第4話
「ルールその1」
「外に出るときは一声かけること」
「ルールその2」
「帰る時は、最善の注意を払って帰宅すること」
私と憲武さんが、共同生活をするにあたって
主に私が守らないといけないルールを
話し合って決めた。
「ルール多くて覚えられそうにないよ」
「じゃあ帰るか」
「絶対嫌だ」
私は家に帰る気なんて、これっぽっちもない
あいつらだって、私がいなくなって清清してるはず
「ねえ、憲武さん」
「別に、家出の理由は話さなくていいぞ」
「え」
「本当に話したいって時に話してくれればいいから」
「そう、、、」
憲武さんは、思いのほか優しかった
私が急に居候してるのにも関わらず、ご飯もくれるし
なんだったら、お小遣いだってくれる
こんなに甘えてもいいのだろうかとよく思っている
でも、私がそんなことを思っているのをわかっているのか
「俺がやりたいからやってるんだ」
憲武さんは決まってそう言ってくれる
でも、いつまでも甘えてばかりはいられないから
「私、憲武さんのお手伝いしたい」
「手伝うって何を」
「家事とか」
「お前、不器用そうだけど大丈夫か」
「ひど、私だって人並みくらいはできるし」
両親があんなだから、自分の身の回りのことくらいは
できるし、というかやらざるおえなかった
「じゃあ、頼んでみようかな」
「うん、任せて」
ようやく、憲武さんの役に立てる
そう思った私は、少し嬉しかった
今まで、イヤイヤやっていたことが
すんなりと、憲武さんのためにしたいと思っている
過去の私だったら、考えられないことだった
「今日は、私がご飯作るね」
「何作ってくれるんだ」
「ハンバーグ」
「おお、それは楽しみだな」
食材は前もって買ってあるから、あとは作るだけ
私は、久しぶりにキッチンへと向かった
「久しぶりに料理するな」
温かい家、温かいご飯、今まで当たり前じゃないことが
今の私の現実にはある
それもこれも、全部憲武さんのおかげ
今日は、絶対憲武さんを喜ばせようと思った
「なんか、焦げ臭くないか」
「ん、あーーーーーー」
余計なことを考えていたからか、焼いていたハンバーグを
放置しすぎていた
「あちゃー」
「今日のご飯、なんだっけ」
「ハンバーグ」
「そうか」
「今日、出前にしよ、ね」
「うん、苦い」
「無理して食べなくていいよ」
「でも、美味しいぞ」
憲武さんは、嫌な顔を一つもしないで作ったハンバーグを
食べてくれた
「雪菜も食べてみろよ」
「ん、苦い」
「だろ」
「でも、美味しいね」
私は、久しぶりに笑えた気がした
この人となら、何かが変わっていく気がした
でも、幸せな時間が長く続くことはなかった
君に恋して、雪が散る もちこ先生 @torotoromoro
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