第4話 俺はこの世界で初めて恋に落ちたかもしれない
というわけで、親父からはほとんど説明が行われず、翌日になる。昨日、どれだけ事情を聴いても明日話すの一点張りで何も教えてくれなかった。おかげで昨日の職人たちとの話し合いはずっと上の空だった。
「おい、シャキッとしろよ。男なのになよなよしてたらカッコ付かないだろ。もっと自信を持っていけ。」
「あのな、昨日いきなりそんな話を聞かされてこれだぞ!せめてどうして昨日のうちにもっと詳しいことを教えてくれなかったんだよ。あぁ~、無茶苦茶緊張するじゃね~か!」
昨日の夜もなかなか眠ることが出来ず、寝不足だった。今まで前世の知識チートで何不自由なく暮らしていたから忘れてたんだ。俺、王子だったわ。しかも、この国で唯一のだ。こんな俺に今まで婚約者がいなかったこと自体おかしなことだったのだ。
ふとした瞬間に運命の出会いをして自然とそんな関係になって結婚をするもんだと思っていたけど、よくよく考えれば王族なんだから政略結婚だよな。
これで、ブクブクのおばさんが相手とかだったら泣くぞ!いや、むしろそんな婚約を取り付けてきた親父を許さねえ!
革命でも反乱でも起こして俺が王になってやる。それで、親父にはムキムキのゴリマッチョを婚約者にしてやるんだ!せいぜい毎日、可愛がってもらえ。
俺がそんな訳の分からない想像を膨らましていると親父が不審な目でこちらを見つめてくる。
「おまえ、なんかスゲ~ヤバいことを想像していないか?なんか今一瞬、鳥肌が立ったんだけど?」
「な、何を言ってるんだよ親父、そんなわけないって。それよりも、相手方はいつ来るんだ?」
くそ、どうしてこうも昔から勘が鋭いのか。女の勘は鋭いって聞くけど、親父は男だろ。そんな特技いらないっての。
「あぁ、直に来るさ。おっ、ようやく来たな。」
そんな話を親父としていると部屋の扉が開かれ、二人の人間が入ってくる。一方は親父と同様の年齢かと思われる男性。そしてもう一人が恐らく婚約者だろう。白髪の髪は長く、全身すらっとした高身長。目は少し細目で垂れ目だがはっきりとした意思を感じる。
そんな彼女が着ているドレスはゆったりとしたものではなく、制服のようなきっちりとしたドレスだ。このドレスの薄い青みが彼女の白髪をより際立たせている。
俺は直感的に浴衣を着ている彼女を想像してしまった。今の彼女と浴衣を着てデートに行ければどれだけ幸せなことだろうか。
前世でも彼女がいなかった俺は異世界で初めて恋をしたかもしれない。
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