11-獣耳

猫は小さかった。

モフっと手で包めそうなくらい。


「触れなかった」


あの後、セリの魔法で出した水は飲んでくれたものの。近づく事はできなかった。警戒心が強いようだし、触られたくない様子。怪我もないようなので、立ち去った。



その後は市場で串肉、魚介のスープを分けっこ。現在は、軽く食事をして宿泊先に戻ってきていた。


のんびり夕食までの時間を過ごす。


残念な気分。諦めたが、やっぱモフっとしたい。ソファに座るカナンの耳がピコっと動いたのに目がいった。近づいて聞いてみる。


「触っていい?」

「イイよ〜」


許可が出たので、さわっと指先でなぞる。


ツンツンと先一番上の部分を突く。硬めの感触の毛を上から梳く。

(なかなか良い)


頬擦りしてみた。

「ちょ、こしょぐったいっ」


カナンが笑いながら耐えている。


「セリ!」

ロードに腹部分から抱き上げられて引き剥がされた。


「もふもふっ」

ロードに触り心地の結果を報告。


「こしょぐったかった」

耐えていたカナンが噴き出して、笑っていた。


「他の男に、くっついちゃだめだ。」


セリが、ロードの真面目な視線を受ける。単なる嫉妬、といえどロードの譲れない部分だ。その瞳を受けて、セリの答えは…。

「鱗も気になる」


真面目に応えた。スッとロードが、鱗のある部分を差し出してくれた。触れた。コツコツと指先に感じる固い鱗は、面白い。

そんな2人をソファから眺めていると、シュルトが部屋に入ってきた。


「仲良くなったみたいネエ」

「ああ。くくくっ番に必死になっちまって、まー。」


最初のぎこちなさから、ペッタリとくっつくセリはロードを受け入れている。


「まあ、セリちゃんに男女の感覚が分かってないよなぁ」

「そこはマァ、年齢と環境カシラ?」



この男も少し変わった。セリに気を許し、ロードの反応を楽しんでいた。


モフモフを触っただけだとセリに説得されるロードに、甘くなってるぞと心の中でツッコミを入れていた。


セリもなかなか、強かだなとも思える関係性だった。

<もふもふはオッケーの許可をロードから獲得した。


「そこは、オレの許可じゃないの?」


加わったカナンとで、戯れる3人はすっかり馴染んでいた。



「セリ、夕食はドレスアップしまショ」


ロードとお風呂へ。

「オレも行くー」


3人で動く、


夕食は、地元っぽいヒトもちょっと高級な所として、訪れる場所。海が見え、観光客も見かけるため対応も慣れている。


海の幸、蟹や魚の魔物がいただけるはずだ。


キースとグスタフは不参加。


4人で、馬車に乗って出かける頃には夕暮れが近づいていた。

まだ、明るい街を走って行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る