第22話 スタメン発表
「へー、生徒会でもそんなにおかしな人がいるんですねー」
「そうなんだ。内藤という奴でな、もう行動一つ一つに下心が透けて見えるんだ。」
「へー、内藤って言うんですね……。内藤……」
『クズはてめえだろ?』
『お前のやったこと、お前自身、何がいけない事だったのか分かってないだろ?だから、内藤正蔵のバカ息子って言われるんだよ。』
『今回はこれで勘弁してやる。だが次、結乃に手を出したら殺す』
「どうしたんだ?」
「あ、何でもないよ。ちょっと昔のことを思い出して。」
「どんなことだ?」
「小さいとき、私を守ってくれた優しくて格好いいお兄ちゃんの話だよ。玲羅さん、興味あるでしょ?」
「あ、ああ……翔一はなにをしたんだ?どのくらい格好良かったんだ!?」
「ちょ、落ち着いて……」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「はい、これからメンバー選抜を行う!試合の監督は俺がするからな。やるからには勝つぞ!」
「「おおー!」」「「おー……」」
運動できる奴と、出来ない奴のテンションの差が凄いな。
さて、状況を説明し―――
「いやー、野球大会に向けてうちの担任が、試合の監督を立候補、そのまま採用されて、メンバー選抜と題して、基礎能力テストをしようとか言い始めやがった。しかも、女子たちが俺たちの練習模様を見るから、下手な姿は見せられない。そして、テスト種目は、50m走、遠投、バッティング、守備力の4種目。これはあまりにも、野球初心者つぶしだよなあ。勝ちたいからって、ガチになんなよなあ。」
―――ようと思ったがされた。説明的なセリフありがとう。
まあ、そういう事だ。
まあ、球技大会で、玲羅に格好つけたいから、一切手加減するつもりは無い。やれやれ自分は実は強いんだぜムーヴなんてしてもしなくても、俺のことに注目してる奴なんか、玲羅しかいない。
思いっきりやっちまおう。
それで出した結果がこれだ。
50m走 5秒27 クラス1位
遠投 128m クラス1位
バッティング 全部ホームラン級 クラス1位
守備能力 クラストップレベル クラス1位
かなりぶっ壊れた結果を出しているが、案の定騒ぎになっていない。
いや、自分でならないとか言ったけど、なんで?いや、とんでもない記録出てるよ?記録塗り替えられるくらいのとんでもない記録出してるよ?
まあ、理由は明確だけど……
「キャー!明智君、こっち見て!」
「キャー!明智君が私に微笑んでくれた!」
「キャー!明智君、なんて尊いの……」
あいつは彼女がいるのに、いつも鼻の下を伸ばしてる。
そうして出されて結果が―――
50m走 6秒67 クラス4位
遠投 98m クラス4位
バッティング 全部ヒット級(数本ホームラン級) クラス2位
守備能力 かなり広い クラス2位
完全に俺の下位互換じゃねえか!本当に悲しくなってくる。
そして、クラスの男子の運動能力の調査が終わり、遂にスタメンが発表される。
練習状況とか、色々な要素を放って、いきなりスタメン発表とか正気か?と、思うが、もちろん口にしない。
「これからスタメン発表をする!運動の出来る奴と、野球の適性を考えて編成したから、心して聞け!」
「練習風景すら見てない癖に適正とか笑わせるなよ。」
「ん?椎名、なにか言ったか?」
「いえ、なにも。」
あぶな、つい本音が出てしまった。
「ま、まあいい。スタメンを発表する。
一番セカンド井上!」
「はい!」
「井上、お前は足が速い。チャンスメーカーとして、先頭を任せた。」
「任せてください!」
もしかして、一人一人に激励飛ばす感じ?勘弁してくれよ。下手なこと言われたら、余計目立つじゃん。
「二番ショート後藤
お前は、ミート力が高い。チャンス拡大に協力してくれ。」
「三番ファースト東条
うちのパワーヒッターとして、得点に貢献してくれ。」
次は四番、確実にあいつだな。今までの流れで分かる。
「四番キャッチャー明智」
「はい!」
「「「キャー!明智君カッコいい!」」」
ほらな、なんの捻りもない。ほぼ茶番だな。
「明智、お前は完璧だ。チームの頭脳として、主砲として活躍頼むぞ!」
「任せてください。必ずうちのクラスを優勝させます。」
「お、頼もしいな!期待してるぞ。」
俺の方が記録いいんだから、俺に期待してくれや。って思うのは、駄目なのか?
