイ殿」


「ああすまないな、伝説のジャック」




 俺の右手と左手には2本の剣が握りしめられている。


 2つの大きな力はぶつかり、大きな爆発をとどろかせた。




 俺の全身が蒸発していくのを感じる。


 そしてゴーストの声も蒸発していくのを感じる。


 彼はこちらを見てにかりと笑っていた。




「ありがとう」




 彼の体に繋がっていた鎖はなくなった。




「まだ死ぬの、許してないから」




 イヴはにやりと笑い、俺の体を肉体に叩きつけた。


 心臓が動くと、俺の体に激痛が走った。




 その時だった地震が鳴り響いた。


 それはダンジョンの崩壊を意味していた。


 激痛のあまり俺の体は動かなかった。


 意識が朦朧とする中、隻眼のオーディンと死神リナと勇者テニーが俺を運んで走っていた。




「まったく死ぬところだぞお前、わしはお主には驚かされたよ、あんなびっくりな戦闘を見せられてな」


「わてはあなたが死んだらどうしようかと焦っていた」


「あたし、なんだかわかる。あのゴーストの声寂しかったんだよ」




【そうですなぁ、わたくしは寂しかったのですね】




「「「「てめーのことだろが」」」」




 俺は思わず突っ込んでいた。




【縛りもなくなり、色々と自由になれました。色々な人に声を伝えらせる事ができるようですが、本体はあなたの中にありますよ、リュウフェイ】




「ああ、知ってるよ」




 俺は体が運ばれるがままに呟く。




「ところでさ、このダンジョンどうなるんだ」




【さぁ、きっと崩壊するんでしょうね、2人の攻撃力やばかったですから、それといつものレベルアップですよ、地上に出たらやりたい事があるでしょう、リュウフェイ】




「ああ、冒険者に再びなることだ」




【よろしいですよ】




【モンスターの魂を喰らいました。経験値5倍の効果が発動します】


【おめでとうございます。レベルが110000になりました】


【剣術レベルがカンストを超えたので剣豪レベル1になりました】


【盾術レベルがカンストを超えたので頑強レベル1になりました】


【跳躍レベルがカンストを超えたので俊足レベル1になりました】


【度胸レベルがカンストを超えたので無心レベル1になりました】


【防御力レベルがカンストを超えたので無敵レベル1になりました】


【攻撃力レベルを習得しましたがカンストを超えたので最強レベル1になりました】




【新しいスキルを習得しました】


【無限幽霊:無限に幽霊を出し続ける事が出来る】


【幽体離脱:肉体から解き放たれる魂だが失敗するとそのまま死ぬ】




【伝説のジャックが魂レベル15000になりました】




【恩恵を得ました】


【神話ダンジョン攻略者を得ました】




【称号を得ました】


【ゴッドスレイヤーの称号を得ました】


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