第10話 100階層に到着

 俺はこのダンジョンで大きく成長したと思う。


 一番最初に伝説のジャックという仲間、いや友達と出会った。


 次にドロップアイテムとして次元の向こうからやってきたガブリエル、いや死神リナは大切な友達だ。


 パペットパペットと勇者が融合して女性として転生した勇者テニーは掴みどころがないけど大切な大切な友達だ。


 神様でありその力を失った隻眼のオーディンは友達というより人生の先輩だった。




 俺達は階層を必死に上り続けた。


 世界は本当に広い、ただの1階層だけで大陸かと思える場所すらあった。


 人間の英雄と戦い、化け物の英雄と戦ったり、時には神々すら敵にした。


 見た事もない海の中で戦ったり、落下し続ける空の中で戦ったり、このダンジョンはやはり普通ではなかった。




 彼等やモンスターを倒し彼等の魂を喰らい続けた。


 仲間達も着々とレベルを上げていった。


 オーディンはレベルがリセットされていたそうで、1レベルから上昇していった。




 俺達は階層を上がるごとに仲間として友達として友情を深めあった。


 500階層あたりになると、俺達の心は希望に満ち溢れた。




 何度も地獄のような戦いを味わった。


 俺の体内には数億どころではなく数兆くらいの魂が入っている。


 いや俺と言う世界に数兆の魂の生き物たちが生活しているんだ。




 もはや俺は勝手に死ぬ事は許されない。


 俺の世界を破壊する事も許されない。




 俺の体内で生活している魂達の力を借りて、異常な力を得たのだから。




 俺は地上に出たら最高な冒険者になるつもりだ。


 あの元パーティーメンバーの彼等もぼこぼこにしたい。


 殺したいとまでは思わない。


 人の命がどれだけ大切かを味わってるからだ。




 俺の夢の中には幼馴染のイヴがよく出てくる。


 彼女は恥ずかしがり屋でなかなか俺の体内から出てこない。


 でも夢の時は威張って俺の事を褒めてくれる。




 俺は生きていてよかったと思った。


 幽霊が見える事によって沢山の人達から差別を受けてきた。


 幽霊ですら俺に話かける事はしなかったが実は話しかけられていた。


 俺が幽元師として力に目覚めていなかったから。




 そうして俺達は数か月、ぎりぎり1年たたないくらいだろう。




 ようやく俺達の目の前には巨大な扉がそびえたっていた。


 そこには堂々と100階層と書かれてある。




 ついに俺達はやってきた。100階層に、あともう少しで地上に出る事が出来る。




「さて、ここからが本題じゃ、わし達はここまでくるのに結構成長したし、成長するように戦ってきた。リュウフェイは圧倒的に強くなった、ガブリエル、いや死神リナは死神としての力を蓄えた。勇者テニーは勇者の力を思い出していった。そしてわしは神としてではなく1人の最強の魔導士として強くなった。これでいけるはずだと思うのじゃ」