やはり、イケメンは流石というか、なんというか。やはり、漫画の世界でモブには、人権が無いと言うのか?
「次は五番だ。村田、サードを頼む。」
「はい。頑張ります。」
「お前の守備力はかなり高い。だから、頼むぞ。」
なんかこいつのコメント、雑になってね?もしかしてだけど、上位打線を上手い奴で固めてる?
だとするのなら、クソ采配過ぎる。
「六番センター椎名」
「あ、俺か……はい」
「椎名、お前は全般的に運動ができる。だから、下位打線の繋ぎに貢献してくれ。」
「うす。」
まあ、仕事があるだけマシか……
そう思ったのは束の間、発表された下位打線、つまり七番と八番は運動神経のあまり良くない二人だった。
これでは、繋ぎもくそもない。
「最後に、九番ピッチャー白崎」
「はい!」
「お前は野球部の未来のエースだ。勝負は全部お前にかかってる。頼んだぞ!」
「はい!」
もしかして、3日間こいつに投げさせるのか?正気なのだろうか?見たところ、明らかに体力不足を否めない。
高3になったら、もしかしたらいけるかもしれないが、今の彼では2日ですらきついだろう。
当日は、栄養ドリンク用意してやるか。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一方で、野球大会のスタメンを聞いて、クラスの女子たちは
「明智君が四番でキャッチャーなのね!」
「明智君カッコいい!」
「そうねえ、頭が良くて運動もできる。おまけに家がお金持ち。完璧ね。」
クラスの女子たちの注目は、やはり四番という大役を任された、クラスのイケメンだろう。
しかし、それをよく思わない女生徒も何人かいる。
「みんなして明智、明智と……翔一の方が成績は良いじゃないか」
「それもそうね。」
玲羅の意見に一人だけ同調する者がいた。
それは、条華院美織。翔一にレイプ魔の容疑をかけた張本人だ。
「条華院……お前、翔一のことが嫌いじゃないのか?」
「そうね。私の友達を奪ったあいつが憎い。でもね、事実として翔一は強いのよ。どんな面においても天才としての姿を偽らない。ちょっとだけその片鱗を隠している時期があったけれど。」
その言葉は、玲羅としては意外だった。玲羅は、翔一のことを全否定する言葉が返ってくると思っていたからだ。
「お前は翔一とはどんな関係だったんだ?」
「小学校からの幼馴染。それ以上もそれ以下もない。一時期、あいつのことを好きだった時期があったけど、一時の気の迷い。結局あいつは、幼馴染である私たちを裏切ったのよ。」
「証拠はあるのか?翔一がレイプしたという証拠は。」
「小学生みたいな質問ね。証拠は出てた。レイプ現場から、翔一のDNAが出たらしいわ。」
「それでも、なんで翔一を信じなかったんだ?」
「あの男は逃げたのよ。自分の責任から。鳳術の後継者としての責務すら捨てて。」
玲羅は「鳳術?」となったが、そんなことどうでもいいことだ。それよりも、驚きだった。あの条華院が翔一に好意を寄せていたことが。
条華院は翔一をすっかり嫌っていたものだと思っていた。二人は、昔からの知り合いという事はなんとなく察していたが、やはり彼女として、翔一を愛する者として、聞き逃せなかった。
「野球、どうなるんだろうな……」
「翔一がいるのよ。勝つに決まってるじゃない?あなたの彼氏を、信じてるんじゃないの?」
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