第7話 もしかして、これって望まない婚約なのではないか?
はっ、こういう場合って大体好きな人がいたけど政略結婚のせいで別れざるを得なくなったというパターンじゃないのか?俺は前世で読んだ小説の中に良くある設定を思い出してしまう。気づいてしまったのだ。
それなら彼女がここまで不愛想なのも理解できる。彼女は婚約を受け入れてありがとうと言っていた。つまりはこの婚約話はペンルイス家から提案した話だろう。
大体こういう場合は彼女の父親が無理やり家のために婚約話を俺に持ってきたとかだよな。はぁ~、せっかく初恋が叶うと思ったのに。いくら政略結婚と言っても他に好きな人がいるのに別れさせるとか残酷すぎるだろう。
そんな状態で婚約なんかしてもお互いに不幸になるだけだ。それに、いつも別れた相手のことを考えている彼女を見たくはなかった。そんなことならはなから諦めよう。そうすれば彼女も別れた相手と復縁することも可能だろう。ぐすっ、くそー今日はやけ酒だ!飲めないけど。
「もしかして、この婚約話があまり乗り気ではないのかな?もしそうなら、親父に言ってこの話はなかったことにできるけど?」
すると先ほどまでは真顔で何の反応も示さなかった彼女が些か焦っているようにも見える。
「いえ、私自身、今回の婚約のお話は大変光栄なものだと思っています。ですので、どうかその様なことはおっしゃらないでください。もしも、マクリッド様がご不快に思われてしまったのなら申し訳ございません。」
ん?なんか本当に焦っているように見えるな?親の決めた婚約が無効になったらさすがにマズいと考えたからか?いや、そんな感じではないんだよな?もしかして、この子?いや、そんな漫画みたいなことあるか?探りを入れてみるか。
「そうなんだ、それならよかったよ。そうだ、今度メリルの働いている職場を見てみたいな。俺も商品の開発とかに興味があるから、もしよければ拝見させて欲しいんだけど。もしも、機密とかがあれば無理かもしれないけど。」
これなら普段の彼女の様子が分かるだろう。今の彼女と普段の姿が全く違うなら彼女はこの婚約に不満があってこんな顔をしているのだ。
でも、もしも普段から職場でもこのような感じであれば俺の考えていることは当たっているかもしれない。職場にいる商人にでも聞けば詳しいことも分かるはずだ。
「はい、それなら大丈夫です。父からもマクリッド様が望まれるのであれば職場をご案内して差し上げなさいと言われていますので。」
「そっか、良かったよ。じゃあ、今度よろしくね。」
こうして、俺たちの最初の顔合わせは幕を閉じるのであった。
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