第9話 天使狩り
生命の鼓動、生きている証、俺は今ちゃんと生きている。
守護霊に大切な人がいると知った俺はもっともっと強くなれる気がしていた。
今の俺は堕天使ルシフィルの目の前に立とうと恐怖を感じない。
「まったく、あなたは本当に人間なのですか? それにほとんどの力を失った隻眼のオーディンよ、あなたにかけられた封印魔法を解いてください、人類を滅ぼす為に堕天したと言うのに」
「ふぉふぉふぉ、残念だな、わしにはお主にかけた魔法を解く事は出来ん、わしを殺すしか方法はないのでな」
「ふ、それなら、この地獄王ことサタンがあなた達を滅ぼしてくれよう」
「いーや、ここは俺だけが相手する、いくぞ、伝説のジャック」
「御意でござるぞ」
俺は一歩前に進む。
俺の体内には数億を超える魂がうごめいている。
それは俺が生きていた中で出会ってきた幽霊達とこのダンジョンで出会った幽霊達であった。
俺は気づかなかったんだ、沢山の幽霊と出会っても、いつしかいなくなってしまっていた事に。
それはイヴが彼らを俺の体内、つまり俺の世界に導いてくれていた。
俺の中には俺の世界がある。
それはきっと天国よりも暖かい場所なのだろう。
このダンジョンにいる魂を苛め抜かれている幽霊達、彼等を吸収する事で魂に救済をもたらした。
【あなたは気づいたのですね、幽元師の力とは】
「ああ、ゴースト、俺はもっと強くなる、幽元師とは死者を救済する職業でもあるんだよな」
【その通りです】
「何を独り言を……おまえ、本当に人間か? 魔眼で見たがレベルは1000、このサタンにとっては雑魚で人間にとっては超人のレベル、なのに、なぜだ、なぜ、このルシフィル、いや堕天してサタンになったこのサタンが恐怖を感じるとは」
俺はにやりと笑った。
【このゴーストの声、ここでは何も言うまい、あなたの好きなように戦ってください】
「言われなくてもそうするつもりさ」
俺は一歩突き進む、そのたんびに数億の魂が動き出す。
一歩一歩とゆっくりと歩く、ルシフィルでありサタンは双剣を構えた。
前戦った時と同じく、器用に回転させていた。
「天下一品、いざ勝負」
俺は地面を蹴り上げた。
今の武器は伝説のジャックだけにしている。
死神のリナはオーディンとテニーのそばにいる。
俺の両手に包まれた剣には数億の魂が宿る。
剣の形が勝手に変形を辿る、無数の線を描いて、剣から剣が出現する。
剣から10本の剣が出現し、さらに10本の剣が出現する。
数億の数の剣が1本1本出現し、なすすべのないサタンの体を貫く。
「あ、ありえないぞ、そんな武器の使い方」
「彼等は俺の世界の住民だ。いわば友達なんだ。俺には数億の友達がいる。彼等がおめーをぶちのめす、さぁ、死ね、そして忘れろ、ばーか」
俺は地面に着地した。
背後ではルシフィルが怒りの咆哮をあげて消滅しようとしていた。
「ただでは死なぬぞ、人間」
ルシフィルの翼が爆散した。
無数の羽が俺めがけて追尾してくる。
俺は微笑を浮かべた。
「魂そのものが武器、幽元師とはそういうものだよな」
俺の体の魂が変形を辿る。
魂の鎧となりて、そこには白銀に輝く魂の鎧をまとった俺がいる。
その鎧は羽を次から次へと叩き落した。
「ば、ばかなああああ」
「とっとと死ね、ルシフィル」
その時ようやく、何を思ったのか、ルシフィルが口を開きかけて、次の瞬間光輝く閃光の下消滅していった。
俺はにやりと微笑んだ。
俺の口から体内へとルシフィルの魂が入ってくるのを感じる。
【モンスターの魂を喰らいました。経験値5倍の効果が発動します】
【おめでとうございます。レベルが3000になりました】
【魂の鎧:体に白銀色の魂の鎧を装備出来るを覚えました】
【魂無限剣:魂の武器から無数に魂の剣を出現させる事が出来るを覚えました】
