第2話 プロローグでありエピローグ下

「「「「「「「「「「へっ?」」」」」」」」」」


ヒロイン、婚約者、会場の貴族達が一斉に俺の言葉に反応する。いや、ほかの貴族達はともかく、どうして婚約者であるメリルまでそんな反応をするんだよ!


「あ、あの、マクリッド王子?メリル様は私に平民の生まれだからって散々酷いことをなさったんですよ?」


俺はこの訳の分からない男爵令嬢に腕から離れてほしいと伝えるがまったく聞いてくれない。彼女からすればメリルがここまでひどいことをしているのを俺が聞けば婚約破棄をするに違いないと考えていたのだろう。


だが、そんなことをするはずがないだろ?確かに、彼女は周囲の人間にそっけない態度をとることが多い。人前で笑うこともめったにないため、周囲の貴族達には冷酷な人間と思われてもおかしくはない。


だが、それはあくまで彼らの目の前でだけだ。俺と二人だけの時、そんなときの彼女は笑顔でデレてくれるからな。そう、彼女は俺以外の前では絶対にデレないクーデレさんなのだ!


そんな俺だからこそ、彼女がそんなことをしないと知っているし、この男爵令嬢が嘘をついていることもお見通しだ。


「いや、それは嘘でしょ?こんな可愛いくて優しいメリルがそんなことするわけないじゃん!」


先ほどまで、追い詰められたような表情をしていたのは俺の婚約者だった。いや、マジでこいつ俺のメリルに何してくれてるの!必死で泣きそうな顔をこらえてるじゃん。だが、そんな二人の立場も俺の発言で一変することになった。


「ちょっと待ってください!私が言っていることは嘘ではありません。あんな酷いことをするメリル様と私、どちらを信じるんですか!」


そんなことを言われてしまえば俺の答えは決まっている。いや、俺の場合だけではない。今までありとあらゆる婚約破棄系の小説を読んできたが婚約破棄を言い渡してきた王子達はどうして、ただの一人もこう言わないんだ?


そう、俺が前世の小説をたくさん読んで物申したかった事とは


「そんなの、婚約者なんだから彼女の言うことを信じるに決まっているでしょ!」


だった。


この物語は自分の婚約者を冤罪で悪者に仕立て上げる男爵令嬢の三文芝居を見抜いている俺が婚約者のために証拠を集めて男爵令嬢に叩きつけてやる話である。


そう、婚約破棄とは多くの恋愛小説ではプロローグかもしれないが俺の場合は既にエピローグなのである。だって、そうだろ?婚約破棄なんてするわけないもん。こんなにも可愛くて優しい、完璧な婚約者をほかの貴族に取られるとか絶対嫌だもん。


彼女と別れて腹黒い男爵令嬢と婚約するとか絶対に嫌だわ。そうなったら泣くわ~。さっ、こんな奴、さっさと追放してメリルとのデートを楽しもう!

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