第25話 彼女のために今だけは道化を演じよう
「みな、聞いてくれ!今回のことで上辺だけがすべてではないということがよく分かっただろう!」
俺の声に貴族たちがみな頷いている。
「そして、彼女もそうだ。みんなは彼女のことを不愛想だとか、怒っているとか思うだろう。だけど、彼女は自分の気持ちを表に出すのがちょっと苦手なだけなんだ!」
大切な人が誤解を受けて過ごしているのは嫌だ。だからこそ、俺は今だけ道化になろう。
「聞いてくれよ、メリルはな普段、俺と二人だけの時は膝枕をしてくれたり、ご飯を食べるときにはいつだってあ~んてしてくれるんだよ。普段はクールなんだけど、俺にだけそんな甘い表情を見せてくれるのがたまらなく可愛くてな。」
「マ、マ、マクリッド様!」
隣ではメリルが俺を止めようとしてくるがそうはいかない。俺だって恥ずかしいから嫌だけど、それ以上に君が辛そうにしていることの方が嫌なんだよ。
「しかもだ、一回俺の部屋に忍び込んだこともあったんだぜ。びっくりして尋ねたらマクリッド様の香りに包まれて眠りたいだってさ。もう可愛すぎるだろ!お前たちにこの可愛さが分かるか?」
「いや~!マクリッド様、それは秘密です!」
メリルは自分の恥ずかしい思い出を貴族たちの前でバラされてしまい、顔を赤くし、俺の口をふさごうとしてくる。あまりの恥ずかしさから顔から火が出るなんて表現では足りないほどだ。
しかし、ようやく彼女は大勢の前で自分の本心を晒しだすことが出来た。まぁ、やり方は悪かったと思うが。周囲の貴族達はそんな彼女の反応に驚きを隠せないとともにニヤニヤと面白がっているようだった。
「あら、メリル様ってお堅いイメージがあったのだけれど、あんなに可愛い一面があるのね。私、メリル様のことを誤解していたわ。」
「何だよ、メリル様ってあんなに可愛いのかよ。くっ~、俺もあんな風に言われてみたいぜ。殿下も隅に置けないよな。」
「あんな恥ずかしいことを大勢の前でバラされて可哀想。あとで励ましてあげなくちゃ。」
「メリル様、スハ、スハ、スハ。」
メリルの秘めた可愛さを知り、俺のことをうらやましがるものや大勢の前で乙女の秘密をばらされたメリルの同情しているものもいる。そういったものはメリルに近いような女性陣だ。自分がそうなれば嫌だとメリルに同情するとともに、俺のことをゴミを見るような目で見ている。
メリルのことを後で励ますと言っているから、俺を共通の敵にでもして話が盛り上がればメリルの友達になってくれるだろう。今まで、友達ができる機会がなかったメリルにとってそれは良いことだ。
あと、最後の変態。お前の顔は最重要案件で覚えておいたからな。メリルの半径100m以内は立ち入り禁止だ。お前はヤバすぎる。
俺は一年という長い歳月をかけてようやく、メリルの可愛さをみんなに知らしめることが出来たのだ。
「悪かったって、メリル。君の可愛さをここにいる全員に知らしめたかったんだよ。君の可愛さを俺だけが独り占めするなんて世界の損失だからな。」
「意地悪なマクリッド様なんて嫌いです!・・・でも、気遣ってくれてありがとうございます。」
最後の言葉、その言葉だけは俺の耳元でささやく。メリルは俺の道化の理由を見抜いていたのだ。いや、ちょ~恥ずかしい!だってそうだろ、俺が無理して道化になっていたのを見抜かれてるんだぞ!こういうのは気づかれないようにするのがカッコイイんだろうが。バレてしまったら恥ずかしいだけだよ!
まぁ、俺は恥ずかしくて今にも死にそうだが、メリルにかかった疑惑も払拭できたし、みんなのメリルに対する誤解も解くことが出来た。めでたし、めでたしだな。ようやく、メリルとのデートができそうだ。
パーティーの翌日、デートにメリルを誘った俺だがまさかの拒否を食らった。あんな大勢の目の前で、メリルの秘密をばらした罰にしばらくはお預けだとさ。ちくしょ~、メリルとのデートが、俺頑張ったのに。
俺はメリルに泣いて謝り倒したら流石に彼女も悪く思ったのだろう。今日はダメだが、明日は二人きりでデートをすることになった。どうやら今日はそもそも先約があったらしい。会場でメリルの秘密をばらしたときにメリルに同情していた子が遊びに来るみたいなのだ。
今日は二人で俺のことをだしに盛り上がるそうだ。まぁ、メリルに友達ができて良かったよ、それでこそ、俺が頑張った意味があったってもんだよ。
ということで、メリルとのデートは明日だ!さて、明日はどこへ行こうかな。
守ってあげたい系の腹黒令嬢の策略で婚約者を冤罪によって婚約破棄する王子達に物申したい!いや、自分の婚約者ならそっちの言うことを信じろよ! 創造執筆者 @souzousixtupitusya
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