第24話 フィナーレの始まり

しばらく男爵が固まっているとようやく、正気に戻る。すると自分が騙されていたことをようやく理解し、怒り始めるのだ。


「おまえ!このワシを騙していたのか!貴様が自分の娘だと思っていたからお前の策に協力してやったのだぞ!それなのに、お前は赤の他人だと!それではワシはお前に協力しても意味がないではないか!殺してやる!殺してやる!」


あぁ、流石にキレるよなそりゃ。今までずっと騙されていたんだから。でも、そんなことは俺には関係ない。俺は二人を取り押さえている兵士たちに牢に連れて行くように指示し、二人を連れ出す。


二人が連れていかれるのを見届けた俺は周囲の貴族達を一斉し、宣言する。


「聞け!俺は真実を確認しないでうわさに踊らされる馬鹿な奴が嫌いだ。今回の件でほとんどのものがメリルのことを信用していなかっただろう。別に、心の中でそう思うことくらい問題ない。だが、偽のミナーラに踊らされてメリルの悪口を言っていたやつ、お前たちの顔は覚えたぞ。」


俺がそう言うと何人かの貴族はビクッと肩を震わせる。彼らは皆、偽のミナーラがメリルに受けた嫌がらせを叫んでいた時に不愛想だの、恐ろしいだの言っていたやつらだ。


「お前たちのことはとりあえず、保留にしてやる。これからの措置は今後の態度しだいだ。確かに、お前たちがやったことは悪口を言ったことくらいだが俺はメリルのことを悪く言われてキレているからな。


俺が国王になった暁には、お前たちが不利になるような政策をバンバン打ち出していくかもしれないぞ?」


俺の言葉に、肩を震わせている貴族たちはさらに顔を青くする。この国には、現在、俺一人しか王子がいない。つまり、俺が未来の国王であることは決まっていることなのだ。


そんな俺に睨まれるということがどれだけマズいことになるかは理解できるだろう。少し、やりすぎかもしれないがああいう奴らにはこれくらいがちょうどいいだろう。


俺は今までの状況にびっくりしているメリルの元に向かう。


「メリル、大丈夫か?もしも、あいつらのせいで気分が悪くなったのなら部屋で休むか?」


「いえ、大丈夫です。本当にありがとうございます、私を信じてくれて。」


「当たり前だろ、どうして婚約者よりもあんな意味の分からないやつを信じると思ったんだよ。あの時も言っただろ、俺はメリルのことが大好きでたまらないんだよ。」


メリルは大勢の貴族達の前だからか、表情は硬いがこの一年間、ずっと彼女といた俺にはわかる。彼女は心から喜んでいるのだ。だからこそ、俺は彼女の良さをみんなにも知って欲しい。大切な彼女だからこそ、彼女が誤解されたまま過ごしていくのが俺には耐えられないのだ。


俺はメリルを抱き寄せ、周囲の貴族達にも聞こえる大きな声で叫び始める。

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