第22話 擦り付け合い

「なるほど、ついに反論もしなくなったか。それで、最後の男子生徒に襲われたということだけど、その件に関しても尋ねたほうが良いかい?一応、襲われた男子生徒の名前を聞いておこうか?本当にそんな人間がいるのであれば言えるだろ?」

彼女の顔色はどんどんと悪くなっていく。それに比例して周囲の貴族達も既に彼女の言うことを信じているものはただの一人としていなかった。彼女が叫んでいた初めの時とは正反対だな。


「何か申し開きはあるか?ないのであればお前を今すぐ牢に幽閉して一生そのままにしてやる。お前は俺のメリルを傷つけたんだからな、楽に死ねると思うなよ。お前から殺してくれと言われても殺してやるものか。」


おっと、内なるもう一人の俺が殺意をガンガンに出している。メリルの前だからな、少しは落ち着かないと、怖い顔は見せたくないし。


俺が彼女に最後の言葉をかけると突然彼女が泣き崩れ始める。


「申し訳ございません、申し訳ございません!私はお父様に命じられただけなんです。」


「な、何を言うか!貴様!」


彼女の申し開きに反応したのは彼女の父親である男爵だ。


「私はお父様に命じられてメリル様からマクリッド様を奪い取れと言われただけなのです。私だって本当はメリル様にこんなことをしたくなかったんです。でも、もともと平民であった私を拾ってもらった恩もあり、拒否することが出来なかったのです。」


「嘘をつくな!ワシはそんなことを命じていないだろ!で、殿下、その者の言うことは全て嘘です!私はそのようなことは命じていません。」


はぁ、こいつらいつまで三文芝居を続けるつもりなんだ、すでに全部調べ終わっているんだよ。


「男爵、彼女がお前の隠し子であったことは既に調べがついている。男爵家に跡継ぎがいなくなり、平民であった彼女を急遽、男爵家に迎え入れたのだろう?」


「な、なぜ殿下がそのことを!」


そう、平民であった彼女は実は男爵の隠し子であったのだ。そのため、彼女は平民から貴族になったのではなく、貴族から平民になり、再び貴族に戻っただけなのだ。


「そして、お前が彼女から計画を提案されて今回の企てを全面的に支持しているのは知っている。おおかた、自分の娘と俺がくっつけば更なる権力を握れると思っていたのだろう?もちろん言い出したのは彼女かもしれないがお前も共犯だ。二人とも、暗~い、暗~い牢の中で暮らしてもらう。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る