【自然回復:体の治癒力が常人の10倍上がっている状態を覚えました】
恩恵
【イヴの祝福:上手く魂をコントロールする事が出来るようになるを思い出しました】
【剣術レベル2000になりました】
【跳躍レベル1000になりました】
【度胸レベル2500になりました】
【防御力レベル3000になりました】
それが俺の成長の結果であった。
レベルが3000になっている俺自身が信じられない事だと思った。
人は一生涯のうちに成長して最高でも100レベルいけばいいとされているし、普通のモンスターは100レベル以下とされている。
勇者は最高でレベル1000までいくとされ、魔王はレベル1000くらいとされている。
こういった情報は小説等で得た知識なのだが。
それがいかにあてにならないものだと今痛感している。
もしかしたら今の状況が特殊な可能性もある。
それでも、俺はこのダンジョンから出て地上に行く必要がある。
最高の冒険者になる為にだ。
今俺達は堕天使ルシフィルがいた階層で休憩している。
ここは898階層なのだ。【確変】しているから上に行けば行くほど強くなる。
今の俺なら突破する事も出来ない事ではないのだろうけど。
どんな敵が待っているか分からないので、チームワークは必要だと思っている。
仲間達はこの地獄のステージにあった木の実を食べている。
まるで赤黒い木々から実る赤黒い木の実は食べられたものではないと思ったのだが。
「うめーだろ、このマグマが沢山あって地獄みたいな所でもなぁ、木の実は実るぜ、マグマの実っていうんじゃがのう、さて、わしは地上に出るためお主等と同行したい」
「ああ、それは問題ないよ爺さん」
「じゃが、このまま上に行くのも問題はなかろうが、最上階の100階層を切ったあたりからやばい魔力を感じる」
「やっぱりオーディンだな、小説で読んだ通りだ。魔道に心得があるんだな」
「もちろんだ。わしはオーディン、隻眼のオーディンじゃ、さて死神リナ、いやガブリエルよそなたはなぜここにいる」
死神リナは不思議そうに老人を見てにこりと微笑んだ。
「夢なんですのよ、死神になる事が、死神になってミカエルを見返してやるのですわ、天使長ミカエルはいつもわての事をバカにしたのです。そして死神になってミカエルをぼこぼこにするのですわ」
「で、そのガブリエルがなんで最下層にいる地獄王のドロップアイテムから出るんだよ」
「わては時空をさまよってあそこに出ただけですわよ」
「時空か、不思議なものだ」
「100階層まで何があるか分からない、運命とは動き続けるものじゃて、じゃから100階層までにお主等はさらに強くなる必要があるのう、わしは魔力をほとんど奪われておるのでな、ある神から」
「うん、皆強くなってね」
「勇者テニーも強くなる必要があるんだよ」
「あたしは既に強いと思うわ」
「意外とそうでもないかもしれないよ」
俺は微笑みながら、木の実をかじる。
最近木の実くらいしか食ってないよなと思う。
「そろそろ休憩も終わりじゃ、上の階層に行くとしようかのう」
「ああ、爺さんは色々助言を頼む」
「もちのろんだ。まぁゴーストという声には勝てんがのう」
【やはり気づいてらっしゃいましたか】
「お主が何者で、何やつかは興味深いが、色々と助けてくれよのう」
【もちろんです。リュウフェイはわたくしのような存在ですから」
「じゃ、行くか、皆」
俺達は先程まで閉じられた門を見つめる。
まるで地獄に行く門のようで、そこは下るのではなく天国へと昇るような階段であった。
かくして897階へと挑戦していくのだ。
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