第6話 魂の目ざめ

 俺は確かに少年の勇者フェイブに伝説のジャックが作り出した魂の剣で斬りかかったはずであった。


 しかし俺の体はまるでしびれ薬を飲まされたかのようにびりびりと動かなかった。


 世界が黄色く見えた。肌がピリピリと痛んだ。


 俺の体は雷に撃たれたのだ。




「やるねぇ、お兄ちゃん、勇者の雷魔法をくらって無事でいられるなんて」




 悲鳴を上げる暇もない、全身が丸焦げになってもおかしくない。


 なのに俺の体は無事だった。


 俺の体内では沢山の魂達が苦しんでいた。


 その中には伝説のジャックも含まれた。


 武器化していた死神リナは吹き飛ばされて、森の中に消えた。




 目の前にやってくる1人の少年、彼はパペットパペットというモンスターであり、勇者の魂を喰らった者だ。




「お兄ちゃん、動けないでしょう、でもおかしいなぁ死ぬはずなんだけどね」




「ああ、残念だったな、何かいい気持ちなんだよ、こう何かを思い出させてくれる。なぁ知ってるか、痛みってやつはな体の痛みより心の痛みのほうが深いんだぜ、俺はこう見えて一人ぼっちで、幽霊ばかり見てきたけどな、ああ、そうだな、そうだよ、何をためらっている。俺は雷なんて平気なんだよ」




「な、どういうことですか、お兄ちゃん」




「ああ、そうだ。この雷は魂から出てきてる。俺は幽元師だ。なんとなく力を理解してきた。俺は全ての魂に干渉する事が出来る。俺はこの雷を全て喰らってやるぜ、なぁ少年、いやバカ少年か?」