「はい、オーディン先生のスパルタモンスター倒しや自分に制限をかけて縛り、敵を倒す方法、そのおかげで俺は強くなりました」




 そうオーディン先生は無茶苦茶であった。


 伝説のジャックの力を借りずに1人でケルベロスを倒せとか、目をつぶってサイクロプスを倒せとか。


 しまいには見た事もない神々相手に拳だけで倒せとか、何度死にかけた事か。




「ふ、そうか」


「まったくあんたはくそ爺よ」


「あなたの訓練は厳しすぎるのではなくドエスなのでは?」




 リナとテニーがすかさず突っ込むと。




「そうかもしれんなぁ、さぁ、行くとするか、わしたちの希望の場所へ」




「だけどあと100階層もあるけどね」




「ふ、気にするな小僧」




 俺達は前に突き進む。


 巨大な扉の前にやってくると、扉がゆっくりと開いて、その世界に吸い込まれた。




 俺達の目の前に現れたのは絶望を叩きつける存在であった。


 そこは地獄なんて生易しいものではない、ルシフィルがいたあのマグマ地帯なんて軽いものだ。




 巨大な谷だ。


 ここは谷の底だ。崖があって沢山の戦士達が上に登ろうとしている。


 しかし彼等はほぼ死体であり、その大きさは巨人であった。




 巨人であり屍のような彼等はただひたすら殺し合いを続けている。


 その数数億はくだらない。




 数億の巨人が巨人同士で武器を掴み、布のぼろきれで殺し合いを続ける。


 そこに終わりという希望はない。


 殺されても殺されても、体が再生されて立ち上がる。


 そしてまた殺し合いを続ける。




 彼等は殺し合いが楽しいのかげらげら笑いながら斬りあっている。


 巨人の1人が動けば地面が揺れ、それは地震のようになる。




【圧倒されている場合ではありません、ここにいる数億の巨人を全部倒さないといけませんよ】




「ああ、ゴーストの声、ちょっとびびってな」




【まったくあなたは御強くなられたのですから】




「それもそうだな」




「ではそれぞれ勝手に戦うでよかろうかのう」




「ああ、オーディン先生のいう通りだ」




「この死神リナ、1人で戦う術を見出したのですわ」




「うん、あたしも強くなったんだよ、あんな巨人、ちょちょいのちょいね」




「まったく女子なのに御強いですな、ではやりましょうリュウフェイ殿」




「ああ、伝説のジャック、俺達の本気を見せてやろう」




 俺は大きな口を開いた。


 そこに伝説のジャックの魂を喰らうと。


 体の細胞がぎしぎしと崩壊を始めた。


 伝説のジャックの魂の記憶が俺の体の細胞を作り替える。




 それこそが。




【魂立体化】という新スキルだ。




 これは取り込んだ魂の記憶を元に自分の体の細胞を変形させる。


 伝説のジャックと俺の融合体が生まれると言う訳だ。


 あと1兆クラスの魂達の記憶を使って体を作り替える事が出来る。




 最強のスキルはまだ習得していない。


 それは全ての魂と自分を融合させること、肉体レベルでだ。


 それを行ったら俺の体がどうなるかオーディン先生でも分からないらしい。




 俺の体は15歳の少年から一人の大人に作り替わる。


 衣服までも記憶を反映させる。




 そこには伝説のジャックそのものが立っていた。


 右手には青光りを放っている魂の剣が突き出ている。


 長さは15メートルは超えている。




 俺の顔がジャックそのものになっている。


 俺とジャックは一心同体になり、ジャックそのものになる。




「いざ、尋常にしょーーーーーーーぶ」




 俺の体は跳躍した。




「まったくわてだってやるんだからねええええ」




 死神リナが背中に無数の翼を生やす。


 全ての翼は死神の鎌の形をしている。


 空気を斬り裂いて、超スピードで飛翔する死神リナ。




「あたしはもっと強くなって、地上に出てみたい、地上に出ておいしいものをたべるの、毎回木の実はあきた。おいしいお肉をたべたいのよ、さぁ、勇者の剣よこたえてね、うふ」




 勇者テニーはゆっくりと散歩するように歩く。


 その右手には勇者の剣が握られている。


 次の瞬間異変が生じる。


 勇者の剣そのものが変形を辿り、剣の馬車となる。


 テニーは馬車の御者に座って、にこにこしている。


 剣の馬車は形を変形させ、大きな人形になる。




「さぁ、勇者のゴーレム戦ってね、あたしあまり運動得意じゃないの」




 勇者テニーは肉体運動が苦手だと言う事が実は判明した。


 しかし膨大な魔力と膨大なセンスを見出したオーディン先生は、彼女は勇者ゴーレムという新スキルを覚えさせた。




 勇者ゴーレムは圧倒的に操作センスのいる魔法だ。


 勇者テニーは2分でそれを習得した。


 オーディン先生は笑っていたし、右肩と左肩にいる黒と白のカラスはびっくりしていた。




「まったくお主等は化け物になったのう、まぁわしも化け物じゃて」




 隻眼のオーディンはにやにや笑いながら、杖をつついている。


 この長い長い階層の上り階段には老人の膝は大変つらいものだったようだ。




 魔法使いにとって杖とは相棒だ。


 そしてその杖は。




「ふぉふぉふぉ、わしは神から堕ち、魔法使いになり、賢者になり、また神となるのはめんどいから、神超えさせてもらったわい、今のわしは神眼のオーディンじゃて」




 オーディンの左目は遥か昔魔法を手にれる為生贄にした。


 しかし彼は、モンスターを倒すたんびに目玉を抉って、自分に合うのを探し続けた。


 その結果数個の眼玉を見つけた。


 状況に応じて目玉を切り替える。


 それこそが。




【魔法魔眼】というスキルであった。


 魔法魔眼とは色々な魔眼を切り替える力である。




「ふぉふぉふぉ、わしをなめんほうがよいぞう?」




 俺達の目の前には化け物がいる。 


 巨人の数億の大軍だ。 


 だけど、俺達も化け物だなのだ。




「「「「さぁ殺して、破壊して、爆殺だあああああ」」」」

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