第21話 名探偵(笑)

「その事件の話なら俺も現場にいたからよく知っているさ。」


「それでは、証拠など必要ないではありませんか。マクリッド様、自らご覧になったのであればそれが証拠です。」


「そうか?俺の記憶が確かなら君は階段を背にして倒れ込んでいたよな?階段の一番下の段がちょうど君の頭にくるような感じで。階段側に頭がきて、階段と反対側に君の足があったはずだ。何か間違っている所はあるかな?」


「いえ、それで間違いありません。そのせいで私は足から地面につくことになり怪我をしたのです。」


はぁ~、こいつまだ分かっていないのか?すでに今ので自分の自演ですって言っているようなものだろ?こんな探偵みたいなことするこっちの身にもなれっていうもんだ。恥ずかしいだろが。


「じゃあ、聞くけどさ、階段から突き落とされたのなら普通は頭が階段と反対側に来て足が階段側に来るっているのは知っているか?」


俺がアホらしくなり呆れながら発言すると会場は一気にざわめき立つ。先ほどまでは俺のことを私情でメリルをかばっているアホな王子とでもいうような目で見ていたがようやく自分たちの愚かさに気づいたようだ。


「お、おい。先ほどの殿下の言われたことは確かなのか?本当にミナーラ嬢は頭を階段に向けていたのか?」


「はい、そうですが?それが一体何だというのですか?」


「この馬鹿もんが!なぜそれを早く言わない、そうであるならば話は全く違ってくるだろうが!」


貴族の息子が父親にゲンコツを食らっている。ざまぁ~、真実を確かめないで話をひろげるからだ。


「バカな奴でなければすぐに分かると思うが人を突き落とすのであれば肩や背中を押すだろう。そうなった場合、人間は頭から落ちていくんだ。つまり、階段と反対の向きに頭が来るようになる。君が初め言っていたように頭が階段に来るのであれば足から階段を落ちなければならない。


突き落とすときに足から突き落とす?そんなのどうやっても不可能だ。つまり、自分から落ちなければ絶対に不可能な体勢なんだよ!」


俺の言葉に男爵令嬢は何も言い返すことが出来ない。


「都合が悪くなればだんまりか。まぁ、良いだろう。次だ、来ていた服に泥をかけられたといったな?それも学園では有名な事件だよな?君が授業に泥だらけの服で参加しようとして大騒ぎになった。一応聞いておくけど、それも本当か?」


「ほ、本当です。」


彼女はこの話も本当と言っているが明らかに先ほどよりも元気が無くなっていた。自分の分が悪いことを理解しているのだろう。


「それに関しても既に調査を行っている。君はよく詰めが甘いと言われるだろう?君は周囲を警戒しながら泥を自分の服に塗りたくっていたかもしれないが実は目撃者がいたんだよ。例の騒ぎになる少し前に君が自分から一人で泥に飛び込む光景を見ていた子がいたんだ。


まぁ、その件に関しては君の方がよく知っているだろう?本当に苦労したんだぞ、君がその目撃者の子を平民だからと言って貴族の特権で無理やり学園から退学させて、自身の領地に囲っていたんだからな。


たまたま目撃者が平民だから君には幸運だったな、男爵家である君の家が隠蔽できるのは平民のみだからな。俺の使いのものに王子の使いだということを伝えればその子は全部話してくれたよ、君が自演をしていたところを目撃してしまい脅迫されたことを。


平民だからと言って酷いことをするのはあんまりだって言うセリフ、よく言えたもんだね。自分の胸に手を当てて良く考えてみなよ。」


「・・・・・。」


囲っていた目撃者にバラされてしまえば、どうしようもないだろう。彼女はすでに何も言い返すこともできず、黙秘を貫いている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る