 俺は大きな口を開いた。


 その中に次から次へと雷魔法のエネルギーが入ってくる。


 お腹が膨れていくが、即座にエネルギーに変換されてしまう。 


 全身を覆う黄色い雷魔法がばちばちとはじけ飛ぶ。


 天井に向かって雷魔法が炸裂する。


 行き場を失った雷魔法が即座に俺の口の中に吸い込まれる。




 気づけばなんてこともない、辺りは静けさを保ち。


 俺の体はばちばちと雷が光っている。




「ふう、無味無臭だけど不味い奴と美味い奴があるなぁ、さて、少年、まだ戦うか」




「は、はは、ははは、勇者の特大の雷魔法を喰らって無事って、あんた化け物だ」




「勇者を食べて、その勇者の力を使って人を殺しているあんたこそが化け物だ」




「そうさ、僕はぱぺっとぱぺっとだよ」




「少年、次で終わらせるぞ」




「そんなことが出来るならね」




【まずいです。勇者フェイブの魔力が底上げされております】




「ああ、知ってるぞ、伝説のジャックよ力を貸せ、それといつまで寝ている死神リナ」




「御意、この魂が燃え尽きるまで」




「はいはい、さっきから死んだふりしてたけどばれてましたわね」




「お前らの力が必要だ。お前等は仲間だそして所持品だ」




「御意です」


「わてはあんたの所持品かい」




 俺の右手に長大な魂の剣が出現した。


 左手には死神の鎌に武器化した死神リナがいた。




 俺は目の前の少年を見ていた。




「勇者は武技を習う。これこそが、武王の体現者、勇者フェイブなりいいいい」




 目の前の勇者フェイブがジャンプすると、一瞬で至近距離に着地した。


 拳が炸裂する。それは見えないスピードに達する程であり、風が通過したと思ったら、やられているような感じだ。




 だがそれを俺は魂の剣で片端から防御する事に成功した。


 魂の剣をうまく扱いながら、体の向きを変えて、相手の攻撃を防ぎ続ける。




 少年はひたすら俺に拳を炸裂させ続けた。


 しかし全てがガードされていた。






 勇者フェイブには疲れがなかった。




【まずいですねぇ、これはどうやって倒すつもりですか】




「そんなもん考えてられっかよ」




【それがあなたですね】




「ふふ、お兄ちゃんやるねぇ、ならこれならどうだい」




 ランク1上がったような雰囲気になった。


 少年が青年へと成長したのだ。


 そうだパペットパペットは喰らった魂の年齢を変化させる事が出来る。




「さぁ、お兄ちゃん、死んでもらいますよ」




 もはや勇者の力を引き出し続けるパペットパペットは気づけば俺の隣に立っていた。




「な」




「お兄ちゃん、死んでもらいますよ、ふふふ」




「だが、それは効かないなぁ」




「俺の体は雷のスピリットで満たされている。運動神経、つまり神経と神経のつながりが雷気により即座に動いてくれる」




「う、そだああああ」




 俺の魂の剣が勇者フェイブの体をした青年を弾き飛ばした。


 森を次から次へと破壊しながら、ダンジョンの壁に突き刺さったのは俺ではなくパペットパペットであった。




「死にましたかな」


「これで生きてたらどうすんのよ」




 伝説のジャックと死神リナが呟くが。


 俺は首を横に振る。




「あいつは生きてるよ」




 魂を感じる。 


 その魂は絶大なまでに引き出される。


 おれは大勇者フェイブの誕生であった。




「ふぉふぉふぉ、体が爺になるのはあまり好かんが、それでもお兄ちゃんを殺せる気がするよ」




 そこには老人となり果てた勇者フェイブがいた。


 彼は勇者の剣を握りしめると。




「いね」




 とだけ呟いた。


 空に巨大なカミナリグモが出現すると。


 そのカミナリグモはこちらにまっすぐに落下した。


 逃げ場は存在しない。




「いね、お兄ちゃん」




 俺は空を見上げた。 


 笑ってやりたい、あんな雷を喰らったら消し炭がいいところだろう。




「それでも俺は諦めがわりーんだよ、そう簡単に、殺されっかよ、ばーか」




【地獄門を発動させる事をお勧めします。あなたの血が必用ですが】




「ああ、それしか方法がない、一度も使ったことのない召喚魔法は怖いがな」




【あなたならもしかしたら出来るかもしれません】




「そうかい、さぁ、地獄門を発動させるぜ」




 地面に巨大な門が出現した。


 その門は口を開いた。


 次の瞬間、時が停止した。


 地獄も門から這い出てきたのは巨人であった。




「我はクロノス、タルタロスから召喚せしものはお主か」




「ああ、クロノス、お前の力を貸してほしい」




「ふ、人間風情に召喚されるのは初めてだがな、あの雷を破壊すればいいか」




「ああ、そうしてくれ」




「では、血を受け取ろう」




「たんまりと受け取れよ」






 俺の体の中から血が消滅していくのを感じる。


 最低限生きていく上で必要な血が体を巡っている。






 そうして時間が動き始めた。




 遥かに巨大なクロノスが両手でカミナリグモを押さえつけた。


 次の瞬間、そのカミナリグモは消滅していた。


 クロノスはこちらを見ると。




「いい現世であった」




 そうして光の粒子となりて消滅していった。




 その時俺の体は限界に達し、動かなくなった。


 地面に魂の剣を突き刺して、支える事だけが限界であった。




「ふ、ついにお兄ちゃんを殺せるなぁあああ」




 だが無常にもパペットパペットの体は節々から消滅を始めていた。




「う、うそだ。死にたくない、死にたくないよおおおおお」




「おめーは力を使いすぎたんだよ」




「それはお兄ちゃんだって同じだろう」




「俺は限度を知っている。お前の力は絶大なものだ。次生まれ変わる時は力の使い方を学ぶんだな」




「うああああああ」




 そこからパペットパペットが消滅していった。


 魂の剣から伝説のジャックが幽霊の状態で出現すると、次に死神リナが武器化を解いて人型に戻った。




 パペットパペットが消滅した所に1人の桃色の髪の毛をした1人の少女が全裸になって横になっている。


 俺は死を覚悟した。




【あれはパペットパペットの転生ではなく、パペットパペットと勇者の魂が融合したのでしょう、それの転生体かと、リュウフェイ殿、彼女を保護してあげましょう】




「それもそうなんだがなゴーストの声よ、さすがに腹が減ってきてな」




【そうでしたら、あの木に実っている果物を食べる事をお勧めします】




「そうする事にするよ、リナちゃん、あそこで寝ている勇者に服を貸してやってくれ」




「まったく、とても面倒くさいですわね、ジャックは来ないでくださいね、女性は裸を見られたくないものですわ」




「それをお前に言ってやりたいよ」




「ジャック、頼みがある、あの木の実をとってきてくれ、今のお前らなら物理干渉できるはずだ」




「それはなぜですか」




「それは俺のスキルにあるからだ」




 先ほど覚えたスキル達を思い出していた。




【モンスターの魂を喰らいました。経験値5倍の効果が発動します】


【おめでとうございます。レベルが1000になりました】


【雷気:雷を魂として扱えるを覚えました】


【頑丈:防御力が桁はずれになるを覚えました】


【幽霊実体化:幽霊を実体化させるを覚えました】


【剣術レベル500になりました】


【度胸レベル2000になりました】


【防御力レベル1000になりました】


【伝説のジャック魂レベル1000になりました】


【死神シンクロ率80%になりました】




【称号勇者狩りを獲得しました】


【称号天下無双を獲得しました】




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る