第3話 なんか婚約者が決まったんだけど

そもそも、俺とメリルの出会いは16歳のパーティの日からさかのぼること一年前のことである。その日、15歳となるパーティを1週間後に控えた俺は親父、つまりは現国王に呼び出されていた。


「親父、俺に用ってなんだよ?俺、今から例の玩具の打ち合わせを職人たちとしないといけないんだけど?」


「親父じゃなくて、陛下って呼べって言っただろうが。また、侍女長に”殿下、その言葉使いは何ですか!”ってお小言を言われるぞ。まったく、誰に似たんだか?」


「いや、どう考えても親父だろ!」


俺がこんな話かたになったのは完全に親父のせいだった。だってさ、当の本人が普段からこんなしゃべり方なんだぞ。これじゃ威厳がないとか言われても仕方がないだろ!


ちなみに、俺が前世の記憶を持っているということを親父は知っている。はじめは小説でよく見るような冷酷な王様とかだったらどうしようかとハラハラしていたけど、これだからな。


なんか隠し事をすることが馬鹿らしくなって10歳の時に全部話したんだよ。そしたらなんて反応したと思う?驚くかと思ったら”あぁ、そうなのか?不思議なこともあるもんだな。”だぞ!


いや、いや、もっと驚くべき場所があるだろ!何だよ、不思議なこともあるもんだって。理解するの早すぎだろ!もはや、親父も転生者か何かと思ったぞ。


あっ、ちなみに、さっき俺が言っていた例の玩具って言うのは将棋のことだ。せっかくの異世界転生なんだから、使える知識はいくらでも活用するだろ。すでに国民で将棋を知らないものはいないって言うくらいブームになったんだ。


そして、今度は貴族用の豪勢な将棋セットの作製を俺の監修でするんだよ。こんなの、遊べれば平民用も貴族用も変わらないのにな。貴族ってのは体裁にこだわるから面倒なんだよ。まぁ、そのおかげで代金の一部が俺のお小遣いになるから別にいいんだけど。


「それで、結局俺を呼んだ理由は何なんだよ?」


「あぁ、お前の婚約者を決めたからな明日、顔合わせだぞ。」


親父は何もないように言い放つが俺はそうはいかない。


「ん?婚約者?なんだそれ?何かの玩具の名前か?」


そんな俺の反応に親父はバカな奴を見る目で呆れている。


「お前、職人たちと打ち合わせをしすぎて頭がイカレたのか?お前の結婚相手のことだよ!」


「フアッ!お、俺の結婚相手だと~~~~!」


異世界に転生して15年、俺はかつてないほど驚いていた。あまりの衝撃的な内容に叫んでいる俺をよそ眼におやじは机に積み上げられた仕事をこなしていく。いや、なんでそんなに普通にしていられるんだよ!

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