守ってあげたい系の腹黒令嬢の策略で婚約者を冤罪によって婚約破棄する王子達に物申したい!いや、自分の婚約者ならそっちの言うことを信じろよ!

創造執筆者

第1話 プロローグでありエピローグ上

Web小説で婚約破棄系のジャンルが大好きな俺はいつの間にか異世界へと転生していた。そんな俺が転生した先はアラボー王国の唯一の王子であるマクリッド王子だ。


アラボー王国とは大陸で最も大きな国であり、王位継承権とかそんな面倒なこともなく、俺は将来が約束された生活だ。


しかし、そんな俺にも例のイベントが訪れてしまう。そう婚約破棄イベントだ。婚約破棄系の小説にはよくあるイベントだろう?


守ってあげたい系の小柄な令嬢が性格のキツイ婚約者に嫌がらせをされて王子に助けを求める。そうして、王子は令嬢の話を鵜呑みにして婚約者に対して婚約破棄をし、追放を言い渡すんだ。


でも、それは全て令嬢の嘘で婚約者からその座を奪うために仕組まれたことだったりする。そうして、失意のどん底に落とされた婚約者には以前から好意を寄せていた他国の王族とかが新たに婚約し、二人は結ばれる。


この説明こそが、まさに、今の状況を的確に表している。


「マクリッド王子、メリル様が私にひどいことをするのです!私がもともと平民だから、卑しい身分の癖にマクリッド王子やメリル様に話しかけるなと言われて階段から突き落とされたり、着ている服に泥をかけられたり。


私はメリル様やマクリッド王子とただ仲良くしたかっただけなのです。それなのに、ひどいです。ぐすん。」


そう告げる彼女は俺の腕にしがみつき、婚約者であるメリルから受けた嫌がらせを俺の16歳のパーティーで叫び始める。そんな彼女の目を見ればうっすらと顔に涙が伝っているではないか。


「待ってください!私はミナーラ様にそんなことをした覚えがありません!何かの間違いです。」


婚約者であるメリルは身に覚えがないことだときっぱりと伝える。


「そんなわけないです!メリル様は私のことを他の男子生徒に襲わせたじゃないですか。どうして、あんなひどいことが出来るのですか?私が平民の出だからですか?」


その騒ぎを聞きつけた貴族達もメリルのあまりの陰湿な嫌がらせに目をしかめ、口々に彼女の悪口を言い始める。メリルはそのことに対して弁解を述べるが今やだれも彼女の言い分を信じようとしない。


「なんと、そこまで恐ろしい方だったとは?そんな方だとは思いもしなかったぞ。」


「そういえば、普段から話しかけても不愛想な方よね?そう考えればそれくらいのことをやってもおかしくないかもしれないわ。」


「いくら平民の出だからと言って今は男爵家の令嬢なのよ。なんて恐ろしいことをするのかしら?可哀想なミナーラ様。」


あっという間に会場内にメリルの味方はいなくなってしまったのだ。最早、婚約破棄小説では定番となった構図だろう。


そんな場面に立たされた当事者である俺は前世でたくさん読んできた婚約破棄系の小説を思い出していた。今回のこともだが、俺はずっとそんな小説に対しても感じていた気持ちをこの場で言い放つ。


「いや、俺の婚約者に何言ってくれてるの?というか、その腕を離してくれない?」


その言葉に会場の全員が黙り込んでしまうのであった。

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