3話

僕は、あれから数日かけてLINEで君島さんの要望に応えながらアバター作成アプリ『Duality』で君島さんに似たアバターを作っていた。

今日はある程度完成したアバターを君島さんに見せるために放課後、教室に残ってもらった。

女の子をこうやって誘うのは初めてだったけど君島さんは、

「わかった。のこる」と返信してくれた。

君島さんにとっては普通のことかもしれないけれど、僕はとても浮かれてしまった。浮かれたから何かあったわけではないが。心が浮ついていたのは事実だと思う。


「これ、どう?結構君島さんに似せられたと思うんだけど」


「うーん。私、目こんな大きいっけ」


「え。あー。どうなんだろう。君島さん的に無しなら変えますけど」


「えー、っとね。君のが悪いってわけじゃなくてね。ここ重要!」


「化粧の気分で目の大きさとか印象って変わるのね。それで、君は大きめの時の私を作った。ってことは、私が一番可愛いのはこういうメイクの時ってこと?」


「え?あー。ん?」


ただ、単純に言っている意味が分からなかった。


「え?」


そりゃ、君島さんも、え?ってなるよ。


「いや、ごめん。そこまで考えてなかった…。」


「あっ。あー、ごめん。こっちこそ。折角真剣に作ってくれたのに」


「えっと、目はとりあえず置いておいて他の部分は似てます!凄い!さすが〜。」


「いやいや、君島さんが綺麗だからあんまり悩むところなかったですよ」


「え?」


君島さんはキョトン顔。


「え?」


え?じゃないよ。浮ついてる浮ついてる。


「あ。あー、ごめん変なこと言った。忘れて」


「あー。うん、分かった。忘れる」


君島さんごめん。気まずい空気になってしまった。


「えーっと、この作ってくれたのって髪型変えるにはどうしたらいいんだっけ?」


「あー。っと、ここをこうして…」


この日は、微妙な空気のまま別れを迎えた。

勿論、帰ってから改めての謝罪文を送った。

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